Wilkinson WVP-SB!トレモロブリッジの亜鉛ブロックとスチールブロックの音質の違いを周波数特性で検証!
👆 Wilkinson WVP-SB 10,8mm 2点 レモロブリッジ ユニット スチールブロック ブラック
嗚呼……トレモロを スチールブロック に交換したい!
トレモロブリッジの構成部品の中で、最も音に直結するのがトレモロブロックです。ブロックの厚さを第一に、材質や形状により様々な音の変化が生まれます。とりわけエントリー機では貧弱なブロックが多く、ギターいじり魂を煽るハズです。安ギターを改造する際に、真っ先にトレモロブロックを交換する方も多い事でしょう。
「なんとまあ、貧相な👆ブロックなのか……」
「やはりブロックは可能な限り厚く、そしてズッシリ重く!」
「欲を言えば材質は、スチールかブラスが断然良い!」
ギターいじり界隈では、誰もが口を揃えて亜鉛以外の極厚ブロックを求めています。厚さや重さに関しては、音に与える変化が大きいのは直観的にも分かる要素です。詳しい説明が無くとも、厚い方が良いという認識は揺るがないと思います。
スチールブロック って本当に効果があるの?
しかしブロックの材質について、本当に亜鉛は音質的に劣る素材なのでしょうか。ネットを調べてみると『亜鉛より鉄の方が良い』以上の説明が見当たら無いのです。
“音が伸びる、低音が出る、音像がハッキリする、見た目の高級感……。”
こういった抽象的な表現よりも、視覚的にハッキリ違いが分かるデータが必要と感じます。そこで今回はブロック材の異なる2つのブリッジを使い、個々の周波数特性を解析です。亜鉛とスチールのブロックでは、どの程度周波数に違いが出るのかを検証していきます。
スチールブロック の周波数特性検証環境
今回検証に使用したギターは、Aria Pro IIの714-AE200です。
以前詳しくレビューしたモデルですが、Wilkinson製ブリッジWOV06が搭載されています。2点支持タイプのトレモロブリッジで、フルサイズの亜鉛ブロックを採用です。
型番無しの保守パーツとして、 『10.8mmフルブロックST』の名称でも流通しています。
WOV06を基準に、ブリッジを上位のWVP-SBに交換して周波数特性の違いを計測です。
WVP-SBは外観が少し異なりますが、ブロックサイズがほぼWOV06と同等となっています。ただしブロックの材質はスチールとなっているため、比較検証用に最適と判断です。本ブリッジもレビュー済みにつき、詳細につきましてはコチラの記事をご確認ください。
検証環境はブリッジの違い以外、全て共通した機材とセッティングを保ちます。ギターアンプは使用せず、DIを通しインターフェースへ接続して録音しました。ピックアップは714-AE200の標準である、センターのOS-5(Alnico-5)のみを使用です。
他の機材は全て普及品を用い、可能な限りブロック以外音に影響しないよう配慮しています。
計測に使用した機材一覧
ギター:Aria Pro II / 714-AE200 Lv 亜鉛ブロックブリッジ:Wilkinson WOV06 ≒(10.8mmフルブロックST) スチールブロックブリッジ:Wilkinson WVP-SB シールド:ARIA / JG-10X (10ft/3m, S/S)×1 マイクケーブル:Amazon / CLMIC1-M-F-10FT-5P×1 DI:CLASSIC PRO / CDI-2P (INST) インターフェース:YAMAHA / AG03
表の周波数の目安
(左から順に) 赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 黄線:2000Hz,3000Hz,6000Hz ※使用ギター、使用ケーブル、DI、インターフェースの設定は全て固定
亜鉛ブロック(WVP-SB)の周波数特性
Wilkinson WOV06はエントリー機搭載モデルとはいえ、設計自体はとても優秀です。
ブロックは厚さ13mmと十分で、ブリッジ全体の重量も300gを超えています。ブリッジ自体に目立った欠点も無く、標準以上の性能を有する事は間違いありません。
音の傾向も素直にピックアップの特性が反映され、クセの無い波形を計測です。サスティーンも体感的には程よく伸び、扱いやすいブリッジであると言えるでしょう。厚く重量があっても、余計な味付けをしないのが亜鉛ブロックの特徴となっています。亜鉛ブロックは、決して音を劣化させる素材という訳では無いのです。
スチールブロック(WVP-SB)の周波数特性
続いてWVP-SBに交換してみると、まず体感的に音量が大きくなったような気がしました。
数値でも亜鉛と比較して、およそ+1dbほど出力が向上している模様です。音色の面では明らかに低音域の音像がクッキリし、高音域もやや鋭く感じられます。
波形を比べてみると、スチールは200Hz以下の周波数特性が大幅に向上しているのです。とくに100Hz付近は顕著で、サスティーンの低音成分が際立っているのが分かります。スチールはサスティーンが伸びやすいという評判は、この辺りが要因であると推測です。
高音域では3,000Hz以上が強調され、耳では聞き取れない超高音域も増幅されています。一方中音域に関しては、亜鉛よりもやや弱めの傾向である事が分かりました。人によってはスチールの音を、温かみが無く機械的と表現するのも頷けるデータですね。
スチールブロック は低音域に絶大なアドバンテージ!
このように比較してみると、必ずしもスチールブロックは万能ではありません。トレモロブロックのサイズが同程度ならば、中音域は亜鉛に軍配が上がります。ただしその他の音域に関しては、スチールブロックの方が高い数値を記録です。
低音域の増幅は凄まじく、ピックアップの性能を超えた重低音を生み出せます。音像もクッキリ際立つため、聴覚的に『良い音』と感じる方が多いかもしれません。出力の大きなアンプを使う場合は、確実に低音のアドバンテージを実感出来るハズです。
小型の家庭用アンプでも、なんとなく低い音が強くなった印象を与えると思います。アンプの出力やスピーカーの口径が大きいほど、スチールブロックの恩恵が倍増です。唸るような重低音を求めるならば、スチールブロックへの交換を検討しましょう!