テレキャスターブリッジ3連サドル:ブラスとスチール音の違いを徹底解説【ギターの素朴な疑問】


👆 テレキャスタイプ3連サドル、ブラスとスチールの音の違いを把握しよう!
目次
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テレキャスターブリッジ3連サドル、ブラスとスチールの音の違いを知りたい!
本記事ではテレキャスタータイプの3連サドルを例に、スチールサドルとブラスサドルの音質変化を検証です。

金属製ブリッジサドルはスチールを筆頭にブラスやステンレス、アルミ、チタン、亜鉛合金など様々な素材が使用されています。
カーボンやボーン、高分子素材など、非金属製サドルも含めると選択肢は広大です。各素材は硬度や比重、表面処理や形状が異なるため、素材毎に固有の音質や耐久性を有します。

テレキャスターではスチールとブラスが使用されるケースが多く、中でもブラス製グレードアップサドルは種類が豊富です。ブラスの音やルックス的な変化を好み、テレキャスタイプを入手すると真っ先にブラスサドルへ交換する方も多いかもしれません。
スチールとブラスの機械的性質について
機械的性質に焦点を当てると、ブラスはスチールよりも硬度が低く比重が高い素材となります。

例として炭素鋼鋼材S45Cの比重は7.85、快削黄銅C3604の比重は8.50です。対してS45Cのビッカース硬さは焼き入れ前で220HV以上、C3604は80HV以上となります。

金属は硬度が高いほど音の立ち上がりが早く、高音やサスティーンが伸びやすい傾向です。また重量があるほど、低~中音域にアドバンテージを得やすくなります。
こういった説明は、各パーツメーカーの商品説明では良く見かける文言です。加えて体感的に実感しやすいこともあり、ブラスパーツは『音色の暖かさ』を強調することが多々あります。

管理人が記事中の表現で度々使う『良い意味で低音に渋みがある』というのもブラスの特徴だね!
機械的性質 一覧表
S45C
・比重:7.85
・ビッカース硬さ:220HV以上~(焼き入れ前)、600HV~(焼き入れ後)
・引張強さ:690N/mm²以上
C3604
・比重:8.50
・ビッカース硬さ:80HV以上
・引張強さ:335N/mm²以上

S45Cは製造元により公表値が上下するため販売元に確認してね
スチールとブラスの特性が逆転する例
ただし音質的な特徴はあくまで傾向につき、使用される部位によっては真逆の結果となることもしばしばです。体積の大きいブラスパーツや、二次・三次振動体に影響を与えるブラスパーツはスチール以上の効果を発揮する場合があります。
前者の際たる例はスプリングハンガー (ホルダー) で、大型のブラスハンガーはサスティーン向上に優れた効果があることを検証済みです。後者はネックプレートが当てはまり、スチールよりもブラスの方が各特性優位に作用しやすくなります。
その他インサートブロックやナットキャップ、スクリュー類なども、ブラス製パーツは得られるメリットが多いです。反してギターサドルは弦振動(一次振動体)に直接影響を与えるため、機械的性質が素直に反映されやすい傾向にあります。

詰まるところスチールサドルと同一サイズのブラスサドルは、立ち上がりや高音の伸び、サスティーンで優位に立てません。ブラスサドルの好みが分かれる要因となっており、中でも立ち上がりやサスティーンに難色を示すプレーヤーが多い印象です。
同一サイズのスチール&ブラスサドルで音質を比較検証!
今回は同一サイズの3連テレキャスタータイプサドル (10.8mmピッチ) を、S45C(クロームメッキ)とC3604(無垢)で用意しました。2種のサドルを共通のギターにインストールし、各種音質データを計測して比較します。

使用ピックや弦、セッティングを全て揃えることで、両素材の純粋な音質面の差が浮き彫りとなるハズです。テレキャスターにおけるスチールサドルとブラスサドル、どれほど音に違いがあるのかをじっくりみていきましょう。
倍音特性の比較 (A2/110.00Hz)
倍音特性は周波数が分かりやすいように、5弦開放弦 (A2/110.00Hz) を比較しています。
1.スチールサドル

全体的に非整数倍音が控えめで、雑味の少ないスッキリした音像です。高次倍音は計測された範囲(横軸)が広く、出力(縦軸)も高めの値となっております。
基音や低次倍音は幾分出力が低いため、クリアでシャープな倍音特性だと言えそうです。中高音~高音が鮮烈なテレキャスタイプ固有のサウンドと一致しており、長所を伸ばす方向に作用しています。
2.ブラスサドル

