古楽器修理工房で昭和レトロな弱音器の謎を深掘りしてみた【長期在庫の主を狩ろう 第3神】
👆 長期在庫に見えて令和最新ロットな Grand Guitar (グランドギター社) 弱音器 をレビュー!
目次
いつメンの皆様、本日もギタいじへようこそ!ハジメマシテな君は『コチラ』も見てね!弱音器のレビューや性能面だけを知りたい人は『外観』の項から読もう!
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前回の長期在庫の主!
古楽器修理工房で昭和の長期在庫にしか見えない令和最新ロットの弱音器を購入
ここはみんな大好き
管理人も大好き
世界に誇る大都市 TOKYO
そしてここは東京駅より
タクシーで約30分のところにある
古楽器専門修理工房C
長い歴史を誇る老舗ではあるが
下請け専門につき知名度は皆無である
今日は灯台下暗し、東京の古い修理工房に来たよ
どうにもこの工房、昭和レトロチックなスメルが漂っているね……
神(客)見習いの嗅覚が疼くぜ!
初見の方に『長期在庫の主を狩ろう』簡単なシリーズ概要説明!
『長期在庫の主を狩ろう』は、ギタいじ管理人が神(客)を目指す実録お買い物シリーズ!
各所の知人の店にて、倉庫の主と化した長期在庫を管理人が『お布施』として発掘!販売店には『神の恩恵』として、極僅かなロス削減と収益アップが与えられます!もっと詳しい説明については初回の『第1神』を読もう!
ホームラーン阿部寛~♪
ムッ、1階から耳の遠い人が東京ドームで聞き間違えそうな応援歌のメロディーが聞こえるぞ
たのもーっ!!!
🦴「いらっしゃいませぇ!」
うおおおおッ!ビックリした!!
なんだチミか……
……えーっと、誰だっけ?
3年ぶり位だけど、ギターいじリストのおうちの管理人だよ!
洒落の分からんヤツだな、働くシニア世代ジョークさ
久しぶりなのに早速だが、この度は神が自主的にお布施を回収しに来てやったぞ!
そんなことより再会の記念にワシの入れ歯、はめてみるか?
だから意味不明なジョークやめろ!
管理人、神(客)化の経緯説明中――
いや長期在庫品を買いたいってチミさ、ワシら下請け専門の修理工房だぜ?
うん、知っているよ
だから店頭販売用の長期在庫が発生しにくい営業方針なのだが
マジかよ
弦とかクロスみたいな消耗品の在庫はあるが、大体半年で入れ替わるからなぁ
強いて挙げるとすれば、先月知人の楽器店が移転したときに引き取った小物類くらいだな
おおそれそれ、そういう古物仕入れ的なアイテムならウェルカムさ!
といっても……
🦴「グランドギター社の弱音器 (新品未開封) なんだけどね」
グランドギター社 弱音器 は業界屈指のロングセラー商品!
これは読者の皆さまもご存知であろう、弦楽器の音量を下げる超有名商品!
引き取った時に確認したけど最新ロットだって言っていたぜ
そういえば、管理人が2021年に購入した弱音器と微妙にパッケージが違うかも……
パッケージはモロに昭和だけど、税率が10%に訂正されている(※1)から2022年以降の個体かな?
(※1) ~2021年頃迄は販売店が5%表記を値札ラベルで隠すのが主流だった
まさかの長期在庫風・令和製最新ロット!
ワシが初めて買ったのは雑誌の通販広告に載っていた500円時代のやつだ、大昔の話だが……
このタイプ、平成に入る前は『普通型』として販売されていたよね?
うーむウチはグランドギター社と直接取引はないから記憶があやふやだな、保管している広告のスクラップやフライヤーで調べてみるか
日米特許??グランドギター社 弱音器のルーツを深掘りしてみる
ここは古楽器専門修理工房C 3階
音楽関係資料保管室
あったあった、昭和50年代のNHKテキストにグランドギター社の広告が載っていたぞ
どれどれ、ちょいと拝見
あ、著作権等の関係で実物の広告はアップロード出来ないのでここからは文字だけでご容赦を!
社名の横に『1967』と書いてあるから、これが創業年か?
すごいな、1967年にはグランドギター社がこの世に存在していたのか
パッケージの女性モデルも今とは違うな、ワシの記憶はこの広告の女性の方が印象深い
昔は座ってギターを構えている女性の写真(※2)を使ったパッケージだったね
(※2) 覚えている人はシニアギタリスト認定
現行品と初期パッケージの違いまとめ
現行品と初期パッケージは主にこういった違いがあるよ!
