ハムバッカーをP-90化したい!無加工で交換できるハムサイズP90を試してみた【Roswell Pickups】
【PR】本記事は株式会社サウンドハウス様より、製品の提供を受けて作成いたしました。
P-90特有のアタックの強さや荒々しさに惹かれるものの、ギター本体を加工するのはハードルが高いと感じる人は多いのではないでしょうか。ピックアップ交換自体はギターカスタムの定番ですが、ザグリを拡張するなどの加工を伴うとギターを元の状態に戻せなくなる点が心理的ハードルになります。

そういったジレンマに応えてくれるのが、ハムバッカーサイズでP-90サウンドを狙ったRoswell PickupsのHumbucker size Open Covered P90です。本記事ではサウンドハウス提供のRoswell Pickups Humbucker size Open Covered P90を、SSHストラトタイプとHHオフセットの2本に実際に取り付けて試してみました。

購入前に知っておきたいポイントを押さえつつ、各ギターの外観や音質がどのように変化するのかをチェックしていきましょう。
☆お断り
本記事内では『P-90化』という表現を、ハムバッカーサイズのP-90タイプピックアップへの換装を指す総称として使用しました。厳密な意味でGibson P-90への換装ではありませんので、予めご了承ください。
目次
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Roswell PickupsでハムバッカーをP-90化してみよう!
今回はRoswell Pickups (ロズウェル・ピックアップス) のHumbucker size Open Covered P90を使い、手軽にP-90サウンドを楽しむ方法をご紹介です。Humbucker size Open Covered P90は、標準的なハムバッカーサイズでP-90サウンドが得られるように設計されています。

完全なカバードタイプではなく金属製セミオープンカバーを採用しており、Gibson P-94に近いルックスを備えているのが印象的です。アルニコ5マグネットを搭載し、ザグリやピックガードの加工を伴うことなくハムバッカーのP-90化を可能としています。
Humbucker size Open Covered P90の仕様やサウンドの詳細については、前回のレビューをご参照ください。
レビューをチェック!
» Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90 レビュー|ハムサイズP-90の音質を検証
ハムバッカーのP-90化を試す前に調べておきたいポイント
Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90を導入するにあたり、事前に知っておきたいポイントをまとめました。
ザグリやピックガードのハムバッカー搭載スペースを調べる!
最初に確認したいのは、交換予定ギターのザグリおよびピックガードの搭載スペースがHumbucker size Open Covered P90を搭載できるサイズかどうかです。一見すると同じハムバッカーサイズのモデルでも、メーカーやブランドによって寸法設計に微妙な差があります。
とりわけエントリーモデルに採用されているハムバッカーは、標準的なハムバッカーサイズよりも一回り小さく設計されていることが少なくありません。まずは商品ページで公開されている寸法表を参考に、ザグリやピックガードがピックアップ本体サイズに十分納まるサイズであることを調べておきましょう。
ピックアップの支持間隔や取付け部のベースプレート幅 (足の端から足の端までの長さ) 、ザグリの深さなども要確認です。ストラトタイプはザグリが浅いモデルもあるため、付属のスクリューではザグリの底面に干渉してうまく取り付けられない場合があります。
ザグリが浅いモデルにはFenderから発売されているHumbucking Pickup Mounting Screwsなど、ストラトキャスタータイプのハムバッカーマウントに対応したUNC#3-48 (インチ規格) のショートスクリューなどをご活用ください。
ブリッジ用ピックアップの弦ピッチを調べる!
Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90はブリッジ用もネック用も共に、ポールピースのピッチが10.0mmです。ネック用のポールピースピッチが10.0mmで問題になることは少ないですが、ブリッジ用で10.0mmはブリッジサドルの弦間が約10.5mm前後のギターモデル向けとなります。

ブリッジサドルの弦間が約10.8mmのFRTタイプや2点支持トレモロブリッジ、11.2~11.3mmのヴィンテージ系トレモロブリッジへの使用には適しておりません。目安としてはブリッジピックアップの真上で1弦から6弦までの距離を計測して、最大でも51mm程度に収まっていることを調べておきましょう。
例外もあり

