【経年PAF再現】Seymour Duncan ANTIQUITY Humbucker レビュー!音も外観も本物!?【ダンカン】
👆 Seymour Duncan ANTIQUITY Humbucker AQ-HM の音質を解析&レビュー!
目次
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Seymour Duncan ANTIQUITY Humbucker AQ-HM 1955年製PAF初期バージョンをヴィンテージ感込みでリアルに再現!
今回は Seymour Duncan (セイモア・ダンカン) より、ANTIQUITY Humbucker AQ-HM の音質を解析します。
ANTIQUITY Humbucker AQ-HMはPAFの特性を、音色と外観の両面で『経年変化』を考慮して再現することを目指したモデルです。マグネットはバータイプのアルニコ2ですが、磁力を低下させる特殊なエージングが施されています。
コイルはスキャッター・ワインドを採用し、機械では再現が難しいランダムな巻きパターンを実現です。これらの意図的な『経年変化仕様』により、甘くソフトなアタックの高音とヴィンテージハム特有の暖かな低音を奏でます。
加えて外観面も強烈なエイジド加工が実施されているため、カバー表面の劣化やネジ類の錆はリアルPAFそのものです。磁力低下、コイルの緩み、外観の風化、そして使用素材に至るまで、1955年製のPAF初期バージョン (※) を完全再現しています。
(※)1955年製の特許申請直後のハムバッカー。Gibson Japan公式ではPAF初期バージョンにあたるピックアップと表記され、1957年にエレキギターへ本格搭載される製品化前段階のモデル。
ANTIQUITY The ’50s series について
ANTIQUITY The ’50s seriesが目指すものは、ロックンロールが誕生した1950年代当時そのままのサウンドです。各モデルは全て当時と同じ材料と製造法を用い、サンタバーバラの工場にて1つ1つ手作りされています。
ダンカンの工場内には、本シリーズ専用のエイジング設備として『Antiquity Room』が存在です。具体的な加工方法は企業秘密とされていますが、Antiquity Roomにて長い時間をかけてエイジングしている旨が公表されています。
ANTIQUITY Humbucker AQ-HM の元となるモデルはSH-55!
1955年製のPAF初期バージョンといえば、同ブランド製のSH-55 Seth Loverが有名です。該当モデルはその名の通り、PAF設計者の1人であるセス・ラヴァー氏が制作に協力しています。
メーカーサイドは明言を避けているものの、ANTIQUITY Humbucker AQ-HMはSH-55を元にエイジングを実施です。ブチレートボビンの金型はSH-55と同じく、オリジナルPAFの金型を実際に製造した工場で作られているものが使用されています。コイルは特注の42AWGプレーンエナメルマグワイヤーを用い、アルニコ2マグネットは2.5インチのものを搭載です。
スペーサーには乾燥させたメイプル材が使われており、カバーとロングレッグボトムプレートはニッケルシルバー製となっています。配線材は2本織シールド網線のシングルコンダクターケーブルで、ワックスポッティングによる含浸処理は一切無しです。含浸無しはオリジナルのGibson PAFに忠実な要素につき、空気の様に明瞭な響きと芳醇な倍音が弾き手を50年代へ誘います。
ANTIQUITY Humbuckerにはセス・ラヴァー氏の直筆サインが転写されていないよ!
エイジド加工無しの ANTIQUITY RETROSPEC’D もラインナップ!
ANTIQUITY Humbucker AQ-HMのバリエーションは、ブリッジ用AQ-HM-bとネック用AQ-HM-nのみです。トレムバッカー等は用意されておらず、カラーもゴールドとニッケルの2種となっています。代わりに経年変化をサウンド面のみに留め、外観にエイジド加工を加えないANTIQUITY RETROSPEC’Dをラインナップです。
ANTIQUITYはその外観のエイジング感が強烈につき、どうしても搭載ギターや使用者を選ぶ要素を孕みます。純粋に綺麗な外観を好む人や、ハードウェアの新しいギターに搭載する場合はANTIQUITY RETROSPEC’Dの選択を視野に入れましょう。
ANTIQUITY Humbucker AQ-HMとSH-55の音質の違いを比較したい!
