銅-亜鉛合金防錆耐久性チューナー (自称) って何だよ…… [変な部品レビュー第18回]
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前回の変な部品レビュー
銅-亜鉛合金防錆耐久性チューナー ってマジ???
変なパーツレビュー第18回は、Amazonやアリエクで繁殖している代物を見ていきます。昨今の海外では、楽器のハードウェアカラーの変革意識が強い模様です。従来の部品色は大分して、ニッケル、クローム、ブラック、ゴールドが主流でした。
更に艶消しフィニッシュなどもありますが、色自体の選択肢は多くありません。そこへきて海外パーツ勢を見ると『銅系』という新たな選択肢が増えつつあります。赤みの強いカッパーや、変なパーツ第14回で取り上げたような青銅色の部品ですね。
アンティーク調の色はレリックギターは勿論、濃い茶色の木材とも良く合います。銅色系隆盛の裏には、ローステッドメイプルの普及が関わっていると推察です。
本体が濃い目の茶色になるため、親和性の良い銅色系が増えているのだと思います。(実際問題として、サーモ処理木材はどうしても金や銀と合わせ難い場合有り)
という訳で今回ご紹介するのがコチラ、 銅-亜鉛合金防錆耐久性チューナー です。
自己評価をすばやく正確に列挙
どうにも海外安パーツ勢は商品説明の主張が強く、本品も素晴らしい文言が並びます。
高速安定感!
これらのチューニングペグを使用すると、ギターの弦をすばやく正確にチューニングできます。
引用:Amazon _ チューニングペグ、アコースティックギター用の銅-亜鉛合金防錆耐久性チューナー
確かに弦交換は時間がかかるため、時短出来る要素があるのならば嬉しいですね。問題はそのすばやく正確な仕上がりを、買わないと確かめられない事でしょうか。
精度に自信アリ!(逃げ腰)
チューニングされたギターの弦は簡単に緩みません。
引用:Amazon _ チューニングペグ、アコースティックギター用の銅-亜鉛合金防錆耐久性チューナー
絶対に緩まないではなく『簡単に』と曖昧な表現を使うなど抜かりはありません。
自称ロック式!
ロックチューナーは、ギアが空気にさらされるのを防ぎ、錆を減らし、より耐久性があります。
引用:Amazon _ チューニングペグ、アコースティックギター用の銅-亜鉛合金防錆耐久性チューナー
どうやらロック式を謳っていますが、どう見ても画像は普通のロトマチックペグです。ポストも背面もマグナムロック的な機構が無いため、香ばしさが漂ってきました。錆びにくさと耐久性に関しても、具体的な表面処理に関する言及がありません。
高品質!
高品質の内歯車で、ネジの滑りを防ぐ効果があります。
引用:Amazon _ チューニングペグ、アコースティックギター用の銅-亜鉛合金防錆耐久性チューナー
これは分解しないと分からない箇所なので、内部構造の図解等が欲しいと感じます。詳しい解説が出来ないという事は、出来ないなりの理由があると推察です。(※GOTOH等はカタログ冒頭のテクニカルノートで詳しい記載あり)
このように説明は読めば読むほど怪しく、強気のアピールが読み手の失笑を買います。営業的観点から申し上げると、失笑より商品を買わせる事を考えた方が良さそうです。しかしこれらのアピール全てが真実か否かは、実物を確かめない事には分かりません。意外と先入観はアテにならないため、本品を取り寄せて確かめていきます。
外観
予定納期は2~3週間となっていましたが、注文後およそ11日目に到着となりました。発送はお馴染みグレーのビニール封筒で、緩衝材等は一切使われていない状態です。
海外発の商品は送料無料の負担が大きいのか、梱包無しのケースが非常に多く感じます。商品はチャック付きビニール袋にまとめて封入で、一応ペグ毎に個別包装です。
ただし袋のサイズが一回り以上小さく、全てポスト先端がはみ出しています。ヤフオク!などで、梱包が雑な出品者にイラっと来る方にはおススメ出来ませんね。
本体を取り出してみると、付属品のスクリューが1本多く含まれていました。その他目立った傷等は無く、色合いもほぼ商品画像そのままといった感じです。ブロンズ系のアクセサリーが好きな方なら、グッとくるカラーだと思います。
形状はGOOHのSG381系統とほぼ一致しており、ネジ穴の位置も45度です。SG381搭載ネックを使い、無改造でポン乗せ可能であることも確認しています。
仕上がりもムラ無く綺麗で、本当に『ブロンズ』のように見える印象です。
仕様
さりとて本商品は仕様欄に、下記のように記載されていました。