Fender Player Stratocaster Floyd Rose HSSのように、意図的にピッチ9.8mm程度のハムバッカーをブリッジPUに採用しているエレキギターもあるよ!
コイルスプリットやコイルタップは対応不可!
コイルスプリットやコイルタップに対応したピックアップと交換する場合、Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90はこれらの配線アレンジに対応するのが難しいです。基本的にシングルコイルと同様の配線方式となるため、交換予定のギターにコイルスプリットやコイルタップ用のスイッチが搭載されている場合は使用不可となります。
YAMAHA REVSTARシリーズのドライスイッチやフォーカススイッチのように、純正ピックアップを前提として特定の周波数帯を調整する機能も適切に機能しなくなる可能性が高いです。Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90で複雑な配線アレンジを楽しみたい方は、ピックアップセレクターにスーパースイッチなどを併用願います。
ハーフトーン使用時は極性と位相を要確認!
Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90はシングルコイル構造のピックアップとなるため、他のシングルコイルと合わせて使用する際は磁極と位相の確認を推奨です。特にハーフトーンでハムキャンセルを成立させる場合は、Humbucker size Open Covered P90と組み合わせるピックアップが RW/RP(逆巻き・逆磁極)かつ同相の関係になっている必要があります。
ピックアップの磁極、巻き方向、位相はメーカーやブランドごとに設計が異なり、共通の規格ではありません。そのため異なるメーカーやブランドのピックアップを組み合わせる場合は、これらの関係を事前に把握しておくことが重要です。

組み合わせるピックアップとの極性関係によっては、ネック用モデルをブリッジ側に使用した方が適切な場合もあります。ネック用モデルはブリッジ用モデルと比較して抵抗値や出力が抑えられる傾向にあるので、全体の出力バランスも考慮しながら選択してください。


磁極の確認は方位磁石 (コンパス) を使うと便利だよ!
【参考】サウンドハウスで位相の調べ方を学ぶ
ピックアップ交換の必需品あれこれ
ピックアップ交換の必需品
・ギターを安全に置ける十分な広さの作業台 or デスク
→ギター全体を無理なく置ける平坦な作業スペースがあれば可
・アナログテスター(抵抗値や位相の確認)
・ノギス(各部寸法の確認)
・直尺(ピッチやザグリの深さの確認)
・方位磁石(磁極の確認)
・はんだごて
・はんだごてスタンド
・はんだ
・はんだ吸取線 or 吸取器
・ドライバー各種
・ニッパー
・早く音出しをしたい気持ちを抑える自制心
あると便利なもの
・作業用マット
・作業用トレー
・ネックレスト
→Fenderから便利なThe Arch Workstation発売中
・ミニ万力 or 基板ホルダー
・ヒートクリップ
・ワイヤーストリッパー
・ラジオペンチ
・デジタルマルチテスター
・クリップ付きテストリード
・熱収縮チューブ
・結束バンド
・千枚通し(配線材がブレイデッド・ワイヤーの場合)
・配線図(Roswell Pickupsでは説明書として同梱)
サウンドハウスではんだ付け関連アイテムを調べる!

次の項からはSSHストラトタイプとHHオフセットギターを使い、実際にピックアップをP-90化していくよ!

下記ボタンをクリック(またはタップ)すると該当項目へジャンプできますので、目的に合わせてお好きな方をご覧ください!
SSHストラトタイプをP-90化!【使用ギター:PLAYTECH ST250SSH Maple】
本項ではSSHストラトタイプを使い、ブリッジポジションのハムバッカーをP-90化していきましょう。用意したエレキギターはPLAYTECH ST250SSH Mapleで、ギタいじの黎明期からエレキギター用ピックアップレビューを支えてきた相棒です。

P-90化にあたりピックアップとブリッジ、ポット、ピックアップセレクタースイッチは、新品購入時にセットされていたデフォルトパーツに戻しています。

交換済みの部品はギターペグがPLAYTECH GPT121×2セット、ペグボタンがGOTOH P2、アウトプットジャックがPure Tone Jack PTT1、アウトプット用ワイヤーがMONTREUX Vintage braided wireです。