さてここで是が非でも気になるのが、ANTIQUITY HumbuckerとSH-55の音質面の違いについてです。基本設計と構成部品がSH-55と共通である以上、音質の違いはエイジング度合のみに委ねられています。
そこで本記事ではANTIQUITY Humbucker AQ-HM-nとSH-55nをネックにマウントし、両モデルの倍音や周波数特性を比較しました。磁力低下やスキャッター・ワインドがどれほど音に影響を与えるのか、ANTIQUITYの実力を調べていきましょう。
SH-55 Seth Loverの解析記事はコチラ!
公表データの確認:Seymour Duncan ANTIQUITY Humbucker AQ-HM
ブランド:Seymour Duncan ( セイモア・ダンカン )
モデル:ANTIQUITY Humbucker ( Vintage Humbucker Pickups )
型番 (エイジド加工):AQ-HM-b (Bridge) / AQ-HM-n (Neck)
型番 (エイジド加工無し):RETROSPEC’D AQ-HM-b (Bridge) / RETROSPEC’D AQ-HM-n (Neck)
マグネット:アルニコ2 ( Alnico II Bar )
アウトプットタイプ:Vintage
ワイヤー:1c Braided Shield
推奨ボディ材:ブライトなトーンを持つギター全般 (アッシュ系やメイプル系など高音域にアドバンテージのあるボディ材、またはパーツ構成であれば何でもOK)
推奨指板材:メイプル、またはエボニー指板
非推奨事項:50ワットを超えるハイゲインアンプの使用 (ハウリングするため)
AQ-HM-b (Bridge)
直流抵抗値:8.40kΩ
出 力:4.7
トーンチャート:低音域 6 / 中音域 4 / 高音域 7
AQ-HM-n (Neck)
直流抵抗値:7.70kΩ
出 力:4.2
トーンチャート:低音域 6 / 中音域 4 / 高音域 7
※1.エイジド加工の有無を問わず性能面は共通
※2.推奨ボディ&指板材は SH-55 Seth Lover 準拠、現在非公開情報
ANTIQUITY Humbucker AQ-HMの倍音特性 (D3/146.832Hz)
まずはクリーンにセットしたアンプを通して、ANTIQUITY HumbuckerのD3倍音を解析です。
ANTIQUITY Humbuckerは基音の出力がそれほど高くなく、基音と各倍音の出力差も大きくありません。アタックに影響する基音と第2~第3倍音が前に出にくいため、やや丸みを帯びた音像を形成しています。
第4倍音以降の各倍音は近い出力を示しますが、隣り合った倍音間の出力は適度に揃っていないのもポイントです。出力差が小さくともコンプレッションは適量で分離が良いため、サスティーンがナチュラルな優しさに満ちています。非整数倍音は全帯域で低い値を示すことも重なり、空気の様にクリアな解放感を後押しです。
ただしSH-55同様に基音と第2倍音の谷間と第2倍音と第3倍音の谷間に、小さな非整数倍音の山が発生しています。全体の非整数倍音が小さいANTIQUITY Humbuckerは、SH-55よりも谷間の非整数倍音の主張が強めです。SH-55は音程を感じさせぬパーカッシブな響きに対し、ANTIQUITY Humbuckerは低音に唸るようなニュアンスが含まれています。
SH-55の倍音特性 (D3/146.832Hz)
ANTIQUITY Humbuckerと比較すると磁力が低下していない影響が大きく、基音や第2~第3倍音の出力が高めです。非整数倍音もANTIQUITY Humbuckerよりは大きな値ですが、一般的なハムバッカーよりはかなり低い値を示しています。スキャッター・ワインドが反映されている要素として、2kHz以降の倍音の出力はSH-55の方が小さくなる傾向です。磁力低下が基音や低次倍音の出力をまろやかにし、コイルの緩みが高次倍音を適度に底上げしていることが分かると思います。
倍音特性波形の周波数目安
灰色の線が基音(D3)の146.832Hz 偶数次倍音:第2倍音(293.664Hz)、第4倍音(587.328Hz)…… →ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も 奇数次倍音:第3倍音(440.496Hz)、第5倍音(734.16Hz)…… →金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き 非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
