ギター&ベース なんでそのネジ使ったんだ選手権|Bolt.1 Aria Pro II ダイキャストブリッジ

エレキギターやエレキベースを語るとき、多くの人はピックアップや木材、ハードウェア構成に注目しがちです。
しかし実は“ネジ”にもメーカーの選択や時代の空気、そして時に「なぜこのネジだったのか」と頭を抱えたくなるような謎が潜んでいます。
本連載「なんでそのネジ使ったんだ選手権」では、設計思想や音響理論といった大きな話は一旦脇に置き、ただひたすら“ネジそのもの”に焦点を当ててご紹介です。
そしてもうひとつ重要なのがマイナーすぎるネジを採用した結果、後年のメンテナンスで入手困難になるという事実に直面します。
イレギュラーな規格のネジは独自性の塊であるのと同時に、修理が一気に難しくなるという楽器ユーザーにとっては笑えない現実を突きつけてくるのです。
「どうしてこのネジだったのか」
「当時の担当者は何を思っていたのか」
──そんな疑問を抱えながら、ギター&ベースの“ネジの深淵”を一緒に覗いていきましょう。
1980年代のAria Pro IIを支えたエレキベース用ダイキャストブリッジのネジといえば……?
記念すべきBolt.1では、1980年代のAria Pro IIを支えたエレキベース用ダイキャストブリッジのネジを紹介いたします。Aria Pro IIは1970年代後半にSBシリーズを発表した頃より、エレキベースに他社では見られないブリッジを採用するようになりました。
1978年製のSBシリーズではブラスナットと対になるブリッジとして、オリジナルブラスブリッジテールピースを搭載です。オールソリッドブラスによる重量級ブリッジは、弦振動をがっちりと受け止めパワフルなサウンドを創出します。

1980年代に入るとオリジナルブラスブリッジテールピースをもとに、ダイキャスト製の廉価版ブリッジが登場です。それが今回ご紹介するダイキャストブリッジテールピース (以下本記事ではダイキャストブリッジ表記とする) で、モデルに合わせてワイダーピッチとナローピッチが存在します。

いずれも見るからにゴツい構造のブリッジですが、共通するのが非常に長いオクターブ調整ネジです。イントネーションスクリューとも呼ばれるこのネジは、ミリ規格品のブリッジの場合M3が主流となります。

しかしAria Pro IIではひと回り小さい径のM2.6を採用し、なおかつ首下の長さが35mmもあるのです。材質はスチールなので経年で錆びたり歪んだりしやすく、中古で購入した場合は腐食して動かないこともあるかもしれません。

弦高を調整するイモネジは流通量の多いM3が使用されているため、オクターブ調整ネジだけ楽器店では入手困難となります。ホームセンターでもM2.6は取扱いが少ない上に、取扱いがある店舗でも35mmは滅多にお目にかかれないはずです。
という訳で新品に交換する際は、ネジ専門店の通販を利用するのが最も確実となります。ダイキャストブリッジは最大40mmまでのネジが使用できるので、在庫と照合して適切な長さを選択しましょう。
付け加えて言うと強度の面から純正と同じスチールではなく、ステンレスに変更した方が良いかもしれません (異種金属接触腐食については後述) 。

これにて一件落着!!
……といきたいところですが、ハードウェアとネジの色を合わせる場合はそう簡単にはいかないのです。
何故ならダイキャストブリッジはニッケルの他にブラック、ゴールドの個体が存在します。

スチールは三価ブラックや黄褐色メッキで代用できますが、ステンレスのブラックやゴールドは標準在庫として扱われないため、専門店に相談して作ってもらうしかありません。そこで管理人はブラックタイプのダイキャストブリッジ用に、

コスモブラック仕上げのM2.6オクターブ調整ネジをオーダーしました。

なべ頭全ネジでM2.6×35mmの並目をコスモブラック仕上げでオーダーしたいのだが

うーん、そうだね……

最小注文数は50本になるけどいいかね?

!?


なんでオクターブ調整ネジにM2.6の長~いカラータイプを使ったんだよ……
- 続く -
※50本は超良心的、最小注文数1,000本とかも普通にある

「うちの業界でもこんな困ったネジあるよ!」みたいなのがあったら管理人のTwitter (現𝕏) やコメントでアピールしてね!
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異種金属接触腐食について
異なる金属同士は電位差があるため、接触している箇所に水分が加わると卑な電位の金属に腐食が発生しやすいです(異種金属接触腐食)。例として液体を通す配管が鉄製の場合、異種金属接触腐食が発生しやすくなるステンレス部品の使用は敬遠されます。電子楽器は水分に触れないことを前提に設計されていますが、異なる金属部品を組み合わせるパーツ構成は手汗や屋外使用時の雨、加湿器等に注意が必要です。
とは言え市場のギターパーツ類を眺めてみると、電位差を考慮していない設計の商品が圧倒的多数となります。ステンレス弦を使用したらスチールブロックがボロボロに腐食した、という話はほとんど聞いたことがないはずです。
ボールエンドまでステンレスの弦、ステンレスフレット、ステンレスペグ、ステンレスブリッジ、ステンレスプラグのシールドにステンレス仕様のアウトプットジャック、ステンレスピック……このように楽器全体の構成を考えてみると、全ての部品を同一金属で揃えるのは不可能であることに気付くと思います。
電子弦楽器自体が異種金属の集合体であること、水分に触れる使用環境を前提にしていないということもあり、この辺の線引きは設計者間でも意見が割れる要素です。そもそも楽器に腐食が発生する時は使用金属の組み合わせよりも使用環境や保管環境、取扱い方法やメンテナンス方法の見直しが先決だと言えます。念のため入手性の難しいブリッジや高額なギターへの使用は避け、スクリューの交換は自己責任で行いましょう。
スクリュー類の交換でグレードアップ!
ARIA & Aria Pro II 製品レビュー!
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