[多分サドル] 小型で絶妙な家庭用ウクレレ って何だよ…… [変な部品レビュー第7回]

2021年10月9日2024年4月10日パーツ,ブリッジ,サドル,プレスサドル,変な部品レビュー,ギター

👆 小型で絶妙な家庭用ウクレレ ……？

目次

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前回の変な部品レビュー

小型で絶妙な家庭用ウクレレ ですってよ

変なパーツレビュー第7弾は、たまにはシンプルなパーツを見ていきましょう。近年は通販専売の安価な楽器が豊富で、ギター以外でも安弦楽器が増えてきました。

例えばウクレレは安アコギと同じく、初心者セットや樹脂ボディが人気の様子です。そしてAmazonのウクレレカテゴリにて、頻繁に遭遇するのが👇コチラとなっております。

商品名が香ばしさ漂う程に長く、要約すると『 小型で絶妙な家庭用ウクレレ 』です。おそらく誰がどう見てもトレモロ用サドルですが、ウクレレを自称しています。

どこを見渡しても満遍なく変！

出品されているカテゴリもおかしく、アコースティックギターパーツ扱いです。また本品は商品画像も変なもの揃いで、最早何を主張したいのか意図がつかめません。

ブリッジにTOMを搭載したSGとセットで映してみたり……

多弦ベースを背景にしてみたり……

7弦ギターとツーショットをキメてみたり……

探せば探すほど変な要素しかなく、加えて商品説明文もどこか違和感を覚えます。タイトル、画像、説明文、どこを見まわしても違和感しかないのです。果たして本品は、本当に小型で絶妙な家庭用ウクレレなのでしょうか？変のベクトルがいつもと違う気がしますが、実物を精査してみたいと思います。

外観

本品はAmazonプライム配送特典対応で、送料無料＆お急ぎ便に対応です。梱包は小物類の配送で良く見かける、Amazonの厚紙封筒が使用されていました。

中から商品を取り出すと、呆気なく本品正体が判明します。添付されたラベルによると、やはり本品はエレクトリックギターサドルとの事です。これがヤフオク！ならば、出品カテ違いで大量に違反申告が入りそうな気がします。

検索ヒット率を高めて商品へ誘導する目的なのでしょうが、効果のほどは不明です。ウクレレを探している層に、ギターサドルが必要となる方が多いとは思えません。それでも商品管理はきちんとしており、本体が傷つかないように養生されていました。

サドルの構造

セット内容はトレモロ用ギターサドルが6個に、専用の六角レンチが1本含まれます。サドルの形状はプレスタイプで、表面にはFender系を意識してか刻印付きです。最初見た時は『ま』だと思ったのですが、よく見ると『HG』と刻まれていますね。

扇のように並べた画像からも分かる通り、サドルは長方形状ではなく台形状です。Fender系サドルと異なる構造としては、弦高調整ネジ搭載部分が挙げられます。

裏面を見ると先端が完全な筒状となっており、意外にも調整時の安定感が抜群です。この点に関しては、Fender製のプレスサドルより良いかもしれません。ただしサイズのクセが強いため、次項の仕様にて説明いたします。

仕様

冒頭で述べた通り、本品はタイトルと画像以上に説明文が良く分かりません。簡単に申し上げると、正しい説明よりも誤記が目立つ状態でした。語弊を招くとかそういったレベルではないため、説明文を引用しつつ解説です。

ローラー？

DIYギターに使用されるローラー付きの素晴らしいサドルブリッジ

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見て分かる通りプレスサドルで、ローラーは未搭載となっています。

対応ギター

ほとんどのエレキギターに適しています

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トレモロブリッジやハードテイルなど、プレスサドルに対応したブリッジ専用です。商品画像にあるSGタイプ、7弦ギター、多弦ベースには搭載不可だと思われます。

材質

高品質の銅-亜鉛合金製で、耐久性と長寿命を実現しています

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亜鉛合金の時点で高品質とは言い難く、耐久性に乏しいため長寿命ではありません。しかも実際には亜鉛合金製ではなく、スチール製のサドルでした。各ネジ類、スプリングもスチール製につき、亜鉛製よりは耐久性に秀でています。材質自体は誤記ですが、スチール製なので亜鉛製よりも圧倒的にメリットが多いです。

サイズ

サイズ：約33 x 11 x 6mm

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ギターいじりに慣れている方ならば、全長33mmのイレギュラー感に気が付く事でしょう。トレモロ用サドルの全長は、通常ならばピッチの2倍相当が平均的長さとなります。ノギスで実測してみると、サドル全長は21.0mmとなっていました。