・女性モデルのポーズ
現行:直立でギターを構える
初期:椅子に座ってギターを構える
・世界で最初の弦楽器ミュートの『ミュート』表記
現行:ミュート
初期:MUTE
・『弱音器』の商品名
現行:太文字
初期:斜体
・日米特許の国旗表記
現行:有り
初期:無し
・価格表記&バーコード
現行:有り(税込)
初期:無し
・パッケージの材質表記
現行:有り(プラ、紙)
初期:無し
・対応ギター種数
現行:4種
初期:7種 (ギターの種類というよりは演奏ジャンル)
弱音器の特許について
昭和48年(1973年)の広告には実用新案と米国特許番号が掲載されているな
本当だ、特許情報プラットフォームにも登録されている。けれど……
どうした?
審査記録によると1973年11月に実用新案出願後、手続の補正を何度か繰り返し登録査定となったのが1979年だね
ふむふむ
そして1987年に年金不納(※3)による抹消、本権利消滅だってさ
(※3) ここでいう年金は特許(登録)料
あらま
1988年に再度実用新案登録願となっているけれど、1992年に拒絶査定となったみたい
当時の広告の『実用新案を採用』って書き方はセーフなのか……?『出願済み』ってのはよく見かけるが
まあ、どのみち平成5年末以前の実用新案(※4)なら既に期限切れか
(※4)実用新案は~H5年,H6~H17年3月,H17年4月~で権利期間が異なる
という訳で1973年の広告の段階では特許取得ではなく『実用新案申請』直後、現在は同権利消失となっている可能性が高いね
併記されていた米国特許に関しては検索してもヒットしませんでした
実は特許取得ではなく『特許or実用新案出願済み』は昭和の大味な広告あるあるですな
ちなみに……
パッケージに『追加申請済、その他関連特許128件。』と記載があるから、弱音器と同一出願人による申請を調べてみたよ
・国内では弱音器のほか80年代前半に弦楽器用ピック、弦楽器用保音板、弦楽器、携帯用小物入れ、ギターで実用新案を取得(同時期に取得した権利は現在消滅)
・80年代後半は加温式糠味噌漬器やえりまき、セパレ-ト型エアコン等の実用新案出願記録有り(いずれも拒絶査定)
・ヘアバンド兼用の耳飾りは未審査請求によるみなし取下となり、以降実用新案の出願記録確認出来ず
プラットフォームに記録のある範囲内で特許出願は見当たらず、全て実用新案登録願だね
加温式糠味噌漬器?
この項では記録として残っている事実のみ列挙しました!どう思うかは読者のみなさんにお任せします!
弱音器の販売数
あと正確な年代は不明だが、販売台数を記載している広告もあったぞ
それは興味深い!
多分1970~80年頃の広告だと思うけれど『弱音器(日米特許)¥500(普通型) 200万人の方々にご愛用』とアピールしている
ついに管理人の記憶と合致する普通型が登場、ていうか当時で既に200万台販売!?
この時期はプリマ楽器が総販売元で東武や西武、イトーヨーカドーでも販売中と記載があるな
そういえば確かに昔は有名百貨店やレコード屋のレジ横でも弱音器を売っていた記憶が……
資料を請求された方には粗品としてギターネイルペーパー(爪みがき)を進呈だってよ!
すげぇ!ギターネイルペーパー(爪みがき)超気になる!!
資料申請しちゃう!?ギターネイルペーパー(爪みがき)貰っちゃう!?
ギャハハハハ!って……ん?今気が付いたんだけどさ……
最新ロットのパッケージ裏、グランドギター社の住所が書かれていないね
確かに、ちょっと前まではパッケージ裏に大きく住所が載っていたはずだぞ
ということはギターネイルペーパー(爪みがき)は貰えないのか、はぁ……(溜息)
いうほど欲しいか、それ?
弱音器のグランドギター社に寄ってみた
弱音器の昔話ですっかり長居してしまった
話を戻すけど、今ウチで出せる一番の長期在庫はその令和最新ロット弱音器だけだぜ
ちなみにお値段は……?
古物仕入れの未開封品だからな、ざっと30000レバノンポンド(LBP)でどうだ!
買ったあああああああああああああああ!!!!!!!
毎度あり💖
ところで、ワシの入れ歯は本当に要らないんだな?
まだそのネタ引っ張るの!?
