【ハムP90化】Seymour Duncan SPH90-1 Phat Catの音やバイト感はP-90に近いの?【ダンカン解析】
👆 Seymour Duncan SPH90-1 Phat Cat ハムサイズP-90の音質を解析&レビュー!
目次
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Seymour Duncan SPH90-1 Phat Cat ハムバッカーをP-90の音に無加工再現!
今回はSeymour Duncan (セイモア・ダンカン) 製P90タイプの中でも高い支持を得ている、SPH90-1 Phat Catを取り上げていきます。SPH90-1は金属カバーを採用した、ハムバッカーサイズのP-90タイプピックアップです。
カタログ等では文字通り『Humbucker Sized P90 Pickups』として紹介されています。
ハムバッカー搭載ギターへの交換を目的としており、ハムザグリに無加工で取付け可能です。ボディへ余計な穴を開けたり、ザグリの拡張加工をせずにP-90サウンドが堪能出来ます。
P-90熱が高まる昨今では、単体販売のセールスも上々で普及率が高いモデルです。
事実サウンドハウスのP-90部門ランキングにおいて、半ば常連的存在となっています。故にピックアップに詳しくない方でも、この外観でピンと来る人が多いかもしれません。
SPH90-1 Phat Catの開発はCustom Shop!
元来SPH90-1はリプレイスメント用途ではなく、Hamer Guitars向けに開発されました。開発はダンカン・カスタムショップが担当しており、後にレギュラーライン化した製品です。
現在でも製造はカリフォルニア州サンタバーバラにて、手作りで行われています。
ベースプレートはニッケルシルバーを採用し、ワイヤーは単芯網シールドワイヤーです。仕上げに真空ワックスポッティングを行うなど、万全なハウリング対策がなされています。
金属製カバーのシールド効果も重なり、標準的P-90型よりもサウンドはローノイズです。
基本バリエーションは多くなく、マウント箇所とカバーカラーで各2種用意されています。
ブリッジ用はSPH90-1b、ネック用がSPH90-1n、カラーはニッケルとゴールドです。SPH90-1nはRW/RP(逆巻き/逆磁極)につき、併用する事でハムキャンセル効果が得られます。
Custom Shopで人気に火が付いたという事は良い音?
ここで気になるのは、カスタムショップが開発したというSPH90-1の音質についてです。カスタムショップという名前だけで、多くのユーザーは多大なプレミアム感を抱きます。
ましてや人気高騰によりレギュラー化した経緯まであるため、期待値は爆上がりです。ダンカン公式サイドによると、SPH90-1の音響特性は次のように説明されています。
そのトーンはBigでFat、いやPhatです(素晴らしいの意)。
引用:Phat Cat™ SEYMOUR DUNCAN
なるほどなるほど、こいつぁBigでFatな素晴らしいサウンドなんだな!
…………
いやいや、毎度毎度意味わかんねーよ!
過去の記事でも何回か言及していますが、ダンカン公式サイドの説明は稀に抽象的です。特に後発モデルはノリやバイブスで書いた風の説明が多く、分かりにくいと感じます。
おそらくP-90を求めるユーザーが欲しい情報は、アタックやバイト感に関する情報です。更に言うのであれば標準的P-90と比較して、どの程度音色に違いがあるかだと思います。
極論になれば、
アタックとかバイト感とかよく分からんけど、とにかくP-90と同じ音が出ればOK💖
と考える人もいるハズです。
そこで本記事ではSPH90-1の音質を解析し、周波数的な特徴を詳しく調べました。要所でソープバータイプのSP90-1とも比較しつつ『P-90らしさ』をみていきましょう。
参考記事
» 【伝統再現】Seymour Duncan SP90-1 Vintage P-90ってどんな音?【ダンカンギターピックアップ解析】
1946年製P-90を再現したSP90-1のレビューはコチラ!
