[ギターパーツ] シングル ブリッジサドル って何だよ…… [変な部品レビュー第9回]
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前回の変な部品レビュー
シングル ブリッジサドル はピッチ自由自在!
近年変なパーツ界隈において、ブリッジ関連パーツが過熱傾向となっています。大手ブランドでは絶対に考案しないような、珍妙な構造のブリッジが多数登場です。昨年から見かける機会が増えた、 シングル ブリッジサドル もその一つだと思います。
該当商品はハードテイルタイプのブリッジを、大胆に6等分にした特殊な構造です。1つのサドルに対し、サドル幅と同じブリッジベースプレートが付属します。ベースプレートを分割する事で、様々なピッチに対応可能となるアイデアパーツですね。
とりわけハードテイル型ブリッジは、裏通し穴の位置がズレると致命的となります。しかし本品は弦間&取付けピッチもフリーなので、任意の箇所に装着可能です。ピッチが10.5mmでも10.8mmでも11.2mmでも、ボディに合わせて取付ける事が出来ます。
弦のセット方法は2way仕様
弦はベースプレートを通す裏通しに加え、ブリッジエンドに張る方法にも対応です。フラットトップならば、大半のボディをハードテイル化出来る代物となっています。
ブリッジザグリが特殊過ぎて、ブリッジを探すだけでも苦労するボディは割と多いです。見るからに変な構造のブリッジではあるものの、どことなく発展性を感じると思います。余剰ボディの解消に繋がるかもしれないので、試しに1セット注文してみました。
外観
単色6個入りも販売されている様子ですが、今回は2色12個入りをチョイスです。ユーザーレビューに程度の悪い個体があると報告があったため、保険をかけています。
納期は1~2週間とあり、実際の到着も注文日からおよそ2週間程度でした。発送時の梱包材はビニール封筒と緩衝シートで、2色分がまとめて包まれた状態です。
表面の仕上がりについて
各色はそれぞれチャック付き袋に封入で、内部は和紙のような紙で養生されています。破損も欠品も無く届いていますが、商品そのものの仕上がりはあまり良くありません。
商品管理時についたと思われる傷がやや多く、いかにもなバルク品といった印象です。
保管状況も思わしくない様子で、緑青が発生しているサドルが含まれていました。
金額が金額につき、こういったマイナス要素に遭遇する可能性を把握しておきましょう。
仕様
本品はL字アングル型ブリッジベース1つにつきに、サドルが1個装着されています。
取付けは2点止めとなっており、先端部とオクターブ調整部の真下で固定です。
商品画像に真横の画像が無かったため、次項に横側から見た画像を掲載します。
ブリッジの形状
真横から見て分かる通り、大半の人が想像する2倍くらいサドルの位置が高いです。トレモロブリッジ的な高さを想定していた場合、面食らうと思います。
オクターブネジの高さの位置では、弦高が高過ぎて使えない事は明白です。弦を張るとサドルは水平ではなく、おそらく斜めに傾いた状態になるでしょう。安定感や弦高の設定、オクターブ調整に影響が出ないか心配になりますね。
なによりもサドルが斜めに傾いている光景は、美観を損なう可能性が否めません。この細長い形状で、オクターブネジと弦用の穴を両立する難しさを痛感です。
アイデア商品ではあるものの、若干無理のある設計が成されているとお考え下さい。
寸法&重量
ブリッジベースの横幅、およびサドル幅はいずれも約10.2mmとなっています。
10.5mmピッチのブリッジと同等なので、ピッチ10.5mm以上のギターに対応です。
フリータイプとは言え、10.0mmなどのナロー仕様ギターには搭載出来ません。全長はトレモロブリッジよりも若干長めで、およそ40.5mm程度でした。
個体差が結構あるため、±0.1mm前後の寸法ムラがある事を確認しています。穴位置も揃っていない個体があるので、加工精度は標準より低いです。取付け後に縦横の並びが綺麗に揃わないなど、ラフな配置になると思われます。
重さは6個1セットで78.4g程度となっており、とても軽量な設計です。重量増加が微々たるものとなるため、ボディ材の影響が大きくなる事でしょう。
取付け
本品はその構造上、裏通し対応のボディに使うのが基本となります。ですがスクリューをトレモロ用に交換した場合、一応1点止めでも使用可能です。イレギュラーな使い方ですが、STタイプをハードテイル化することが出来ます。
STタイプに搭載した場合、ブリッジザグリ真下が完全な空洞になるのが特徴です。つまり『ボディを通さない裏通し』という、IQの低い弦の張り方が実現出来ます。これはこれで面白そうなので、安ギターを使って試してみる事にしました。
実験台に使用したのは、SQUIER Affinity Stratocaster HSSです。トレモロブリッジを取り払い、頭の悪いハードテイル仕様に仕立ててあげましょう。(厳密には後方を止めていないのでハード『テイル』ではない)
IQの低さ漂うボディを通さない裏通し💖
という訳で本品を取付けてみたのですが、遠目にはそれほど違和感がありません。ブリッジの形状が普通と違う程度で、パッと見は汎用の安トレモロに見えます。
ところが真横から見てみると、サドルが傾いているのでIQの低さが全開です。
この状態では調整が難しそうに見えますが中々どうして、調整はバッチリでした。オクターブ調整、弦高調整ともに問題無く、交換前の設定に揃えています。