- 修理工房Cの帰り道 -
ここは2021年まで
パッケージに記載されていた
グランドギター社 本店所在地4km圏内
ついでなので、2021年までのパッケージに記載されていたグランドギター社の住所に寄ってみたよ
会社の看板が出ていれば電話なりFAXなり連絡方法が分かるかもしれないからね
住所は複合ビルらしく、テナントの他に一般の方も居住しているいたい
残念ながら外部からはグランドギター社の看板等は確認出来ませんでした
もしかすると既に社屋が移転となっているのかな?
連絡先表記や公式ホームページも無い模様なので、お問い合わせは販売店宛にするしかなさそうだね
結局、謎が更に深まった管理人でした。
-続く?-
外観:Grand Guitar (グランドギター社) 弱音器
せっかくの機会ですので、令和最新ロットの弱音器を簡単にレビューします。パッケージは先述の通り、昭和レトロな香りが漂うデザインを採用です。
初期デザインから変更となって以降、数十年ほぼ同等のパッケージが使用されています。現行パッケージは厚紙にプラスチックをホチキス止めをした、簡素なブリスターパック風です。
糊付け等で密閉されていないため、未開封品の保管は湿気や水分に注意しましょう。
パッケージ裏は長々と書いてあるから要約すると……
超絶音量の出るギターを開発しちゃったけど周りに迷惑かけるから弱音器使ってねー!!
ってとこかな……
つまり弱音器の説明ではない上にそのギターも既に終売となっているよ!
『ギターの穴は二つ、もう常識』と謳うギターがコチラ
本体構造
弱音器は樹脂製クリップの内側に、吸音用ウレタンを貼り付けた構造となっています。脱着はクリップ端のかみ合わせ部分で行うため、独立したロック機構等はありません。
ウレタンはスポンジ状で適度に柔らかく、乱暴に扱うと簡単に崩れる点に注意です。経年で加水分解の発生する素材につき、紫外線や高温環境下を避けた使用を推奨します。
本体表には凸文字にてグランドギター社のロゴが、裏面には『MUTE』『MADE IN JAPAN』『PATENT.』の刻印付きです。PATENT.はナンバーが刻印されておらず、やはり特許関係の権利は消滅しているものと思われます。
折り返し部は若干薄手で耐久性が低く、強く折り曲げぬようご留意ください。
使い方
使い方は弱音器のパッケージに倣い、弦楽器のブリッジ部分に装着するのが一般的です。グランドギター社のロゴが表になるように弦を挟み、クリップ端を固定するだけとなっています。
パッケージでは1弦側がネック側、6弦側がブリッジ側に傾けて装着している様子です。実際に装着位置がネック側に近いほど、基音も倍音も出力が低下傾向にあります(後述)。
ただしサウンドホールに近づけ過ぎた場合、基音が聞こえず倍音だけ響く状態に変化しやすいです。端的にギターの音と認識出来なくなるため、適切なポイントの見極めが求められます。
また限界までブリッジ側に寄せた場合でも、ピッツィカートとブリッジミュートの中間的な音色です。装着による音量低下と同時に、ギタートーンとサスティーンも大幅に変化する点を頭に入れておきましょう。
仕様
Amazon _ 弦楽器専用ミュート 弱音器 GG-022263 _ 弦楽器メンテナンス用品 _ 楽器・音響機器
- 世界で最初の弦楽器専用ミュート
- 長さ:約8.5cm 厚み:最大約1.3cm 弦はさみ部分:約6.5cm
弱音器使用による音量低下以外の効果
・装着位置によって音質が調整可能
・(サスティーン減衰効果により)各弦のアタックバランスが良く分かる
・(弦振動低減により)弦が長持ちする
・弱音器を複数個装着することも可能
装着可能なスペースがあればエレキギターにも使用可能!
アコギとはまた異なる効果で、ネックやボディー等の二次振動体と三次振動体となった弦に与える影響が大幅に減少!
故に生音はあまり変化がないのに出力が下がるという面白い効果が得られるよ!
エレキギター向けミュート情報もチェック!