公表データの確認:Seymour Duncan SPH90-1 Phat Cat
ブランド:Seymour Duncan ( セイモア・ダンカン )
モデル:Phat Cat (Humbucker Sized P90 Pickups)
型番:SPH90-1b (Bridge) / SPH90-1n (Neck)
マグネット:アルニコ2 (Alnico 2)
直流抵抗値:8.94kΩ (b)/ 7.98kΩ (n)
アウトプットタイプ:Vintage
出 力:5.3 (b) / 5.0 (n)
トーンチャート:低音域 6 / 中音域 5 / 高音域 7
レゾナントピーク:6.05KHz (b) / 6.30KHz (n)
ワイヤー:網シールドワイヤー (1c Braided Shield)
弦間:0.386インチ (≒9.8mm)
支持間隔:3.063インチ (≒77.8mm)
カバーサイズ:2.745×1.495インチ (≒69.7×38.0mm)
厚み:0.776インチ (≒19.7mm、取付け部足裏からカバートップまで)
Seymour Duncan SPH90-1 Phat Catの倍音特性
まずはアンプをクリーンにセットした状態で、SPH90-1のD3倍音を解析していきます。
SPH90-1b (Bridge) の倍音特性
波形を見て真っ先に目につくのが、基音の根本から低音側に広がる非整数倍音です。P-90型はよく『唸り』があると言われますが、その特徴を良く表していると感じます。
基音よりも低い成分の中に、音程を感じさせないふわっとした空気感があるのです。
低音のラフさを象徴する成分でもあり、P-90らしい雰囲気作りに一役買っていますね。ただし部分的に抉れた波形になっているため、金属カバーの有無で差がある模様です。
アタックに関しては基音から第4倍音までが同等の出力で、ミョンと跳ねる質感となります。この点はP-90特有のソフトなアタックに近く、アルニコ2マグネットの影響も大きそうです。
バイト感は一般的(とりわけ歪ませた際)に、ミッドからミッドハイの噛みつくような感覚の有無を指します。周波数的にもミッドからミッドハイにかけ、部分的に高出力が計測されやすい傾向です。
SPH90-1bの倍音は波形の通り、基音よりも中音寄りとなる第4~第8倍音が目立ちます。歪ませると更に強調されるので、バイト感を演出しやすい倍音傾向だと言えそうです。
高音より中高音が真っ先に切り込んでくる感触はP-90にとても近い!
SPH90-1n (Neck) の倍音特性
SPH90-1nもSPH90-1bと同様に、基音の根本から低音側へ非整数倍音が計測されています。異なる点としては倍音間にも非整数倍音が目立ち、荒っぽさがブリッジ以上ですね。
基音と第2倍音間には小さな山が出来ているため、音の粒が若干硬質に感じられます。それでも第2倍音の主張が強く、ホットさと粗さが同居するヴィンテージな味付けです。
全体的に基音より強い倍音が少ない上に、第3倍音以降はほぼ均等な出力となります。ブリッジよりもアタックはソフトな傾向となり、コンプレッションも少し強めです。
ネックポジションは音の丸みが強く、通常はそれほどバイト感を全面に主張出来ません。とは言えSPH90-1nは標準的ピックアップよりも、800~3kHz付近の倍音が強く出ています。
歪みのセッティング次第によっては、ミッドの食い付き具合をある程度再現可能です。
倍音特性波形の周波数目安
灰色の線が基音(D3)の146.832Hz 偶数次倍音:第2倍音(293.664Hz)、第4倍音(587.328Hz)…… →ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も 奇数次倍音:第3倍音(440.496Hz)、第5倍音(734.16Hz)…… →金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き 非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
クリーンの音をSeymour Duncan SPH90-1bとSPH90-1nで比較!
続いて同じくクリーン設定のまま、SPH90-1nとSPH90-1bの周波数特性を比較します。
SPH90-1b (Bridge) のクリーン波形
ソフトなアタック感の特性が色濃いクリーンで、高音が一瞬引っ込むような響き方です。ピュアシングルコイルの壮麗な音は出せませんが、古き良き甘枯れたトーンを奏でます。
金属カバーの影響で高音は絞られており、中音域に集中しやすい傾向です。
波形は1.2kHz付近に最も集中し、700~3kHzは低音や高音以上の存在感を発揮します。低音はピュアシングル程硬質ではなく、モヤが漂うような独特の粘りのある空気感ですね。
表現が難しいのですが芯の強さ以上に、滑らかで流動性を感じる音の輪郭が引き立ちます。暖かな雰囲気はヴィンテージ感満載で、コードではミッドの倍音感が実に芳醇です。
SPH90-1n (Neck) のクリーン波形
ブリッジよりも低音寄りの波形となり、低音側は300Hz付近に集中しています。150~500Hzはピュアシングルコイル以上の特性で、ネック用P-90らしい太さが全開です。
一方高音に目を向けると、P-90よりも一歩伸びが足りないかもしれません。低~中音はP-90らしいのですが、中高音~高音はやや詰まるような印象を抱きます。
参考:SP90-1nのクリーン波形
やはり金属カバーの影響が大きいのか、中高音以降はSP90-1n以下の値となりました。SPH90-1nは100~1kHzの再現性は素晴らしいものの、1kHz~3kHzにかけ谷間を形成です。
そのため音の聞こえ方が変化しており、低~中音側のピークがより強調されています。高音は全域でSPH90-1nの方が控えめですが、3k~4kHz付近は両モデルの値がほぼ同等です。
P-90的な高音が残っているため、高音が気持ち伸びないのに抜けは悪く無いという不思議な感覚があります。随所にP-90らしさは感じられるものの、ブリッジ用よりもオリジナリティが強い音です。
勿論これはこれで良いヴィンテージ感があるので、あとは好みの問題となるでしょう。
正直な所『P-90と比較しない観点』で聞けば良い音!
