【経年音質】Seymour Duncan ANTIQUITY Tele BRIDGE 1950年代テレキャスターを錆まで再現【ダンカン解析&レビュー】
👆 Seymour Duncan AQ-TEb ANTIQUITY Tele BRIDGE 経年変化まで極限再現した音を解析&レビュー!
目次
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Seymour Duncan ANTIQUITY Tele BRIDGE 1950年代テレキャスターの音と外観を経年変化込みで極限再現!
今回は Seymour Duncan (セイモア・ダンカン) より、ANTIQUITY Tele BRIDGE (AQ-TEb) の音質を解析です。ANTIQUITY Tele BRIDGEは、1950年代初頭のテレキャスターブリッジピックアップを念頭に開発されています。
マグネットは手磨きのアルニコ2を搭載し、意図的にランダムなパターンでコイルを手巻きするスキャッター・ワインドを採用です。高音域は伸びやかでも耳に痛くなく、滑らかな輪郭の甘さが実にクラシカルな響きを織り成します。
そして何よりも目を引くのは、徹底的にエイジド加工が施された貫禄タップリのルックスです。ANTIQUITYはサウンド面だけでなくルックス面も含む、あらゆる要素を『経年変化込み』で極限まで再現しています。
ANTIQUITY The ’50s series について
ANTIQUITY The ’50s seriesが目指しているのは、ロックンロールが誕生した1950年代当時のリアルなサウンドです。各モデルは全て当時と同じ材料と製造法を用い、サンタバーバラの工場にてハンドメイドされています。
先に挙げた経年による音と外観両面の変化を重視しているため、言うのであれば『錆付き・コイルの緩み・磁力低下有り』がデフォルトです。実際にダンカンの工場内に存在するAntiquity Roomにて、時間をかけてエイジングされている (※) ことが公表されています。
※具体的な加工方法は企業秘密とのこと
ANTIQUITY Tele BRIDGE の元となったテレキャスターは1953年製?
本記事で取り上げるANTIQUITY Tele BRIDGEですが、元になった機種については『early-’50s Tele tone』としか紹介されておりません。ただしダンカン公式サイトでは『’53バタースコッチTELE』を例に挙げているので、こちらが元ネタである可能性が高そうです。
ボビンは伝統的なNVF社のForbon (加硫繊維) を採用し、安定化のためワインド前にラッカーが塗布されています。またランプブラックのパラフィンワックスを用いて、コイル本体のみをポッティングです。
銅メッキ仕様のスチールボトムプレートはあえて含浸を行わず、フィードバックを誘発しやすい構造となっています。
エイジド加工無しの ANTIQUITY RETROSPEC’D Tele もラインナップ!
とは言えANTIQUITYのエイジング感は尋常ではなく、決して万人受けが良いルックスであるとは断言出来ません。表面の変色と錆に塗れた (正確には若干独特の臭気もある) ポールピースやボトムプレートを前に、拒絶反応を示す方も少なからずいるはずです。
そのようなユーザーの要望に応えて、ダンカンではANTIQUITY RETROSPEC’D シリーズも発表しています。ANTIQUITY RETROSPEC’Dはサウンド面の経年変化のみに留め、エイジド加工が施されていない綺麗なルックスを実現です。
👆 Antiquity Retrospec’d Tele Bridge
Antiquity Retrospec’d Tele Bridgeは真新しいギターに取付けても違和感なく、1950年代のヴィンテージサウンドを注入可能となっています。購入時は好みに合わせて、ANTIQUITYかANTIQUITYRETROSPEC’Dのいずれかを選択しましょう。
音質解析にはANTIQUITY Tele BRIDGE (AQ-TEb) を使用し、倍音や周波数特性をSTL-1(Vintage ’54 Tele)と比較しました!
スキャッター・ワインドや含浸無しプレートの影響を考慮しつつ、細部までじっくりとチェックです!
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比較対象となるSTL-1のデータはこちらの記事でチェック!
公表データの確認:Seymour Duncan ANTIQUITY Tele BRIDGE (AQ-TEb)
ブランド:Seymour Duncan ( セイモア・ダンカン )
モデル:ANTIQUITY Tele BRIDGE (Vintage Telecaster Pickups)
型番:AQ-TEb (エイジド加工) / RETROSPEC’D AQ-TEb (エイジド加工無し)
マグネット:アルニコ2 (Alnico 2 Rods)
直流抵抗値:6.5kΩ
アウトプットタイプ:Vintage
出 力:3.9
トーンチャート:低音域 3 / 中音域 6 / 高音域 7
ワイヤー:CLOTH PUSH-BACK
うおおおおお!!!!
開封時に錆の粉が舞わないように注意しよう(一敗)!
ANTIQUITY Tele BRIDG の倍音特性 (C3/130.813Hz) をSTL-1と比較!
