【Alnico II Pro HB】Seymour Duncan APH-1レビュー!APH-2とどのくらい音が違うの?【ダンカン解析】

👆 Seymour Duncan APH-1 Alnico II Pro HB の音質を解析&レビュー!
目次
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Seymour Duncan APH-1 Alnico II Pro HB スラッシュ愛用のアルニコ2ハムバッカー!
今回は Seymour Duncan (セイモア・ダンカン) より、APH-1 Alnico II Pro HB の音質を解析です。APH-1 Alnico II Pro HBはヴィンテージ出力のコイルをベースとし、アルニコ2バーマグネットを搭載しています。磁力が控えめのアルニコ2マグネットがストリングプルを低減させ、ナチュラルに広がるサスティーンを実現です。

SH-1 (’59 model) よりもアタックと高音がマイルドですが、ピックアタックへの反応は従順に設計されています。深く歪ませるとキメが細かいドライブを作成しやすく、ブルースやクラシックロックに最適なハムバッカーです。

Guns N’ RosesのAppetite for Destructionのレコーディングにて、かのスラッシュ氏はAPH-1を搭載したDerrig ’59を抜擢します。そして本盤のレコーディングで大成功を収めて以降、ほぼ全てのレコーディングでAPH-1搭載Derrig ’59を使用してきたのです。シグネチャーモデルのAPH-2と同じく、氏のファンにとっては非常に馴染み深いピックアップであると言えます。
APH-1 Alnico II Pro HB はトレムバッカー完備!
バリエーションはブリッジ用APH-1bとネック用APH-1nに加え、ブリッジ用はトレムバッカーのTB-APH1bを選択可能です。ワイヤーはバリエーションを問わず4芯仕様となっているため、標準でコイルタップ配線に対応します。
ボトムプレートはロングレッグ仕様のニッケルシルバー製が使用されており、仕上げに真空ワックスポッティングを実施です。ボビントップはロゴ無しのシンプルなデザインで、4芯ワイヤー以外はヴィンテージ系のルックスとなります。

👆 TB-APH1b Alnico II Pro Trembucker Black
なおTB-APH1bは弦間が0.414インチにつき、フロイドローズ搭載機やフェンダーピッチのギターにはこちらを推奨です。APH-1bとTB-APH1b選択の目安はブリッジピックアップザグリ真上 (※) にて、1弦から6弦までの距離が50mmを超える場合はTB-PG1が最適だと言えるでしょう。
(※) ブリッジサドルの弦ピッチではなく『ブリッジPUザグリ真上の弦ピッチ』が50mm超
APH-1とAPH-2はどれほど音に違いがあるのか知りたい!
Alnico II Proシリーズの使用を検討しているプレーヤーにとって、気になるのがAPH-1とAPH-2の音質面の違いだと思います。トーンチャート上ではAPH-1よりもAPH-2の中音特性が+1となっており、出力もAPH-2の方が数%ブーストされた設計です。
いずれもスラッシュ氏と縁のあるハムバッカーにつき、どちらを選べば良いのか悩みどころとなっています。そこで本記事ではAPH-1nとAPH-2nのサウンドを同一条件で解析し、両モデルの倍音特性や周波数特性を比較してみました。スラッシュサウンドの再現を目指している方など、Alnico II Proシリーズ導入前の参考になれば幸いです。
比較対象となるAPH-2 Alnico II Pro Slashの解析記事はコチラ!
公表データの確認:Seymour Duncan APH-1 Alnico II Pro HB
ブランド:Seymour Duncan ( セイモア・ダンカン )
モデル:Alnico II Pro HB ( Classic Humbucker Pickups )
型番:APH-1b (Bridge) / APH-1n (Neck) / TB-APH1b (Trembucker)
マグネット:アルニコ2 ( Alnico II Bar )
アウトプットタイプ:Vintage
ワイヤー:4c Shielded
推奨ボディ材:ブライトなトーンを持つギター全般 (アッシュ系やメイプル系など高音域にアドバンテージのあるボディ材、またはパーツ構成であれば何でもOK)
推奨指板材:メイプル、またはエボニー指板
特記事項:推奨指板材に反してスラッシュ氏のシグネチャーギターは基本ローズウッド指板(というよりも、APH-1搭載モデルはマホガニーボディやローズウッド指板が圧倒的に多い)
APH-1b (Bridge)
直流抵抗値:8.40kΩ
出 力:6.4
トーンチャート:低音域 7 / 中音域 4 / 高音域 8
レゾナントピーク:6.70kHz
APH-1n (Neck)
直流抵抗値:7.50kΩ
出 力:5.9
トーンチャート:低音域 7 / 中音域 4 / 高音域 8
レゾナントピーク:6.40kHz
TB-APH1b (Trembucker)
直流抵抗値:8.80kΩ
出 力:6.4
トーンチャート:低音域 7 / 中音域 4 / 高音域 8
レゾナントピーク:6.70kHz

APH-1 Alnico II Pro HBの倍音特性 (D3/146.832Hz)
まずはクリーンセッティングのアンプを通して、APH-1 Alnico II Pro HBのD3倍音(4弦開放)を解析です。
APH-1はアルニコ2搭載ピックアップらしく、全体的に非整数倍音が控えめに計測されています。特に中音から高音にかけて非整数倍音が極めて少ないため、音の分離の良さと滑らかさが際立つサウンドです。対照的に基音以下は非整数倍音が気持ち多めに計測されており、独特のとろけるような重みを内包しています。