12Fでオクターブを合わせた上で6弦側が1.4mm、1弦側を1.0mmにセットです。この状態で調整出来るのが謎過ぎるものの、特に問題無いので良しとしましょう。
裏側を見てみると、本当にボディを通さない裏通しに対応出来ています。ブリッジは前方しか固定されていないので、弦振動の伝わり方が面白そうですね。
音質
音質変化が気になるため、ブリッジ交換前後のデータを計測します。交換前のブリッジは、スチールブロック搭載のWilkinson WV6SB-BKです。センターピックアップはデフォルトのままなので、こちらを使用します。計測したのはA2倍音(5弦開放弦)、周波数特性、サスティーンの3項目です。
計測に使用した機材一覧
ギター:SQUIER / Affinity Stratocaster HSS ブリッジ:Wilkinson WV6SB-BK 交換済み 使用PU:センター(デフォルト) シールド:Aria Pro II / JG-10X (10ft/3m, S/S)×1 マイクケーブル:Amazon / CLMIC1-M-F-10FT-5P×1
倍音特性の比較 (A2/110.00Hz)
倍音は周波数が分かりやすいように、5弦開放弦のスペクトラムを採用しました。
1.Wilkinson WV6SB-BK
スチールブロックの恩恵もあり、バランスの良い倍音特性が計測されています。極端に突出した倍音が無く、偶数次倍音と奇数次倍音がどちらも芳醇です。それでも第2倍音が最も大きいため、耳ざわりの良い音を奏でてくれます。
2.シングル ブリッジサドル
倍音のバランス感を保ちながら、交換前よりも倍音成分が増加しました。第12倍音以降の高い成分が多く含まれており、生音までもが賑やかなトーンです。第2倍音が最も大きい点は変わらないため、ナチュラルな響きも保たれています。ストラトに煌びやかな倍音が欲しい場合は、試してみる価値があると言えるでしょう。
倍音特性波形の周波数目安
左端側の太長い山(中央灰色線)が基音110Hz 偶数次倍音:第2倍音(220Hz)、第4倍音(440Hz)…… →ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も 奇数次倍音:第3倍音(330Hz)、第5倍音(550Hz)…… →金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き 非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
周波数特性の比較
周波数特性はDI直で同一のフレーズを30秒録音し、スペクトラムを比較しました。
a.Wilkinson WV6SB-BK
スチールブロックの恩恵でローエンドが力強く、その他の帯域も標準以上の性能です。1k~2kHz付近が幾分控えめですが、ほとんど気にならない程度だと思います。200~400Hzがムラなくしっかり出ているため、骨太なサウンドメイクが可能です。
b.シングル ブリッジサドル
重量が大幅に低下したためか、最大出力が-2dB程低下していました。同じ条件で計測した場合、出力低下が大きく反映された波形を形成します。低音域のパワーは目に見えて乏しくなりますが、高音域はそれほど減衰しません。音の中心が300~500Hz付近にシフトするので、トレブリーなサウンド傾向です。
c.シングル ブリッジサドル 音量補正
出力に補正をかけて±0dBにすると、低音域のパワーの弱さが気にならなくなります。高音域の伸びも更に良くなるため、テレキャス的なサウンドを実現可能です。よって音量を上げて使用すると、STレイアウトのテレキャスサウンドが再現出来ます。他のブリッジでは得られない特性につき、かなりの特異性を感じるサウンドですね。
波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 桃線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
サスティーンの比較
サスティーンはシンプルに、開放弦Eコードを1ストローク鳴らして計測しました。基準となる交換前の状態を0とし、交換後に±何%音が伸びたかを掲載します。計測したデータを元に、平均%、最小%、最大%の3パターンの結果を紹介です。
シングル ブリッジサドル 交換後サスティーン
平均%:±0%
最小%:+9%
最大%:-2%
50回計測した値の平均値をみると、ほとんど両ブリッジに大きな差がありません。ただし最大サスティーンに関しては、Wilkinson製が僅かに長くなっています。最小サスティーンは真逆の結果で、本品の方が大きな値を計測です。最大値は劣るものの、安定感は本品の方が秀でていると考えて良いでしょう。
シングル ブリッジサドル まとめ
・外観は価格相当で程度の悪い個体が含まれる可能性有り
・10.5mm以上のピッチならフリーで取付け可能
・弦のセット方法は裏通しとブリッジエンド両対応
・スクリューをトレモロ用と交換すれば1点止めにも対応
・トレモロザグリに使用すると『ボディを通さない裏通し』を実現
・音は倍音豊かでトレブリーな傾向
・サスティーンはスチールブロック以上の安定感有り
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