P-90と比べると、どうしてもテレキャスネック感があるかもね
オーバードライブの音をSeymour Duncan SPH90-1bとSPH90-1nで比較!
最後にアンプを深く歪ませた設定で、SPH90-1bとSPH90-1nの周波数特性を比較します。
SPH90-1b (Bridge) のオーバードライブ波形
倍音特性の所見通り、中音~中高音にかけて鼓膜に食らい付くようなバイト感です。3、4弦の食い付きっぷりはゾクっとくるレベルで、無限に噛まれたい衝動に駆られます。
周波数は400Hzを中心に、600Hz、800Hz、2.4kHzと小さく尖った山が連続する波形です。
シングルながらもPAFに近いバイト感があり、SH-1bの歪み方とかなり似ていますね。バッキングで食い付かせるのも楽しく、リードのサスティーンも伸びやかで心地良いです。
クリーンの時よりも高音が稼げるため、繊細なタッチも表現しやすくなりました。
SPH90-1n (Neck) のオーバードライブ波形
ブリッジがSH-1bに近い音であるのと同様に、ネックもSH-1nに近い歪み方をします。波形はほぼ同じ形状となっていて、僅かにSPH90-1nの方が中高~高音が強めです。
ピークの位置も一致しているため、設定によっては同じ音が作れるかもしれません。しかしあまりにもSH-1n感が強すぎる節があるので、P-90らしさが薄まっています。
参考:SP90-1nのオーバードライブ波形
SP90-1nの歪みはネック側でも中~中高音が強く、アタックもパーカッシブです。設定によってはバイト感が出せるのですが、SPH90-1nは中高音が伸びにくく感じます。
SPH90-1nは1.2kHz以降下降線となり、SP90-1nよりも2k~3kHzが大きく削がれた波形です。バイト感を出せない訳ではないものの、ブリッジと同じ設定では甘噛み程度に留まります。
両ポジションでバイト感を出したい場合は、個別のセッティングが必要となりそうです。
P-90の音かと言われると、やっぱりミッドハイの元気さが足りないかな?
だけどハムバッカー並の太いドライブで押せる力感は最&高!
クリーン&オーバードライブ各波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
Seymour Duncan SPH90-1 Phat Cat ハムサイズP-90 音質解析&レビュー まとめ
SPH90-1はハムバッカーサイズでありながら、P-90のニュアンスが随所に感じられます。ブリッジは低~中音の再現度が素晴らしく、ソフトなアタックと気骨溢れる音色が絶妙です。中高音の設定次第では、P-90と遜色の無いバイト感の歪みも作成可能となっています。
ネックはブリッジとは毛色が異なり、独自要素を加えた『P-90的な仕上がり』です。コンプ感のあるアタックと余韻がP-90的で、トーンはハムバッカー寄りとなります。完全一致するサウンドではないものの、P-90とは異なったアプローチが可能です。
セットでの使用だけでなく、勿論各ポジション単独搭載もおススメ出来ます。ネックハム型テレキャスへのSPH90-1n単独搭載は、明るさが加わりバランス感良好です。ミョンと跳ねるユニークなアタックは他で得難く、ミッドの豊かな倍音が愛機を加速させます!
🏃💨 Seymour Duncan SPH90-1 Phat Cat をハムバッカーと交換してみる👍
SPH90-1b Phat Cat (Bridge)
SPH90-1n Phat Cat (Neck)
SPH90-1s Phat Cat Set
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