(通称:弁当箱ザグリ)
ザグリ内部はノイズ対策としてSONIC SP-01を2度塗りしていますが、こちらは元に戻せないのでそのままとしています。
ピックアップの選択
PLAYTECH ST250SSH Mapleに使用されている純正シングルコイルはミドル用とネック用がRW/RP(逆巻き・逆磁極)の関係で、各ピックアップを単体でアナログテスターに接続してタップするとマイナス方向に振れるピックアップです。

ミドル用ポールピース頂部の磁極はN極となっているため、ブリッジとミドルのハーフトーンでノイズキャンセルを成立させるためにポールピース頂部の磁極がS極のネック用 (LGA90-N) を選択しました。


配線時の注意点として、Humbucker size Open Covered P90は単体でアナログテスターに接続してタップするとプラス方向に振れます。よって通常は信号線としてホット側へ接続する白線をコールド(アース)側へ、赤線をホット側へ反転させて配線しましょう。


PLAYTECH ST250SSH純正シングルコイルがいずれも直流抵抗値5kΩ前後でLGA90-Nより出力が低い点も決め手となりました!
補足
エレキギターに予め組み込まれているピックアップの磁極や巻き方向は、年式や生産ロットによって異なる場合があります。PLAYTECH ST250SSHをお持ちの方は本記事の情報で互換性を判断せず、必ず手持ちの実機で極性と巻き方向をご確認ください。
上質感あふれるシックなスタイルへ!
PLAYTECH ST250SSH MapleにRoswell Pickups Humbucker size Open Covered P90を搭載すると、上質さを感じさせるシックな雰囲気に仕上がりました。クロームハードウェアとセミオープンカバーの相性が良く、エントリーモデルでありながらワンランク上の高級感が漂うデザインです。

ハムバッカーのP-90化により音質の変化だけでなく、ピックアップ周りのルックスも引き締まりドレスアップ効果が得られます。シンプルな構成のSSHストラトタイプにアクセントを加えたい場合、Humbucker size Open Covered P90はとても魅力的な選択肢ですね。

ルックスの変化に伴う高揚感がたまらないね!
PLAYTECH ST250SSH 純正ハムバッカーとの比較
PLAYTECH ST250SSH 純正ハムバッカーはセラミックマグネットらしくシャープなサウンドで、適度な出力の高さと平均的なトーンを備えています。ワイヤーは1芯シールド線なのでコイルスプリットには対応しておらず、ポールピースは12本すべて固定ポールピースが使用されている構造です。

交換後はP-90タイプならではの粒立ちが良いサウンドへ変化し、コードプレイでも各音の輪郭が明瞭で優れた分離感を奏でることができます。アルニコ5らしい引き締まった音像が味わえるだけでなく、ほぼ全ての帯域で雑味を感じさせないクリアなキャラクターが爽快です。

低音域から高音域までバランスよく伸びるワイドレンジなサウンドは、突き抜けるような心地良さを味わえます。流石にハムバッカーよりも出力や歪みやすさは劣りますが、歪ませてもエッジの効いたバイト感が前面に出てくるのはP-90特有の持ち味ですね。
アーミングの反応
アーミングの反応は通常のSSS配列のストラトタイプとも、ハムバッカー搭載SSH配列ストラトタイプとも異なります。通常のSSS配列のストラトタイプはブリッジピックアップがスラントマウントであるのに対し、Humbucker size Open Covered P90はミドル用やネック用と同じくポールピースがナットに対して平行の関係です。

SSS配列のブリッジピックアップは低音弦側がネック寄りに、高音弦側がブリッジ寄りに配置されているため、低音弦の力感と高音弦の繊細さが同居しています。一方Humbucker size Open Covered P90は低音弦も高音弦も均等に拾えるため、音の重心が中音域に集中しやすくなるイメージです。
PLAYTECH ST250SSH 倍音特性 (A2/110.00Hz)
ここからはRoswell Pickups Humbucker size Open Covered P90とPLAYTECH ST250SSHの純正ハムバッカーを実測データで比較し、サウンドの差異を整理していきます。比較計測したのは、ブリッジポジション単独の倍音特性と周波数特性です。