公式では『バターが溶けるような』と表現されていますが、まさにそういった固体と液体の中間的な暖かみのある低音です。倍音が計測される帯域は広くないものの、基音から高次倍音にかけて出力が緩やかに減衰していきます。故にコンプレッション感がそれほどなく、アタックコントロールが容易です。アーティキュレーションを意識したプレイなど、弾き手の力量と個性を発揮しやすい倍音特性だと言えるでしょう。
APH-2の倍音特性 (D3/146.832Hz)
APH-2は出力が強化されているからか、中高音以降の倍音出力が高い値を計測しています。高次倍音が計測されている帯域も広く、APH-1より中高音~高音が細やかで派手な印象を抱くはずです。非整数倍音はAPH-1とは真逆の傾向となっており、基音以下の非整数倍音が控えめとなっています。

一方中高音以降は非整数倍音が多めで、基音や低次倍音間の谷間には鋭く尖った非整数倍音の山が発生です。更に中音~中高音にかけて突発的に出力の高い倍音が混ざるなど、体感的なバイト感はAPH-1以上となります。

中高音以降の派手な倍音と鋭く尖った非整数倍音の山、そこにバイト感が加わることでAPH-1よりもワイルドな響きを構築です。高次倍音は出力が揃い気味となるため、高音から超高音にかけてやんわりとコンプレッションが効いています。
倍音特性波形の周波数目安
灰色の線が基音(D3)の146.832Hz 偶数次倍音:第2倍音(293.664Hz)、第4倍音(587.328Hz)…… →ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も 奇数次倍音:第3倍音(440.496Hz)、第5倍音(734.16Hz)…… →金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き 非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
APH-1 Alnico II Pro HBのクリーン周波数特性
続いて倍音計測と同じセッティングを保ったまま、APH-1 Alnico II Pro HBの周波数特性を解析です。APH-1とAPH-2は中音のトーンチャートが異なりますが、実際には低音と高音の違いの方が大きく計測されています。APH-1は倍音特性を反映し、やや粘度のある広がり方をするローエンドを形成です。

高音は僅かにAPH-2よりも大人しく、あえて明暗で分けるのであれば『暗寄りのトーン』を奏でます。勿論APH-2と比較するのであればという条件付きの話で、通常のハムバッカーと比較した場合は高音がほどよく伸びる銘柄です。両モデルは中音に大きな差がないものの、APH-1の方は700~2kHzにかけての中高音が多少引っ込み気味となります。
APH-2のクリーン周波数特性
APH-1とAPH-2は幾分出力に差があるため、APH-2の出力が同等になるようにマスターを絞って調整したのが下記波形です。出力を揃えると波形の大まかな形状が一致する通り、両モデルは再生可能な周波数帯域に極端な差がありません。強いて挙げるとすれば、APH-1とは低音と高音の優劣関係が逆転している程度の違いとなります。

APH-2はそれほど粘度がなく引き締まった低音に、軽やかに切り込める高音が『明寄りのトーン』です。ただしAPH-2は高次倍音のコンプ感が影響し、高音は適度に角が均された甘やかな響きとなっています。このようにAPH-1とAPH-2のクリーンは再生可能な帯域よりも、倍音特性が与える影響が大きいと考えて良いでしょう。
各波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2kHz,3kHz,6kHz
APH-1 Alnico II Pro HBのオーバードライブ周波数特性
最後にアンプのゲインを上げた、オーバードライブ時の周波数特性を確認です。

APH-1は出力と抵抗値がAPH-2より低いこともあり、同一のゲイン設定ではどうしても歪みが薄くなります。APH-2ならゲイン8~9で再現可能な歪みも、APH-1の場合はゲインを10まで上げてようやく同程度に歪む感覚です。しかし再生可能な周波数帯域は依然として大きな差がなく、ほとんど同じトーンのままドライブ感だけが抑えられています。
APH-2のオーバードライブ周波数特性

トーンの近似性はAPH-2の波形を見比べると一目瞭然で、クリーンの時以上に周波数特性の差が小さいです。違いはゲインのみと言っても差し支えなく、APH-2は公式が謳う通りAPH-1を若干ブーストした音を再現しています。
各波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2kHz,3kHz,6kHz
APH-1とAPH-2のオーバードライブ倍音特性 (D3/146.832Hz)

周波数特性だけではゲインの違いが分かりにくいため、各モデルを歪ませた状態で倍音特性を確認です。APH-1は歪ませても基音以降の周波数帯域の非整数倍音が少ない上に、クリーン時と同じく緩やかな倍音出力の減衰を保っています。

APH-2は基音や倍音の山のふもとが幅広い形状に変化し、倍音と倍音間の非整数倍音も大幅に増幅です。倍音の山の頂点もAPH-1より高い箇所が多いなど、アンプの設定が共通の場合はAPH-2の方が深く歪みやすいことが分かります。
おまけ:出力をAPH-1に揃えるのではなく『ゲインをAPH-2に揃える』と……?

APH-1は基音や倍音のふもとがスリムなのでゲインを上げてもAPH-2よりも歪みが細やか!

あえてAPH-1とハイゲインアンプでキメの細かいオーバードライブを作るプレーヤーが多いのも頷けるね!
Seymour Duncan APH-1 Alnico II Pro HB 音質解析 まとめ
ヴィンテージ出力らしさを感じる滑らかな高音と、柔らかく暖かな低音が甘美なアルニコ2ハムバッカーです。ナチュラルに伸びるサスティーンも心地良く、ハイゲインアンプに繋いだ際のシルキーな歪みが中毒性大となっています。

メイプルやエボニーなど輪郭のクッキリする指板材や、チタンパーツ等でブライトにチューニングされたギターと相性が抜群です。APH-2と同等のトーンレンジを備えつつ、よりローゲインかつ整然とした倍音が良好なピッキングレスポンスを後押ししてくれます!
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APH-1b Alnico II Pro HB (Bridge)
APH-1n Alnico II Pro HB (Neck)
TB-APH1b Alnico II Pro HB (Trembucker)
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