純チタンイモネジ をギターブリッジに使うとどうなるの?[トレモロ&TL]
👆 純チタンイモネジ M3×8(mm) くぼみ先
目次
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純チタンイモネジ ってどんな音?
楽器用のグレードアップパーツとして、チタンは人気の高い素材の一つです。一般的に楽器用部品のチタンといえば、純チタンではなくチタン合金の事を指します。
KTSやESP、GOTOHなどでは、ギター用やベース用のチタンパーツをラインナップです。FU-ToneやCreatifinity Partsからは、FRT関連のチタンパーツが多数発表されています。ここで気になるのは、グレードアップパーツとしては純チタンが使用されない点です。
純チタンはTitanium Grade 5と比較すると、引張強さや硬度が高いとは言えません。鉄やブラスと比較した場合、その2つの代表値はブラス以上鉄以下の値となっています。耐久性はチタン合金ほど高くなく、鉄との電食なども考慮して使われないのでしょう。
代表的な素材の硬度はこちらの記事へ
ST&TLで 純チタンイモネジ を試そう!
とは言え純チタンの『純』という言葉の響きに、どこか惹かれるのがギタリスト心です。ピュアという単語は音楽業界において、度々最上級の賛辞として用いられます。ピュアなサウンド、ピュアなトーン、ピュアな歪み方、ピュアな信号……。
ならばチタン合金よりピュア度の高い純チタンは、
どピュアな音が出そうな予感です。
気になって眠れなくなってしまったので、ネジ屋に赴き純チタンネジを探してきました。今回はストラト&テレキャスタイプに、チタン2種(TW340)のイモネジを使用します。この2種は2種類という意味ではなく、JISの分類で2種に該当するという意味合いです。
純チタン製イモネジは製造数が少ないからか、取り寄せになる上に割高となっています。相場では1本250~350円程度となっており、楽器用ネジとしては高額になる部類です。チタン合金製イモネジより高い場合も多いため、
興味本位で買わない方が良いでしょう。
使用した 純チタンイモネジ
種別:純チタン (チタン2種 / TW340)
引張強さ:387/mm2
硬さ:144HV
先端:くぼみ先
いつもの注意
本記事内において、使用に伴う電食の発生については度外視しています。異なる金属同士は電位差により、チタンはステンレスや鉄が腐食しやすくなる傾向です。詳しい説明は行いませんので、電食防止、異種金属接触腐食等の単語でご検索願います。
ただし電子弦楽器は構造として、弦に対してフレットやブリッジ、ペグが異種金属です。楽器メーカーの手掛けるパーツ類も、異種金属の集合体である事が多いと感じます。個人的に、電子楽器は異種金属の集合体と割り切った方が楽しいという考えです。(この考えは一般的に推奨出来ず、また推奨するものでもありません)
STタイプ + 純チタンイモネジ
まずはストラトタイプを使い、トレモロブリッジに純チタンイモネジを取付けてみます。使用したのはSQUIER Bullet Stratocasterで、ザグリにノイズ対策を施した個体です。その他各パーツも変更済みにつき、現在の構成を下記に列挙いたしました。
使用したSTタイプ
ギター:SQUIER / Bullet Stratocaster Tropical Turquoise ペグ:GOTOH / SG381 STANDARD (SG381-07-L6) ナット:FENDER / YJM Brass Nut 使用ピックアップ:DIMARZIO / DP184 WHITE THE CHOPPER (リア) ブリッジ:FENDER / Standard Strat Big Block Chrome Tremolo Bridge Assembly 弦:ERNIE BALL / Super Slinky #2223 ザグリ:銅箔によるシールド処理
1.倍音特性 (A2/110.00Hz)
弦を交換したばかりだったため、音が少しだけ金属的にキンキンと響きます。弦交換直後の冷淡な音が表面化しており、奇数次倍音が幾分強くなりました。それでも偶数次倍音と奇数次倍音のバランスが良好で、倍音量自体も芳醇です。
イモネジを純チタンに交換すると、倍音間の非整数倍音が一気に減少しました。音も暖かな響きとなり、奇数次倍音よりも偶数次倍音が強めに変化しています。倍音量は微減していますが、雑味が少なく歪みやエフェクトのノリが良好です。
倍音特性波形の周波数目安
左から2つ目の山(中央灰色線)が基音110Hz 偶数次倍音:第2倍音(220Hz)、第4倍音(440Hz)、第6倍音(660Hz)…… →ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も 奇数次倍音:第3倍音(330Hz)、第5倍音(550Hz)、第7倍音(770Hz)…… →金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き 非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