ギター弦はPLAYTECH EGS-0942 (.009-.042) 、ピックはPLAYTECH TEARDROP PICK EXTRA HEAVY Black (1.5mm) 、ハンダはOYAIDE SS-47/0.6mmを使用しています。DIはパッシブタイプのClassic Pro CDI-2P、ギターケーブルはClassic Pro GIC030N (3m) 、マイクケーブルはClassic Pro MIX015FN (4芯1.5m) です。

セットアップ面ではPLAYTECH ST250SSH本体にアームは装着せず、トレモロブリッジはトレモロスプリングを調整して完全なベタ付けの状態 (非フローティング) に設定しています。PLAYTECH ST250SSHの純正電装パーツは抵抗値250kΩのポットが3個、ポリエステルフィルムコンデンサ(100V / 0.047μF / ±5%)が2個です。

倍音は周波数が分かりやすいように、5弦開放弦 (A2/110.00Hz) のスペクトラムを採用しました。なお出力差のあるピックアップ同士の比較となるため、出力レベルの違いを揃えるためにノーマライズ処理を行っています。
a.PLAYTECH ST250SSH 純正ハムバッカー

b.Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90 (LGA90-Nをブリッジにマウント)

a→b波形連続表示 (gif)

Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90はPLAYTECH ST250SSH 純正ハムバッカーと比較して、平均的な基音の出力レベル (縦軸:dB) が高いです。倍音成分はより広い周波数帯域(横軸:Hz)にわたって観測されており、対照的に非整数倍音は全帯域で低めの値を示しています。
バイト感が強いピックアップに共通して見受けられる特徴として、1.5~3kHzにかけて出力の高い倍音と低い倍音が交互に出現する傾向も確認できました。粒立ちの良いアタックと煌びやかな倍音にP-90らしい荒々しさが加わり、鼓膜へ噛みつくようなバイト感が得られる倍音特性です。
倍音特性波形の周波数目安
左端側の太長い山(中央赤色線)が基音110Hz
偶数次倍音:第2倍音(220Hz)、第4倍音(440Hz)、第6倍音(660Hz)……
→ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も
奇数次倍音:第3倍音(330Hz)、第5倍音(550Hz)、第7倍音(770Hz)……
→金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き
非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
PLAYTECH ST250SSH 周波数特性

周波数特性はDI直で同一フレーズを繰り返し、ブリッジピックアップ単独の平均的なスペクトラムを算出しました。こちらも出力差のあるピックアップ同士の比較となるため、出力レベルの違いを揃えるためにノーマライズ処理を行っています。
1.PLAYTECH ST250SSH 純正ハムバッカー

2.Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90 (LGA90-Nをブリッジにマウント)

1→2波形連続表示 (gif)

Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90へ交換するとレンジが広がる体感通り、PLAYTECH ST250SSH 純正ハムバッカーの波形を拡大コピーしたような波形です。2k~10kHzにかけては大幅にスケールアップしており、200Hz以下の低音域~低中音域も底上げされています。
倍音特性では非整数倍音が非常に低い値を示している影響も大きく、低音域の力感がアップしても重たい空気のような雑味は感じられません。全帯域で音の輪郭を保ったまま密度が増すことで良好な音抜けを実現し、高音弦やハイフレットでは歯切れの良さと繊細なニュアンスが内包する鮮やかなサウンドです。
周波数特性波形の周波数目安(左から順に)
赤枠線:100Hz,200Hz
橙枠線:400Hz,800Hz
桃枠線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
計測に使用した機材1
ギター:PLAYTECH / ST250SSH Maple
比較用ピックアップ:PLAYTECH / PLAYTECH ST250SSH Maple 純正ブリッジハムバッカー (セラミック)
はんだ:OYAIDE / SS-47/0.6mm
ペグ:PLAYTECH / GPT121×2 (L3+R3配列を2セット使用してL6として使用)
ペグボタン:GOTOH / P2 (P2搭載ペグより取り外し)
アウトプットジャック:Pure Tone Jack / PTT1
アウトプットワイヤー:MONTREUX / Vintage braided wire
導電塗料:SONIC / SP-01 Water-Based Shielding Paint (2度塗り)
使用弦:PLAYTECH / EGS-0942 (.009-.042)
ピック:PLAYTECH / TEARDROP PICK EXTRA HEAVY Black (1.5mm)
ギターケーブル:Classic Pro / GIC030N (3m) プレミアムケーブル
マイクケーブル:Classic Pro / MIX015FN (4芯1.5m) プレミアムケーブル
パッシブDI:Classic Pro / CDI-2P
ギターストラップ:PLAYTECH / PJ23 Pink Jacquard Strap
計測時着用靴下:SH / サウンドハウスお姉さん靴下 スニーカー丈 黒
神アクリルスタンド:サウンドハウスお姉さんアクリルスタンド (非売品)
注釈1.非売品を除き全て自費で購入
PLAYTECH ST250SSH Mapleのレビューはコチラ!
» PLAYTECH ギターレビュー|ST250 激安ストラトタイプ解説!初心者必見コスパ最強!?【サウンドハウス】
オフセットギターをP-90化!【使用ギター:ARIA RETRO-1532J】
本項ではHHレイアウトのオフセットギターを使い、ブリッジポジションとネックポジションを共にP-90化していきます。用意したエレキギターはARIA RETRO-1532Jで、ギタいじの個性的ストラップレビューシリーズに登場する機会の多い一台です。

ビザールらしさのあるレトロなオフセットボディが独特の存在感を放ち、手頃な価格ながらジャキジャキとしたストレートなハイトーンを楽しめます。入手してからボディには一切手を加えておらず、ペグのみマグナムロックトラッド仕様のGOTOH SG381-MGT-07-L6-Chromeへ交換しました。

ピックアップはハムバッカーではなく、Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90と同じセミオープンカバーを搭載したハムバッカーサイズP-90タイプ (VLS-1×2) です。セラミックマグネットを搭載しており、交換後はマグネットの違いによる音の変化を明確に感じることができます。
ビザールなルックスそのままにアルニコ5を注入!
ARIA RETRO-1532Jはそのレトロなルックスがチャームポイントであるため、ハードウェアカラーを変更したくない方が多いのではないでしょうか。Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90はARIA RETRO-1532J純正ピックアップと見比べても、ルックス面に大きな差異はありません。

あえて違いを挙げるとすれば、Roswell Pickupsはカバーサイズが縦横ともに1mm前後大きいため交換後はタイトなおさまり具合です。メッキの質感やボビンの光沢感もRoswell Pickupsの方が高級感があり、ピックアップ周りを写真で撮ると品のある佇まいが映えます。

サウンドはピックアップ用マグネットに対するステレオタイプそのままで、セラミックマグネットとアルニコ5マグネットの違いが感じられました。ブリッジ側もネック側も暴れるような高音をマイルドに抑えつつ、低音域~中音域をブーストしたメリハリのあるトーンです。
ビブラートユニットの反応
ARIA RETRO-1532Jのビブラートユニットを使用すると、ピッチの揺らぎが滑らかに変化しています。交換前は高音の鋭さを保ちながらシャギーに揺らぐ感覚で、アームを元の位置へ戻す際に高音域や超高音域がギラつくような響きでした。

交換後はピッチが溶けるように滑らかに揺らぐため高音域が耳に刺さりにくく、アーミング後の戻りもナチュラルな雰囲気です。一方でビザール系ギターに見られるようなイレギュラーで荒々しい揺らぎは抑えられますが、その分現代的で扱いやすいサウンドにまとまっています。
ARIA RETRO-1532J 倍音特性 (A2/110.00Hz)
ここからはRoswell Pickups Humbucker size Open Covered P90とARIA RETRO-1532Jの純正VLS-1を実測データで比較し、サウンドの差異を調べていきましょう。比較計測したのは、各マウントポジション毎の倍音特性と周波数特性です。

