【ギタリストの疑問】ギターピックアップはポールピース無しでどれくらい音が変わるの?【ハムバッカー編】

2024年4月9日ピックアップ,ハムバッカー,改造指南,素朴な疑問,アジャスタブル・ポールピース,音質改善,ポールピース,ギター

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👆 ギターピックアップ ポールピース無し (Duncan Designed HB-103B)

目次

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ギターピックアップをポールピース無しで使った音が気になる!

近頃はあまり時間が確保できないため、ギターに関する素朴な疑問を解決していきます。ハムバッカーやP-90型などは、アジャスタブル・ポールピースを採用する事が多いです。

ギターピックアップ ポールピース 6本 その1
👆 アジャスタブル・ポールピース用鉄ネジ

いずれも鉄製ネジを使用した機種が多く、ポールピース単体では磁力がありません。ネジが内部や背面のマグネットに接触する事で磁力を帯び、正常な磁界を形成します。

ギターピックアップ ポールピース 6本 その2

またアジャスタブルの名の通り、ネジの高さで出力や音色の微調整が可能です。指板のRやピッキングのクセに合わせて出力を調整する場合、優れた効果を発揮します。

基本的に弦とポールピースが近い程出力が高く、遠くなると出力が弱まる傾向です。

では逆に、ポールピース無しの状態ではどれほどサウンドに変化があるのでしょうか。そこで今回はハムバッカーを使い、6本のアジャスタブル・ポールピースを外してみました。

ギターピックアップポールピース無しの実験台ハムバッカーはDuncan Designed HB-103B!

検証に使ったのは安上がりな所で、Duncan Designed HB-103Bをチョイスしています。

ギターピックアップ ハムバッカー Duncan Designed HB-103B

HB-103BはSH-6bの廉価版に該当し、ジャキジャキにトレブリーなサウンドが特徴です。

ギターピックアップ ハムバッカー Duncan Designed HB-103B 裏面

出力は高めでミッド~ハイが出やすく、ハイゲインでもアタック感が保てます。

ギターピックアップ ハムバッカー Duncan Designed HB-103B コイルタップ時動作

コイルタップにも対応しており、タップ時は標準でロゴ側が出力される仕様です。

ギターピックアップ ハムバッカー Duncan Designed HB-103B 直流抵抗値
直流抵抗値は約17.46kΩ

せっかくなのでハムサウンドとシングルサウンド、両面で音の変化を調べていきます。

本家SH-6のデータはこちら

ギターピックアップポールピース有りor無し 倍音特性の変化

ギターピックアップポールピース有りor無し 倍音特性の変化

倍音は周波数が分かりやすいように、5弦開放弦のスペクトラムを採用しました。計測にはギターアンプを使用せず、DIからインターフェースに直結です。

1.コイルタップ ポールピース有り

ギターピックアップ コイルタップ ポールピース有り 倍音特性の変化

倍音量はSH-6bよりも控えめですが、偶数次と奇数次倍音のバランスが整っています。基音~第2、第2~第3、第3~第4倍音間のみ、鋭い非整数倍音が発生です。コイルタップでも出力が高いため、アタック感の強さが反映されています。

2.コイルタップ ポールピース無し

ギターピックアップ コイルタップ ポールピース無し 倍音特性の変化

ポールピース無しの場合、全体的に倍音量が激減している事が一目瞭然です。ただし倍音は偶数次寄りに変化しており、第2、第6倍音の主張が強くなっています。倍音的な響きが全く味わえない反面、音自体はナチュラルに丸みがある印象です。

ギターピックアップ コイルタップ ポールピース無し 倍音特性の変化 非整数倍音

その他大きな違いとして、基音~第2倍音間のみ大きな非整数倍音が発生しています。基音付近のアタック音は、ポールピース無しでも拾いやすいのかもしれません。

3.ハムバッカー ポールピース有り

ギターピックアップ ハムバッカー ポールピース有り 倍音特性の変化

続いてHB-103Bのハムバッカーサウンドですが、こちらも倍音量は多く無いです。倍音のバランスもタップ時と大差無く、アタックの非整数倍音が広域に発生しています。第8倍音付近まで非整数倍音が確認出来ますが、非整数倍音の音量自体は小さめです。ハムバッカーの丸みを帯びたアタック音を、そのまま体現していると言えるでしょう。

4.ハムバッカー ポールピース無し

ギターピックアップ ハムバッカー ポールピース無し 倍音特性の変化

コイルタップ時と比較すると、ポールピースの有無による倍音の差が大きくありません。倍音量は同程度で、バランス感に関してはポールピース無しの方が良好に思えます。特に第6倍音が増幅し第7倍音が減衰しているため、中音域に温かみを感じる響きですね。アタック音の非整数倍音は基音~第4倍音付近と半減し、音量も控えめに変化しています。

倍音特性波形の周波数目安

左端から2番目の山(中央灰色線)が基音110Hz
偶数次倍音:第2倍音(220Hz)、第4倍音(440Hz)、第6倍音(660Hz)……
→ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も
奇数次倍音:第3倍音(330Hz)、第5倍音(550Hz)、第7倍音(770Hz)……
→金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き
非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない

ギターピックアップポールピース有りor無し 周波数特性の変化

ギターピックアップポールピース有りor無し 周波数特性の変化

周波数特性は同一フレーズを繰り返し、平均的スペクトラムを割り出しました。

a.コイルタップ ポールピース有り

ギターピックアップ コイルタップ ポールピース有り 周波数特性の変化

出力の弱い帯域が存在せず、中~高音域の伸びが非常に良い波形を計測です。中音域は300~800Hzまで満遍なく高く、芯の強いサウンドを体感出来ます。1kHz以降は超高音域に至るまで伸びすぎる程で、文字通りジャキジャキの音ですね。

b.コイルタップ ポールピース無し

ギターピックアップ コイルタップ ポールピース無し 周波数特性の変化
-10dB

ポールピースを外すと音量低下が顕著となり、平均して-10dBも出力が低下しています。配線を間違えたのかと思う程に音量が低いため、出力を+10dB補正してみました。補正後の波形でも全帯域に周波数特性が減衰したままで、音の線が細くて弱々しいです。

ギターピックアップ コイルタップ ポールピース無し 補正 周波数特性の変化
±0dBに補正

400Hz以下が特に激減しているので音に迫力が無く、高音域も大人しく変化しています。それでも標準よりは高音域が伸びるからか、シャリシャリした独特の音色を再現です。ギターらしくないトーンですが、大正琴的なチャリンとした音を作れるかもしれません。

c.ハムバッカー ポールピース有り

ギターピックアップ ハムバッカー ポールピース有り 周波数特性の変化

ハムバッカーではコイルタップの波形から、高音域の山を削ったような形状となります。1k~6kHz付近が圧縮された波形となっており、音の芯が高音に埋もれにくい傾向です。ところが6k~11kHz付近で盛り返すため、プレゼンスの攻撃力が高くなっています。安定した低~中音域に程よい高音、そしてド派手な超高音域がクリアな音を後押しです。

d.ハムバッカー ポールピース無し

ギターピックアップ ハムバッカー ポールピース無し 周波数特性の変化
-1dB

ポールピース無しでも出力低下は僅か1dB程度で、ポールピース無しのコイルタップ程の音量差がありません。けれども大幅に歪みにくくなっており、ディストーション感が薄れています。200Hz以下はシングルコイル相当になるなど、低音域の主張が控えめに変化です。400~1kHz付近はほとんど差が無く、1kHz以降は大幅に特性が向上しています。

ギターピックアップ ハムバッカー ポールピース無し 補正 周波数特性の変化
±0dBに補正(ほぼ変化無し)

高音域の特性は、ポールピース有りのコイルタップとハムバッカーの中間程度ですね。深く歪まないためハードロックには不向きですが、クランチとは好相性となっています。シングルともハムともP-90とも異なるサウンドで、想像以上にインパクトが強いです。倍音のバランス感と合わせて、ローゲインハムとして相当使えるサウンドに思えます。

波形の周波数目安(左から順に)

赤線:100Hz,200Hz
橙線:400Hz,800Hz
桃線:2kHz,3kHz,6kHz

ギターピックアップポールピース有りor無し サスティーンの変化

ギターピックアップポールピース有りor無し サスティーンの変化

サスティーンはシンプルに、開放弦Eコードを1ストローク鳴らして計測です。ポールピース有りを基準となる0とし、交換後に±何%音が伸びたかを掲載しています。計測したデータを元に、平均%、最小%、最大%の3通りのデータを算出しました。

コイルタップ ポールピース無し

ギターピックアップ ハムバッカー ポールピース無し 周波数特性の変化

平均%:-41.5%

最小%:-48.3%

最大%:-38.9%

コイルタップ時は出力が-10dBも低下しているため、当然ながら音伸びも激減です。ポールピースが無い場合、サスティーンは4~5割程度減少すると考えて良いでしょう。

ハムバッカー ポールピース無し

平均%:-8.5%

最小%:-12.6%

最大%:-11.1%

出力は-1dB程度の低下でしたが、サスティーンは1割程度低下する傾向となっています。コイルタップ時程ではないものの、やはり体感的には『あと一歩伸びない』感覚ですね。カッティング特化のセッティングなど、使い道を絞れば上手くハマるかもしれません。

ギターピックアップポールピース有りor無し 音質変化 まとめ

これらの結果から、アジャスト側をタップする際はポールピースが不可欠と分かります。倍音量の減少、出力と周波数特性の低下、音伸びの悪化など基本性能はガタ落ちです。

ギターピックアップポールピース有りor無し 音質変化 まとめ1

ギターらしくない音色に変化するため、標準的な仕様では使いにくいと思われます。大正琴的な音と評した通り、変化球な音を狙う場合など活用法が限定的です。

ギターピックアップポールピース有りor無し 音質変化 まとめ2
ポールピース有り

対してハムバッカーでは、音色やゲインを調整する手段として十分活用出来ます。ポールピースの数は半分となりますが、出力の低下はそこまで大きくはありません。それでいて周波数が高音寄りにシフトするなど、HB-103Bでは面白い変化を確認です。

ギターピックアップポールピース有りor無し 音質変化 まとめ3
ポールピース無し

ローゲインなFENDER系アンプと相性が良く、心地良いクランチトーンを奏でてくれます。元がハイゲイン型とは思えない程に音が変化するため、暇なら試す価値はありそうです。

ギターピックアップポールピース有りor無し 音質変化 まとめ4

勿論全てのハムバッカーで共通の結果は得られないので、効果は様々だと思います。使い道の無いピックアップの活路の一つとして、ポールピース抜きをお試し下さい!

補足

今回の磁界の変化を応用したモデルが、ダンカンのSH-12(ジョージ・リンチシグネチャー)やSLSD-1です。

🏃💨俺は普通にポールピース有りのギター用ピックアップランキングが気になる🎸


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