まずはクリーンにセットしたアンプを通して、ANTIQUITY Tele BRIDGのC3倍音を解析していきます。
単音で鳴らすとアタック感が強く、とても甘太い音伸びの印象です。基音より高い出力の倍音が存在せず、尚且つ基音の山のすそ幅が広く計測されています。基音以下の非整数倍音も多めで、音程を感じさせぬ重めの空気感を内包です。
第2倍音は基音とほぼ同等の出力となっており、第3倍音以降はSTL-1よりも1~3割程控えめの出力となっています。かといって倍音の計測範囲自体には大差が無いため、低次倍音も高次倍音も主張し過ぎない滑らかな響き方です。経年による磁力低下やコイルの緩みがもたらす、甘枯れした倍音出力の減少を上手く再現出来ていると感じます。
STL-1の倍音特性
STL-1は全体的に倍音の出力が高い上に、基音以下の非整数倍音が多くありません。基音の山すそ幅も狭く、ANTIQUITY Tele BRIDGよりも細い山を計測です。
第2~第4倍音の方が基音よりも出力が高いなど、全面的に倍音の煌びやかさが主張しています。第18~20倍音付近の強さも突出しており、一般的にイメージする『新品のテレキャスらしいスパンキーな響き』だと言えるでしょう。
倍音特性波形の周波数目安
左端の山(中央灰色線)が基音のC3(130.813Hz) 偶数次倍音:第2倍音(261.626Hz)、第4倍音(523.252Hz)…… →ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も 奇数次倍音:第3倍音(392.439Hz)、第5倍音(654.065Hz)…… →金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き 非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
ANTIQUITY Tele BRIDGE のクリーン音質をSTL-1と比較!
続いて倍音計測時のセッティングを保ったまま、クリーンの周波数特性を解析です。
倍音計測のように単音を途切れるまで鳴らす場合とは異なり、コードやソロフレーズを演奏すると高音域の印象が一変です。フィードバックという程ではありませんが、明らかに単音白玉では得られなかった高音も計測されるようになりました。やはりボトムプレートの含浸無しが大きいのか、6kHz以降はSTL-1以上にラメを塗ったような高音の明るさを実感出来ます。
ですが基音以下の非整数倍音が大きい分だけ唸るような低音の力感があり、対照的に中音は気持ち控えめかつフラットです。高音の強さと低音の強さが相殺されているため、結果的に中音を綺麗にくりぬいたような独特の空洞感が強調されています。
STL-1のクリーン音質
STL-1は高音域9設定ですが、4kHz以降は高音7設定のANTIQUITY Tele BRIDGEの方が上手です。しかし100~2kHzにかけて平坦かつ控えめの特性につき、ANTIQUITY Tele BRIDGE以上に中高~高音が前に出やすくなっています。
波形で比較すると違和感を覚えるトーンチャートではあるものの、聴覚的には高音7と9の設定通りに聞こえるのが不思議ですね。含浸がしっかりしている分STL-1は浮ついて暴れるような雰囲気が無く、一気に突き抜けるように中高音が鋭く響きます。
ANTIQUITY Tele BRIDGE のオーバードライブ音質をSTL-1と比較!
最後にハウらない程度までアンプのゲインを上げた、オーバードライブの周波数特性を比較です。
深く歪ませるとクリーンにおける周波数特性の特徴を、より極端に特化させた波形に変化しています。中音のフラット感が一層顕著となっており、400~2kHzにかけて大きな谷間を形成です。2k~3kHも若干控えめですが、3kHz以降はSTL-1以上の伸びを計測しています。
低音は280Hz付近に一点集中しているため、重い空気感が和らぎタイトな音色に変化です。決してドンシャリな響きではなく、高音がローエンドと空洞的な中音の内部へニスを塗ったかのような煌めきを与えています。言語化が非常に難しいものの、公式が『滑らかでスウィート』と謳う意図がしっかりと伝わるサウンドですね。
更に出力やゲインを上げるとギター全体が共鳴するようなフィードバックが得られるよ!
STL-1のオーバードライブ音質
STL-1も中音で谷間を形成していますが、ANTIQUITY Tele BRIDGEよりも低~中音の減衰が緩やかとなっております。低音の280Hz付近を頂点としながらも、2kHzにかけてなだらかな坂状の谷間を形成です。
280~400Hzおよび2k~3kHzはANTIQUITY Tele BRIDGEよりも出力が高く、ゴリっとした粒の粗いドライブを奏でます。STL-1では15kHz以降の超高音も計測されている反面、4k~13kHzまでは依然としてANTIQUITY Tele BRIDGE以下の値です。
これらの結果から、両モデルのトーンチャートは周波数特性を目安にしたものではないという事が分かります。ANTIQUITY Tele BRIDGEはハイエンドを丸めたというよりも、フラットな中~中高音が織り成す空洞感が肝になると言えそうです。
周波数特性波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
Seymour Duncan ANTIQUITY Tele BRIDGE (AQ-TEb) 音質解析 まとめ
新品のテレキャスターサウンドとは一線を画す、甘枯れた倍音特性と適度に抜けた中音の空洞感を巧みに再現しています。体感的に高音が丸く聞こえてしまうチューニングが絶妙で、ピックアップの経年変化を音と外観の両面で楽しむことが可能です。
あえてブースト気味に歪ませてフィードバックを交えた際に得られる、空間が軋むようなサウンドも唯一無二となっております。現実的に入手が不可能に近い、1950年代初期バタースコッチのあの音や雰囲気を『新品錆付き』で味わえるピックアップです!
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ANTIQUITY Tele BRIDGE AQ-TEb (エイジド加工)
ANTIQUITY RETROSPEC’D Tele BRIDGE AQ-TEb (エイジド加工無し)
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