ギター弦はAria Pro II AGS-803XL (.009-.042) 、ピックはPLAYTECH TRIANGLE PICK HEAVY Purple (1.2mm) 、ハンダはOYAIDE SS-47/0.6mmを使用しています。DIはパッシブタイプのClassic Pro CDI-2P、ギターケーブルはClassic Pro GIC030N (3m) 、マイクケーブルはClassic Pro MIX015FN (4芯1.5m) です。

セットアップ面ではARIA RETRO-1532J本体にアームは装着せず、ロックボタンでブリッジを固定した状態 (非フローティング) に調整しています。ARIA RETRO-1532Jの純正電装パーツは抵抗値500kΩのポットが2個、ポリエステルフィルムコンデンサ(100V / 0.022μF / ±5%)が1個です。
倍音は周波数が分かりやすいように、5弦開放弦 (A2/110.00Hz) のスペクトラムを採用しました。
c.ARIA VLS-1 ブリッジ

d.Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90 (LGA90-B)

c→d波形連続表示 (gif)

Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90はARIA VLS-1と比較して、基音と低次倍音の出力レベル (縦軸:dB) が高い値を示しています。倍音成分は限られた周波数帯域(横軸:Hz)に収束しており、同時に高次倍音の出力レベルも低い値を示す傾向です。
非整数倍音は全帯域で低い値を示し、鋭く暴れていた高音が落ち付いたことと相まって輪郭の整った音像へと変化しています。1.5~3kHzにかけて出力の高い倍音と低い倍音が交互に出現する傾向が確認できるため、P-90タイプ固有のバイト感も十分に堪能できる倍音特性です。
e.ARIA VLS-1 ネック

f.Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90 (LGA90-N)

e→f波形連続表示 (gif)

ARIA RETRO-1532Jはネックピックアップの配置が少し特殊で、6弦側がネック寄りに傾けられたスラントマウントを採用しています。この特殊なスラントマウントの影響が大きく、5弦開放弦の計測では基音と低次倍音の出力レベルがどちらも高い値を示しました。
ちなみに波形では表示しませんが4弦から6弦までの低音弦は基音と低次倍音が高い傾向となる反面、3弦から1弦までの高音弦は基音と低次倍音が抑え気味となる傾向を確認です。5弦開放弦は基音の出力レベルに牽引されるように、高次倍音も広い周波数帯域にわたって観測されています。
倍音特性波形の周波数目安
左端側の太長い山(中央赤色線)が基音110Hz
偶数次倍音:第2倍音(220Hz)、第4倍音(440Hz)、第6倍音(660Hz)……
→ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も
奇数次倍音:第3倍音(330Hz)、第5倍音(550Hz)、第7倍音(770Hz)……
→金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き
非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
ARIA RETRO-1532J 周波数特性

周波数特性はDI直で同一フレーズを繰り返し、各ピックアップポジション毎に平均的なスペクトラムを算出しました。
3.ARIA VLS-1 ブリッジ

4.Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90 (LGA90-B)

3→4波形連続表示 (gif)

ARIA VLS-1の波形は800Hz付近に明確なピークが集中していましたが、Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90の波形は400~800Hzにかけてなだらかに持ち上がるような分布です。400~800Hzが帯状 (波形全体としては台形状) に広がっているため中音域全体で支えるようなバランスへと変化し、サウンド全体に明確な厚みが加わっています。
2kHz以降は高次倍音の出力レベルが低い値を示す影響が大きく、ピーキー過ぎる高音域が抑えられたまとまりのある音色です。200Hz以下の低音域~低中音域も僅かに底上げされており、ARIA VLS-1よりも太さと安定感が得られる周波数特性だと言えます。
5.ARIA VLS-1 ネック

6.Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90 (LGA90-N)

5→6波形連続表示 (gif)