サウンド:Grand Guitar (グランドギター社) 弱音器
弱音器使用による音量や倍音、周波数特性の変化を実際に計測しました。アコースティックギターはChelldeeの激安品、エレキギターはEARTのEGLP-610を使用しています。
アコースティックギターはサウンドホールに対し、ネック側斜め45度の位置にマイクをセットです。エレキギターはDI直にて、アンプやエフェクターを通す前の信号を調べています。
倍音特性の変化(アコースティックギター)
倍音は周波数が分かりやすいように、5弦開放弦 (A2/110.00Hz) を解析です。
a.弱音器装着前
弱音器装着前は基音の出力が大きめで、高次倍音は6kHz付近まで計測されています。
b.弱音器装着後(ブリッジ寄り)
装着後は基音の出力が-3dB低下し、各倍音の出力は全体的に大幅低下傾向です。特に1kHz前後を境に倍音の計測される帯域は飛び飛びとなり、4kHz付近で倍音が途切れています。
倍音特性波形の周波数目安
左端側の太長い山(中央灰色線)が基音110Hz 偶数次倍音:第2倍音(220Hz)、第4倍音(440Hz)、第6倍音(660Hz)…… →ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も 奇数次倍音:第3倍音(330Hz)、第5倍音(550Hz)、第7倍音(770Hz)…… →金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き 非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
周波数特性の変化(アコースティックギター)
周波数特性は先の通り、オンマイクにて同一フレーズを繰り返し平均的スペクトラムを算出しました。
A.弱音器装着前
弱音器装着前は150Hz付近を中心に、80~250Hzにかけて高い値を計測です。400Hz付近から出力は控えめに変化するものの400~800Hz、800~4kHz、4k~12kHzと3段階で均等な値を記録しています。
B.弱音器装着後(ブリッジ寄り)
装着後は150Hz前後の低音が-2~-3dB減少、400Hz以降の帯域は最大で-10dB以上減少です。基音と倍音の出力変化と一致しており、ピックアタック時の基音が微減、倍音の余韻が激減しているものと推察します。
体感的には音量が小さくなったというよりも、アタック後に音が伸びず広がらなくなる印象です。ブリッジ寄りの場合は、アタック音だけが聞こえるような音質に変化するとお考えください。
完全にミュートされるのではなく、アタック音以外の音の要素がぶつ切りになる感じだね
周波数特性の変化(エレキギター)
エレキギターの周波数特性はDIを用いる以外はアコギと同様に、同一フレーズを繰り返し平均的スペクトラムを算出しました。
1.弱音器装着前
装着前は400~800Hzにかけて万遍なく高い値で、1k~3kHz付近の中高音も良く出ています。
2.弱音器装着後(ブリッジ寄り)
装着後は100~2kHzにかけて-2dBほど減衰しながら均等な値となり、2kHz付近を境に出力が激減です。コンプレッションが強めとなりつつ、中高音や高音の余韻を削いだサウンドに変化しています。低~中音だけが主張されているため、公式が謳う通り各弦のアタックバランスが良く分かると考えることも出来るでしょう。
サスティーンが超短くなるのでアルペジオのアタック音量を意識した練習に向きそう!
代わりにブリッジミュートは物理的に不可能となるよ!
3.弱音器装着後(ネックPUとブリッジPUの中間)
装着位置をネックPUとブリッジPUの中間にすると、最大出力がより低い値に変化です。100~2kHzの最大出力は装着前と比較して最大-6dB、ブリッジ寄りと比較しても最大-4dBも低くなっています。アタック音が聞き取りにくい金属音のような響きにつき、ブリッジ側とは逆の『倍音だけが聞こえやすい音色』です。
音作りではなく『共振や倍音の強すぎる箇所の特定』に使えるかもね!
各周波数特性波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
使用したエレキギターのレビューはコチラ!
Grand Guitar (グランドギター社) 弱音器 まとめ
グランドギター社の弱音器は昭和から平成、令和を駆け抜けたロングセラー商品として、手軽に弦楽器の音量低下が見込めます。発売数年で200万個を販売した実績だけでなく、現在も需要が途絶えぬ点からも使い勝手の良さは多くのユーザーが認める所です。
それでも特許関連の不透明さやお問い合わせ窓口の無記載など、現代ではメーカーの姿勢が問われる要素があるのも事実となります。ギターブームを黎明期から支えた功績が後世に正しく評価されるように、今後は販売店等も掛け合って改善されることに期待です。
お友達にもギタいじを広めてね!
🏃💨気になるので Grand Guitar (グランドギター社) 弱音器 を試す🎸
次なる長期在庫を発掘せよ!
» 音楽教室で7年間売れ残ったCNB製変形ギターケースを買ってみた【長期在庫の主を狩ろう 第4神】
次回も絶対見てくれよな!
過去に紹介した長期在庫の主を知りたいならコチラ!
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