2.周波数特性
帯域ムラの少ない部品選出をしているため、万遍なく平均以上の特性を計測しています。突出した帯域が無い反面、オールラウンドに使える万能タイプのトーン傾向です。無個性とも考えられますが、フラットなギターサウンドの基準として重宝しています。
純チタンイモネジに交換した後は、ほぼ全帯域が微増する傾向です。特に300~800Hz付近は帯域ムラがより少なくなり、音の芯が明確となりました。強烈な変化はないものの、非整数倍音の減少を考慮すると音作りがしやすいと思います。
3.サスティーン
サスティーンはシンプルに、開放弦Eコードを1ストローク鳴らして計測です。初期の鉄製ネジの音伸びを基準となる0とし、交換後に±何%伸びたかを掲載しています。計測したデータを元に、平均%、最小%、最大%の3通りのデータを算出しました。
平均%:+1.0%
最小%:-0.1%
最大%:+3.4%
交換後のサスティーンは微増傾向となっており、伸びる時は結構伸びる印象です。誤差の範囲内ですが、最小サスティーンに関しては極稀に鉄製よりも劣る事があります。音は伸びやすいですが安定感は高くなく、使用者により評価が割れるかもしれません。
TLタイプ + 純チタンイモネジ
続いてTLタイプのギターとして、GROTEのシンラインタイプをチョイスです。フレットやナットに手を加えていますが、ノブ以外はデフォルトのままとなっています。円筒状の軽量小型サドルを採用しており、初期イモネジはBulletと同じくスチールです。
使用したTLタイプ
ギター:Grote / シンラインタイプ GT-150 Super Series 2019 弦:Grote 付属品(銘柄不明) ザグリ:ノイズ対策無し
a.倍音特性 (A2/110.00Hz)
倍音量がとても多く、同時に非整数倍音も目立つ賑やかな傾向となっています。それでも全体的に偶数次倍音寄りとなっており、賑やかでも暖かみのある響きです。セミホロウ特有のエアー感を主張する、枝毛状の波形がほぼ全域で確認出来ました。
純チタンネジ交換後は非整数倍音が減少し、ソリッド的な響きに変化しています。控えめだった奇数次倍音は微増傾向となり、倍音のバランスが中立的に変化です。セミホロウ感が損なわれる方向に作用しているため、好みが分かれるかもしれません。
頭の悪い考察1
STとTLでの計測結果から、純チタンイモネジの倍音傾向は中立的であると考えられます。非整数倍音を減少させつつ、コンプレッサー的に弱い倍音が底上げされる印象です。
b.周波数特性
全体的に細かい山と谷が連続した波形となっており、音は400~1kHzに集中しています。1kHz以降の帯域は標準よりもかなり伸びが良く、ジャキジャキにトレブリーですね。低音と重低音は期待出来ず、中高音域~高音域にかけて真価を発揮します。
純チタンイモネジに交換すると、200Hz以降の帯域が全て増幅傾向です。得意とする1kHz以降に関しては、Trebleを1メモリ上げたような音に変化します。しかし150~200Hzと局所的ですが、交換前よりも若干弱くなった帯域も確認しました。
頭の悪い考察2
純チタンイモネジは、周波数特性が全体的に微増する傾向だと考えられそうです。TL型で低音域が減衰した理由として、サドル全体の重量が軽すぎるのかもしれません。仕様書を参考にすると、純チタンイモネジは鉄製よりも重量が6割程減少します。
ただでさえ軽い小筒サドルに使う事で、低音域の振動効率が損なわれているのでしょう。(チタン合金のように硬度が高くないため、足腰が安定しない感じ?)元のサドルが軽量で低音域が弱い場合、より低音が弱くなる可能性が否めないですね。
波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
c.サスティーン
TLタイプのサスティーンはSTタイプとは異なり、体感的にも音伸びが悪く感じました。低音域が弱くなった点が大きいのか、高音域だけが伸びている印象すらあります。
平均%:-4.0%
最小%:-0.7%
最大%:-6.2%
他の機種でも試した結果、純チタンはサドル重量の影響が非常に強い模様です。あらゆる構成に対して音伸びが期待出来る訳ではないため、扱いにくく思います。
純チタンイモネジ 音質変化 まとめ
・純チタンイモネジは普及率が低く高額になりやすい
・引っ張り強さや硬度はスチールとブラスの中間程度
・倍音特性は非整数倍音が減少し中立的バランスに変化する傾向
・周波数特性は一定のサドル重量以上であれば微増する傾向
・サドル重量が軽い場合は低音域とサスティーンが低下しやすい傾向
・サスティーンは他の部品構成に左右されやすく安定感に欠ける
・構成によって特性の変化が異なる(マイナスに働く等)ため使いにくさが否めない
・あくまで結果に基づく雑な考察なので自分でも色々調べてみてね💖
🏃💨 純チタンは諦めてチタン合金でどピュアを目指す💪🌎
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