商品画像を見ると分かりますが、33mmは先端からオクターブネジ頭までの長さです。

横幅も11mmではなく先端が11.6mm、オクターブネジ側が10.8mmとなっています。

11.2mmピッチ用のサドルになると思われますが、先端の幅がかなり広めですね。

ピッチも11.6mmに広がってしまうため、演奏中の弦落ち等が懸念されます。

取付け

安ギターでは11.2mmピッチがほとんど存在しないため、80年代の国産機に搭載です。今回はAria Pro IIのUrchin seriesシリーズより、U-60Tに取付けてみました。

該当モデルは変形ギターにしては珍しく、トレモロブリッジ仕様となっております。ピッチも国産規格の11.2mmで設計されており、ブラスサドルを搭載です。

ピッチが広過ぎて逆に目立つ？

リアが10.0mmピッチのプロトマチック5なので、元よりポールピースが合っていません。

そして11.6mmピッチに広がったため、ポールピース中央が更にズレてしまいました。ここまでピッチが広がると逆に斬新で、ユニークさすら覚えてしまいますね。メッキの質やフォルムも悪くない点が、ピッチのアンマッチ感を何倍にも強調です。

あまりピッチを気にしない人でも、気にせざるを得ないレベルの違和感があります。一見普通に見えて思いっきり変な設計という、絶妙なB級パーツ感がたまりませんね。悔しくも変なパーツ愛好家の琴線に触れたため、この際ピッチは不問としましょう。

音質

変なパーツ要素が回収できたので、簡単に音色の変化も調べておきました。調べたのはいつも通り、倍音特性、周波数特性、サスティーンの3項目です。

U-60Tは製造時よりほとんど手を加えておらず、ノブとイモネジのみ変更しています。しかしイモネジをステンレス製にしているため、音の重心が高くなっている状態です。倍音が多く高音域が強くなる半面、デフォルトよりもローエンドが弱くなっています。

倍音特性の比較(A2/110.00Hz)

倍音は周波数が分かりやすいように、5弦開放弦のスペクトラムを採用です。

1.ブラスサドル

ブラスサドルの特性の一つとも言える、芳醇な倍音成分が含まれています。偶数次倍音も奇数次倍音も綺麗に揃っており、バランス感覚が実に良好ですね。突出した奇数次倍音も存在しないため、ナチュラルな響きが味わえます。

2.小型で絶妙な家庭用ウクレレサドル

倍音成分はブラスサドルよりも控えめですが、奇数次倍音も控えめです。特に第7倍音が大幅に減衰するた、ブラス以上に滑らかな響きとなっています。高音域の倍音も大人しいので、エフェクターのノリが良いのもポイントです。倍音特性はどちらのサドルも欠点が少なく、異なる長所を備えています。

周波数特性の比較

周波数特性はDI直で同一のフレーズを30秒録音し、スペクトラムを比較しました。

a.ブラスサドル

ステンレスイモネジの影響が大きく、ローエンドが弱いというよりは平坦です。200Hzから800Hz付近まで同程度の強さなので、立体感に欠けるかもしれません。反して高音域の伸びは凄まじく、6kHz以降の帯域も強烈な鋭さを誇ります。ストラトやテレキャス以上の数値につき、煌びやかな傾向だと言えるでしょう。

b.小型で絶妙な家庭用ウクレレサドル

プレスサドルは体積が少ない分、最大出力も-1dB程低下していました。それでも低音域は初期サドル以上で、高音域の暴れ具合も控えめです。ピッチが一層ズレてしまった事により、弦のアタック感が和らいだのだと思われます。トレブリーな機種に対しては鋭さを弱め、ローエンドを強める効果が得られるハズです。

サスティーンの比較

サスティーンはシンプルに、開放弦Eコードを1ストローク鳴らして計測しました。基準となる交換前の音伸びを0とし、交換後に±何%音が伸びたかを掲載します。計測したデータを元に、平均%、最小%、最大%の3通りのデータを算出です。

小型で絶妙な家庭用ウクレレサドル交換後サスティーン

50回計測した結果、サスティーンはいずれの値でも初期サドルの方が優れています。こちらも体積の減少が影響しているため、音伸びがある程度損なわれる傾向です。とは言え極端な差は無く、体感的にもそこまで大きな差は感じられません。筒状の先端部の構造もあり、むしろプレスサドルとしては伸びが良い方だと思います。

参考記事

小型で絶妙な家庭用ウクレレ まとめ

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