【ギタリストの疑問】ギターピックアップはポールピース無しでどれくらい音が変わるの?【ハムバッカー編】
👆 ギターピックアップ ポールピース無し (Duncan Designed HB-103B)
目次
本日もギタいじへようこそ!ハジメマシテな君は『コチラ』も見てね!
👑散財は美徳!今が旬のギターピックアップランキング!!
ギターピックアップをポールピース無しで使った音が気になる!
近頃はあまり時間が確保できないため、ギターに関する素朴な疑問を解決していきます。ハムバッカーやP-90型などは、アジャスタブル・ポールピースを採用する事が多いです。
いずれも鉄製ネジを使用した機種が多く、ポールピース単体では磁力がありません。ネジが内部や背面のマグネットに接触する事で磁力を帯び、正常な磁界を形成します。
またアジャスタブルの名の通り、ネジの高さで出力や音色の微調整が可能です。指板のRやピッキングのクセに合わせて出力を調整する場合、優れた効果を発揮します。
基本的に弦とポールピースが近い程出力が高く、遠くなると出力が弱まる傾向です。
では逆に、ポールピース無しの状態ではどれほどサウンドに変化があるのでしょうか。そこで今回はハムバッカーを使い、6本のアジャスタブル・ポールピースを外してみました。
ギターピックアップポールピース無しの実験台ハムバッカーはDuncan Designed HB-103B!
検証に使ったのは安上がりな所で、Duncan Designed HB-103Bをチョイスしています。
HB-103BはSH-6bの廉価版に該当し、ジャキジャキにトレブリーなサウンドが特徴です。
出力は高めでミッド~ハイが出やすく、ハイゲインでもアタック感が保てます。
コイルタップにも対応しており、タップ時は標準でロゴ側が出力される仕様です。
せっかくなのでハムサウンドとシングルサウンド、両面で音の変化を調べていきます。
本家SH-6のデータはこちら
ギターピックアップポールピース有りor無し 倍音特性の変化
倍音は周波数が分かりやすいように、5弦開放弦のスペクトラムを採用しました。計測にはギターアンプを使用せず、DIからインターフェースに直結です。
1.コイルタップ ポールピース有り
倍音量はSH-6bよりも控えめですが、偶数次と奇数次倍音のバランスが整っています。基音~第2、第2~第3、第3~第4倍音間のみ、鋭い非整数倍音が発生です。コイルタップでも出力が高いため、アタック感の強さが反映されています。
2.コイルタップ ポールピース無し
ポールピース無しの場合、全体的に倍音量が激減している事が一目瞭然です。ただし倍音は偶数次寄りに変化しており、第2、第6倍音の主張が強くなっています。倍音的な響きが全く味わえない反面、音自体はナチュラルに丸みがある印象です。
その他大きな違いとして、基音~第2倍音間のみ大きな非整数倍音が発生しています。基音付近のアタック音は、ポールピース無しでも拾いやすいのかもしれません。
3.ハムバッカー ポールピース有り
続いてHB-103Bのハムバッカーサウンドですが、こちらも倍音量は多く無いです。倍音のバランスもタップ時と大差無く、アタックの非整数倍音が広域に発生しています。第8倍音付近まで非整数倍音が確認出来ますが、非整数倍音の音量自体は小さめです。ハムバッカーの丸みを帯びたアタック音を、そのまま体現していると言えるでしょう。
4.ハムバッカー ポールピース無し
コイルタップ時と比較すると、ポールピースの有無による倍音の差が大きくありません。倍音量は同程度で、バランス感に関してはポールピース無しの方が良好に思えます。特に第6倍音が増幅し第7倍音が減衰しているため、中音域に温かみを感じる響きですね。アタック音の非整数倍音は基音~第4倍音付近と半減し、音量も控えめに変化しています。
倍音特性波形の周波数目安
左端から2番目の山(中央灰色線)が基音110Hz 偶数次倍音:第2倍音(220Hz)、第4倍音(440Hz)、第6倍音(660Hz)…… →ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も 奇数次倍音:第3倍音(330Hz)、第5倍音(550Hz)、第7倍音(770Hz)…… →金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き 非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
ギターピックアップポールピース有りor無し 周波数特性の変化
周波数特性は同一フレーズを繰り返し、平均的スペクトラムを割り出しました。
a.コイルタップ ポールピース有り