仕様:
状態:100%新品
材質:銅-亜鉛合金
色:真ちゅう
引用:Amazon _ チューニングペグ、アコースティックギター用の銅-亜鉛合金防錆耐久性チューナー
状態100%新品は当然として、その他2項目に関しては不適切だと思います。まずペグの材質は本体とボタンも含め、いずれもマグネットに吸着です。
材質は銅や亜鉛合金ではなく、スチール製であると考えられます。また色も先述の通り、真鍮色ではなく青銅系のブロンズカラーです。ブラスのような金色の輝きは無いので、その辺も注意が必要になると思います。
ギア比
ペグのチューニング精度の目安として、ギア比は重要な事項の1つです。ギア比が高いと細やかな調整が可能な反面、ポストが1周する巻き数が多くなります。
エントリー機の大半は1:15か1:14で、本品も実測した所1:15でした。トルクは異様にキツく、調整ネジを緩めても滑らかさに欠ける仕上がりです。
説明文の真偽
隅々まで調べましたが、弦をロックする仕組みが搭載されておりません。説明文でアピールしていた、ロックチューナーは虚偽になると思われます。
当然ながら弦が緩まないという事も無く、どちらかと言えば緩みやすいです。本品はスチール製汎用ペグを、青銅色に染めただけの代物ではないでしょうか。SNSの自己紹介が如く、流石にこの説明文は盛り過ぎだと感じました。
重量
スクリューを除いた本体一式の重量は、およそ164.4gとなっています。GOTOH SG381 STANDARDよりも50g近く軽いですが、安ギターは150g未満も多いです。KIKUTANI GM-ST3と同程度なので、やや軽量の部類とお考え下さい。
音質
試す人が誰もいないかもしれないため、一応音質も計測しておきました。計測には炭化メイプル(ローステッド)採用の、Acepro AE-204を使用しています。既に改造を施している個体につき、ペグ交換による音の変化を見ていきましょう。
倍音特性 (A2/110.00Hz)
倍音は周波数が分かりやすいように、5弦開放弦のスペクトラムを採用です。
i.交換前
TLタイプらしく倍音量が多く、共振しやすいサドルのため非整数倍音が目立ちます。
ii.交換後
非整数倍音は基音以下では減少したものの、基音以上は増加してしまいました。奇数次倍音は若干控えめとなり、偶数次と奇数次のバランスが良い傾向です。
倍音特性波形の周波数目安
左から2つ目の山(中央灰色線)が基音110Hz 偶数次倍音:第2倍音(220Hz)、第4倍音(440Hz)、第6倍音(660Hz)…… →ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も 奇数次倍音:第3倍音(330Hz)、第5倍音(550Hz)、第7倍音(770Hz)…… →金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き 非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
周波数特性
周波数特性はDI直で同一のフレーズを30秒録音し、スペクトラムを比較します。
a.交換前
高音側の伸びが非常に良く、低音域は標準よりも気持ち大人し目の傾向です。
b.交換後
ローエンドが極端に弱くなってしまい、全体的に軽やかな音に変化しました。ブリッジミュートの力感が低下するなど、迫力不足に感じるかもしれません。かといって高音域が伸びた訳でもなく、出力も最大で-2dBほど低下しています。あくまで安ギター用ペグとの比較ですが、低音域が弱くなる可能性が高いですね。
波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
銅-亜鉛合金防錆耐久性チューナー まとめ
・材質は銅でも亜鉛合金でもなくスチール
・色は真鍮ではなく青銅(ブロンズ)カラー
・ロック式ではなく汎用ロトマチックペグ
・精度はお世辞にも良いとは言えない
・防錆性能、耐久性は不明
・カラーリングはアンティーク感があって良好
・低音域が弱く音質が変化する可能性が高い
・自己アピールを盛り過ぎているネット弁慶系変なパーツ
🏃💨 銅-亜鉛合金防錆耐久性チューナー に同情する
次なる変な部品を試しに行こう!
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次回の変な部品レビューも絶対見てくれよな!
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