ARIA VLS-1はネック用としては800~3kHzにかけて高い値を計測しており、中高音域が伸びやすい周波数特性です。Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90は800~3kHzが抑えられていますが、800Hz以下の帯域と3kHz以降の帯域で高い値を示しています。
中高音域が削がれたというよりは中高音域がやや後退して空間が生まれ、中音域に重心が移動したことにより全体のバランスが整って聴こえるサウンドです。ピックアップマグネットがアルニコ5となった影響により、低音弦側はより丸く太く、高音弦側はより鋭く明るく変化するスラントマウントの特色が色濃く反映されています。
周波数特性波形の周波数目安(左から順に)
赤枠線:100Hz,200Hz
橙枠線:400Hz,800Hz
桃枠線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
計測に使用した機材2
ギター:ARIA / RETRO-1532J
比較用ピックアップ:ARIA / VLS-1×2 (セラミック)
はんだ:OYAIDE / SS-47/0.6mm
ペグ:GOTOH / SG381-MGT-07-L6-Chrome
使用弦:Aria Pro II / AGS-803XL (.009-.042)
ピック:PLAYTECH / TRIANGLE PICK HEAVY Purple (1.2mm)
ギターケーブル:Classic Pro / GIC030N (3m) プレミアムケーブル
マイクケーブル:Classic Pro / MIX015FN (4芯1.5m) プレミアムケーブル
パッシブDI:Classic Pro / CDI-2P
ギターストラップ:ARIA / SPS-2400PA パンダ柄ストラップ
計測時着用靴下:SH / サウンドハウスお姉さん靴下 スニーカー丈 白
神アクリルスタンド:サウンドハウスお姉さんアクリルスタンド (非売品)
注釈2.非売品を除き全て自費で購入
ARIA RETRO-1532Jのレビューはコチラ!
» ARIA RETRO-1532J レビュー:高音ジャキジャキ!安ギターで楽しむ高品質ビザールサウンド
評価が分かれそうなポイント
2種類のエレキギターを使い、Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90による外観や音質の変化を掘り下げてきました。評価が分かれそうなポイントとして、ハムバッカーから交換する場合は出力の変化が無視できない要素です。

Roswell Pickupsが公表している情報 (別記事参照) によると、Humbucker size Open Covered P90はブリッジ用の出力が180、ネック用が150で設計されています。ストラトキャスター向けのシングルコイルは出力が100前後、ソープバーP-90タイプが200前後、PAFタイプのヴィンテージ出力ハムバッカーが200~300前後の値です。

ハムバッカー搭載ギターを使いローゲインアンプとブースターを組み合わせてゲインを稼ぐ運用法では、P-90化に伴い出力が低下した分だけマイルドな歪み方へ変化します。アンプ側の飽和点にうまく到達できないケースがあるなど、思ったような粘りやコンプレッションを得られなくなる可能性も否めません。

また本記事では各ギターごとにアーミング時の変化にも触れてきましたが、こうした変化を好意的に受け取れるかは個人のプレイスタイルや演奏する楽曲によって大きく異なるものです。Humbucker size Open Covered P90はシングルコイルとハムバッカーの長所だけを備えた万能モデルというよりも、それぞれの特性をトレードオフした中間的な性質を持つ設計であることを頭に入れておきましょう。

2本のギターで検証した通り、使用するポットは250kΩでも500kΩでもどちらでも問題なく使えるよ!

同じくコンデンサの静電容量も0.022μFと0.047μFのどちらでもOK!


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» ギター用トーンコンデンサについてはこちらの記事をチェック!
まとめ
Roswell Pickups Humbucker size Open Covered P90は、エントリーモデルでもP-90のサウンドやニュアンスを気軽に試すことができます。クリーンでは分離感に優れたクリアな響きを、歪ませた際にはハムバッカーやピュアなシングルコイルでは得難いバイト感が心地よく唸るピックアップです。

セットではなく単独で導入する場合は極性と位相の確認が必須となりますが、大がかりなザグリやピックガードの加工を伴わずにハムバッカーのP-90化を可能としてくれます。ハムバッカーサウンドに飽きを感じている方や、使用頻度の少ないハムバッカー搭載ギターをお持ちの方などは、機会があればぜひP-90化に伴う高揚感を体験しておきたいピックアップです!
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