出力の弱い帯域が存在せず、中~高音域の伸びが非常に良い波形を計測です。中音域は300~800Hzまで満遍なく高く、芯の強いサウンドを体感出来ます。1kHz以降は超高音域に至るまで伸びすぎる程で、文字通りジャキジャキの音ですね。
b.コイルタップ ポールピース無し
ポールピースを外すと音量低下が顕著となり、平均して-10dBも出力が低下しています。配線を間違えたのかと思う程に音量が低いため、出力を+10dB補正してみました。補正後の波形でも全帯域に周波数特性が減衰したままで、音の線が細くて弱々しいです。
400Hz以下が特に激減しているので音に迫力が無く、高音域も大人しく変化しています。それでも標準よりは高音域が伸びるからか、シャリシャリした独特の音色を再現です。ギターらしくないトーンですが、大正琴的なチャリンとした音を作れるかもしれません。
c.ハムバッカー ポールピース有り
ハムバッカーではコイルタップの波形から、高音域の山を削ったような形状となります。1k~6kHz付近が圧縮された波形となっており、音の芯が高音に埋もれにくい傾向です。ところが6k~11kHz付近で盛り返すため、プレゼンスの攻撃力が高くなっています。安定した低~中音域に程よい高音、そしてド派手な超高音域がクリアな音を後押しです。
d.ハムバッカー ポールピース無し
ポールピース無しでも出力低下は僅か1dB程度で、ポールピース無しのコイルタップ程の音量差がありません。けれども大幅に歪みにくくなっており、ディストーション感が薄れています。200Hz以下はシングルコイル相当になるなど、低音域の主張が控えめに変化です。400~1kHz付近はほとんど差が無く、1kHz以降は大幅に特性が向上しています。
高音域の特性は、ポールピース有りのコイルタップとハムバッカーの中間程度ですね。深く歪まないためハードロックには不向きですが、クランチとは好相性となっています。シングルともハムともP-90とも異なるサウンドで、想像以上にインパクトが強いです。倍音のバランス感と合わせて、ローゲインハムとして相当使えるサウンドに思えます。
波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2kHz,3kHz,6kHz
ギターピックアップポールピース有りor無し サスティーンの変化
サスティーンはシンプルに、開放弦Eコードを1ストローク鳴らして計測です。ポールピース有りを基準となる0とし、交換後に±何%音が伸びたかを掲載しています。計測したデータを元に、平均%、最小%、最大%の3通りのデータを算出しました。
コイルタップ ポールピース無し
平均%:-41.5%
最小%:-48.3%
最大%:-38.9%
コイルタップ時は出力が-10dBも低下しているため、当然ながら音伸びも激減です。ポールピースが無い場合、サスティーンは4~5割程度減少すると考えて良いでしょう。
ハムバッカー ポールピース無し
平均%:-8.5%
最小%:-12.6%
最大%:-11.1%
出力は-1dB程度の低下でしたが、サスティーンは1割程度低下する傾向となっています。コイルタップ時程ではないものの、やはり体感的には『あと一歩伸びない』感覚ですね。カッティング特化のセッティングなど、使い道を絞れば上手くハマるかもしれません。
ギターピックアップポールピース有りor無し 音質変化 まとめ
これらの結果から、アジャスト側をタップする際はポールピースが不可欠と分かります。倍音量の減少、出力と周波数特性の低下、音伸びの悪化など基本性能はガタ落ちです。
ギターらしくない音色に変化するため、標準的な仕様では使いにくいと思われます。大正琴的な音と評した通り、変化球な音を狙う場合など活用法が限定的です。
対してハムバッカーでは、音色やゲインを調整する手段として十分活用出来ます。ポールピースの数は半分となりますが、出力の低下はそこまで大きくはありません。それでいて周波数が高音寄りにシフトするなど、HB-103Bでは面白い変化を確認です。
ローゲインなFENDER系アンプと相性が良く、心地良いクランチトーンを奏でてくれます。元がハイゲイン型とは思えない程に音が変化するため、暇なら試す価値はありそうです。
勿論全てのハムバッカーで共通の結果は得られないので、効果は様々だと思います。使い道の無いピックアップの活路の一つとして、ポールピース抜きをお試し下さい!
補足
今回の磁界の変化を応用したモデルが、ダンカンのSH-12(ジョージ・リンチシグネチャー)やSLSD-1です。
🏃💨俺は普通にポールピース有りのギター用ピックアップランキングが気になる🎸
激安ポールピースネジ
ギターに関する素朴な疑問リンク集
管理人SNS
使い古した電源タップのコードの検証は面白かったかな?この記事が参考になった人は、ぜひギタいじ管理人のXアカウントもフォローしてね!
ギタいじサポーター募集中!
詳しいサポート方法については別記事にて!