基音より高い帯域はスチール以下の非整数倍音であるものの、基音以下の帯域はスチールより非整数倍音の主張が強めです。倍音がクッキリと際立つ中に、ほのかな渋みを含む低音がブラス独特の『味』となります。
高次倍音が計測された範囲と出力はスチールより劣りますが、基音や低次倍音の出力はブラスが上手です。基音と低~中音の倍音が一束になるような響き方で、暖かみのあるウェットな倍音を構築しています。

ブラスサドルはテレキャスタイプの長所を削ぐ代わりに短所を補う方向に作用しているね!
倍音特性波形の周波数目安
左端側の太長い山(中央灰色線)が基音110Hz 偶数次倍音:第2倍音(220Hz)、第4倍音(440Hz)…… →ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も 奇数次倍音:第3倍音(330Hz)、第5倍音(550Hz)…… →金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き 非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
周波数特性の比較
周波数特性はDI直で同一フレーズを繰り返し、平均的なスペクトラムを算出しました。
a.スチールサドル

倍音特性そのままに、中高音~高音にかけてアドバンテージのある周波数特性です。200~800Hzにかけてはやや平坦で迫力に欠けるのに対し、テレキャスの個性を決定付ける1k~3kHz付近は高い値を記録しています。
b.ブラスサドル

ブラスも倍音特性が反映されており、800Hz以下の低~中音がスチール以上の値です。400Hz付近に明確なピークが出現しているため、中音に芯の通ったサウンドメイクが可能となります。
1k~3kHz付近が抑え気味となる点は好みが分かれやすく、ギャンギャン唸る中高音をテレキャスの魅力と感じる方は注意が必要です。
周波数特性波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
サスティーンの比較
サスティーンはDI直で開放弦Eコードを1ストローク鳴らし、出力が0になるまでの時間を計測しています。スチールサドルのデータを基準として、ブラスサドル交換後に±何%音伸びが変化するのかを確認です。

なお人力でもデータ精度を上げるため、えげつない回数のストロークを繰り返しました。計測された各サスティーンデータを元に、平均%、最小%、最大%の3通りを算出しています。
平均:-5.7%
最小:-4.1%
最大:-3.1%
素材の硬さの影響が大きいのか、サスティーン性能は全面的にスチールが上手です。ブラスサドルでサスティーンを損ないたくない場合は、他のグレードアップパーツとの併用が重要となります。

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音の立ち上がりの比較
サスティーンの計測と平行して、両サドルの音の立ち上がりについても調査しました。スチールサドルと比較すると、ブラスサドルは平均して1.9ms(0.0019秒)ほど立ち上がりが鈍化傾向です。感知するのが難しい極僅かな差とは言え、材質が音の立ち上がりに影響を与えていることが分かります。
計測に使用した機材一覧

ギター:Bullfighter / D-133 (国内初期出荷ロット)
ブリッジ:Bullfighter / D-133 国内初期出荷ロット純正ブリッジ (3連サドル型)
スチールサドル:知人工房提供品 (非売品) / S45C 焼き入れ無し クロームメッキ
ブラスサドル:知人工房提供品 (非売品) / 快削黄銅 アンラッカー
使用PU:Bullfighter / BF-133SS (ブリッジ 韓国製)
使用弦:Aria Pro II / AGS-803XL
使用ピック:Aria Pro II / P-HT01/080 YL
シールド:ARIA / JG-10X (10ft/3m, S/S)
マイクケーブル:Amazon / CLMIC1-M-F-10FT-5P
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サドル素材提供元
※本業は木材加工屋だが、最近楽器の金属加工も始めたらしい。
テレキャスタータイプ3連サドル ブラスとスチールの音質変化 まとめ

・スチールサドルよりもブラスサドルの方が比重が高い(≒重い)
・スチールサドルよりもブラスサドルの方が硬度が低い(≒柔らかい)
・スチールサドルは高次倍音が、ブラスサドルは基音と低次倍音が強調されやすい
・スチールサドルは中~高音にアドバンテージがあり、ブラスサドルは暖かな低~中音を得やすい
・サスティーン性能はブラスサドルよりもスチールサドルの方が秀でる
・音の立ち上がりはブラスサドルよりもスチールサドルの方が僅かに上手
→テレキャスタータイプのブラスサドル化は長所を削いで短所を補う方向へ作用しやすい
注意点
最後に部品交換全般の共通事項として、音質の変化は全てのギターやベースで共通の結果とはなりません。本記事ではオクターブ補正無しの円筒3連サドルを選んだ理由は、材質比較を試した中で最も音質の変化が大きかったためです。
当然ながら効果が分かりやすいサドル形状だけでなく、音質変化が分かりにくいものも多々あります。そもそも同一サイズ・形状のサドル自体少ない上に、材質毎にサイズや形状を最適化して生産されているメーカーも散見です。

当ブログの検証結果を参考にしつつ、音作りの一環としてサドルによる音質変化をお試しください!
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