ANTIQUITY Humbucker AQ-HMのクリーン周波数特性
続いて倍音計測と同じセッティングを保ったまま、各モデルの周波数特性を比較です。
ANTIQUITY HumbuckerとSH-55は、トーンチャート上では高音域の値が1異なるのみです。ただし出力はANTIQUITY Humbuckerの方が約17%(Neck)も弱く、280Hzを除き全域でSH-55より低い値を計測しています。
低~中音は280Hzの山に1点集中する波形につき、SH-55以上に無駄な低音や中音を削いでクッキリしたローエンドを形成です。中音~中高音はそれほど差は無いものの、よく見るとANTIQUITY HumbuckerはSH-55よりも小さな山の先端が尖っておりません。
故に中音に機械的鋭さが感じられず歌声のようになめらかで、人間味溢れるアーティキュレーションを可能としています。高音はトーンチャート以上の開きがあり、3kHzを境に大きく減衰するためソフトさと甘みが感じられるハイエンドが印象的です。
SH-55のクリーン周波数特性
SH-55の高音はピアノ的に澄んだ響きが特徴で、ANTIQUITY Humbuckerよりも鼓膜に切れ込むようなアタックを再生します。低~中音も十分メリハリが効いているとは言え、やはりエイジング前の新しさを実感してしまう響き方です。あくまでANTIQUITY Humbuckerと比較した場合、どうしても高音の『エレキギターくささ』が前面に出てきます。高音の周波数特性はSH-55の方が上手ですが、愛機の『素の高音』を引き出せるのがANTIQUITY Humbuckerの魅力だと言えそうです。
周波数特性波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
ANTIQUITY Humbucker AQ-HMのオーバードライブ周波数特性
最後にアンプをハウリングしない程度に歪ませた、オーバードライブ時の周波数特性を比較します。
歪んだ状態の音はトーンチャートの設定に非常に近く、低音から高音までバランスの良い波形を計測です。低音はSH-55とほぼ同等の値を記録し、中~中高音は極僅かにANTIQUITY Humbuckerの方が高い値を示します。
とりわけ400~800Hzにアドバンテージがあるため音の輪郭が際立ち、直進性のあるロングトーンも心地良いですね。高音はクリーンの時ほど開きがないため中音の暖かみを損なわず、むしろキラッと鮮やかに引き立てるバランス感を発揮します。出力が低い分シングルコイル的な力感だけは否めませんが、その分繊細かつ魅惑的な演奏表現を可能にすること請け合いです。
SH-55のオーバードライブ周波数特性
おおまかな波形は一致しているものの400~2.5HzはANTIQUITY Humbucker、2.5kHz以降はSH-55が高い値を記録です。ANTIQUITY Humbuckerよりも中音の値が幾分低いため、中音の空洞的な響きが強調された歪み方となっています。同時に両モデルを弾き比べると、SH-55は中音が一歩後ずさりするような手応えを抱くかもしれません。SH-55も暖かくクリアで滑らかな歪みであるものの音が若く、ANTIQUITY Humbuckerは更に『使い込んだ音』が飛び出すハズです。
周波数特性波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
Seymour Duncan ANTIQUITY Humbucker AQ-HM まとめ
セス・ラバーが監修したSH-55が『出来立てのPAF』と感じられるほど、細部までリアルなヴィンテージ感が加味されています。ANTIQUITY Humbucker AQ-HMは新品であるにも関わらず、70年前に作られたようなコンディションを全方位で巧みに再現です。
磁力低下やコイルの緩みは確実に音に反映されており、錆と変色で貫禄タップリの仕上がりは本物志向に相応しい完成度を誇ります。入手が不可能に近いヴィンテージPAFのサウンドとルックスを、何十年も時を経た『消耗込み』で手に出来るピックアップです!
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ANTIQUITY Humbucker AQ-HM-b (Bridge / エイジド加工有り)
ANTIQUITY Humbucker AQ-HM-n (Neck / エイジド加工有り)
ANTIQUITY RETROSPEC’D Humbucker (エイジド加工無し)
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