【1955年PAF再現】Seymour Duncan SH-55 Seth Lover PAF開発者協力ハムバッカー!【ダンカン音質解析】

2023年1月20日2024年4月11日Seymour Duncan,Gibson,PAF,SH-55,Seth Lover,セス・ラヴァー,Vintage Output Humbucker Pickups,ピックアップ,ハムバッカー,アルニコ2

👆 Seymour Duncan SH-55 Seth Lover PAF開発者が制作に協力したハムバッカーの音質を解析！

目次

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Seymour Duncan SH-55 はPAF開発者 Seth Lover 協力の元1955年製PAF初期バージョンを再現！

今回はSeymour Duncan (セイモア・ダンカン) より、PAFを再現したハムバッカー SH-55 Seth Lover をご紹介です。SH-55はSeth Loverの名を冠するそのものズバリのモデルで、PAF設計者の1人であるセス・ラヴァー氏が制作に協力しています。

公式が『澄み切った青空』と謳うSH-55のサウンドは、暖かな低音と程よい甘さの高音が絶妙なバランスです。滑らかに広がるハイトーンと明瞭な音の輪郭を備え、雑味の無い芳醇な倍音構成が特徴となっております。

元になっているのは型番の55が示す、1955年製の特許申請直後のハムバッカーです。Gibson Japan公式ではPAF初期バージョンと表記されていて、1957年にエレキギターへ搭載される製品化前段階のものとなります。

1955年仕様は当然ながらほとんど市場に出回らず、若干アレンジしたものが1956年製のラップ・スチールギターに搭載されました。

SH-55はPAFコピーモデルの中でも異質の存在！

こういった経緯からも、SH-55はPAFコピーモデルの中でも異質な存在です。PAFがエレキギターに組み込まれる以前の年式を元にしつつ、特許申請者本人であるセス・ラヴァー氏が開発に参加しています。

ダンカンのPAF再現モデルといえば、59年製PAFを現代向けにアレンジしたSH-1 (’59 Model) が筆頭です。加えて59年製レス・ポール搭載のPAFを元に設計された、SH-PG1 (Pearly Gates) も高い支持を得ています。

他のピックアップメーカーが開発したPAF系モデルも、基本は実物を元に再構築したピックアップです。

禁じ手の本人降臨モデルだからこそ細部まで1955年仕様！

そこへ来てSH-55は開発者自らが細部まで監修しているため、最早『禁じ手』に等しい完成度を誇ります。まずブチレートボビンの金型は、オリジナルPAFの金型を実際に製造した工場で作られているものです。

コイルには特注の42AWGプレーンエナメルマグワイヤーを、マグネットには2.5インチのアルニコ2を採用しています。スペーサーには乾燥させたメイプル材を使用し、ニッケルシルバー製のカバーとボトムプレートを搭載です。

配線材はシングルコンダクターケーブルで、極めつけにコイルはワックスによる含浸処理を一切行いません。含浸無しのコイルとニッケルシルバーカバーが、ピアノのように澄んだ高音とパーカッシブなフィーリングを実現します。

SH-55は4芯ワイヤーオプション有り！

SH-55のオプションはブリッジ用とネック用のモデルに、コイルタップに対応する4芯シールド仕様を選択可能です。

カバーカラーはニッケルとゴールドの2種から選べるものの、4芯仕様のゴールドは受注生産品となります。

👆 SH-55 Seth Lover Gold (ゴールドカバー仕様)

トレムバッカーや多弦対応オプションは無く、ハムバッカーカスタムオプションにも非対応です。

その代わりマウント箇所やワイヤーオプションを問わず、ボトムプレートにセス・ラヴァーの直筆サインが転写されています。

SH-PG1 Pearly Gatesの音質解析はコチラの記事をチェック！

公表データの確認：Seymour Duncan SH-55 Seth Lover

倍音特性 (D3/146.832Hz) をSH-55とSH-PG1で比較！

まずはクリーン設定のアンプを通して、4弦解放のD3倍音特性を調べていきます。

SH-55は基音と第2倍音の出力が高く、基音と第2倍音の谷間と第2倍音と第3倍音の谷間に小さな非整数倍音の山が発生です。ところが非整数倍音自体は全帯域で控えめで、相対的に強調される谷間の非整数倍音が独特のアタック感を構築しています。

非整数倍音の少なさは音のクリアさを、独特のアタック感が音程を感じさせないパーカッシブな響きを決定付ける要素です。第3倍音以降は適度な出力を保ちつつ、実に滑らかに減衰していく点もナチュラルなトーンバランスに一役買っています。

出力が少しずつ下がるためコンプレッション感を伴わず、ダイナミクスを活かしたプレイが可能です。倍音は3.5kHz付近を境に一気に途切れるため、音の余韻に煌めきを感じさせない古風な味付けだといえます。

SH-PG1の倍音特性

基音や低次倍音の出力が高い点と、なだらかな倍音の減衰はSH-55に近いものがあります。ですがSH-PG1はSH-55よりも倍音の出力の上下差が激しい箇所が多く、低次倍音は幾分シャギーな波形です。

また倍音の谷間の非整数倍音は控えめですが、全帯域でSH-55より非整数倍音が多く計測されています。高次倍音も3.5kHzで途切れることなく、6kHz付近まで計測されているので煌びやかな余韻を実感可能です。

倍音特性波形の周波数目安

灰色の線が基音(D3)の146.832Hz
偶数次倍音：第2倍音(293.664Hz)、第4倍音(587.328Hz)……
→ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も
奇数次倍音：第3倍音(440.496Hz)、第5倍音(734.16Hz)……
→金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き
非整数倍音：各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない

クリーンの音質をSH-55とSH-PG1で比較！

続いて倍音計測と同じセッティングを保ったまま、各モデルの周波数特性を解析します。

SH-55のクリーンはトーンチャートに近い値を示し、400～2kHzにかけて中音が絞られているのが印象的です。3kHz以降は倍音特性通りなだらかに減衰していき、高音は6kHzをピークに9kHz付近まで高い値を維持します。

低音は6設定ですがそこまで強烈ではなく、音の重心は280Hz一点に集中する波形です。200Hz以下の帯域はSH-1やSH-PG1よりも抑えられており、無駄な余韻を与えぬメリハリの利いた低音を再生します。

SH-PG1のクリーン音質

SH-PG1の中音と高音はSH-55よりも1段階上の設定通り、中～高音はおおむねSH-55よりも高い値を計測です。300～3kHzにかけては1段階とは思えぬ高い値を記録し、芯と艶のある濃密な中高音を響かせます。

一方高音は3～4kHz付近までは高い値を保つものの、4kHz以降は僅かにSH-55の方が上手です。とは言えクリーンに関しては両モデルとも、ほぼ同等の高音性能を有すると考えられます。

オーバードライブの音質をSH-55とSH-PG1で比較！

最後にアンプをハウリングしない程度に歪ませた、オーバードライブ時の周波数特性を比較です。

あくまでハウリングしないという条件下でですが、SH-55を歪ませるとSH-PG1に迫るドライブ感が得られます。高音はほんのりと丸みを帯びつつ、クリーン時の空洞的な中音が更に強調された音色ですね。

波形の形状もほぼ同じで、違いとしては2k～5kHzにかけて角が無く柔らかに高音が伸びます。SH-PG1の荒っぽい爆発力や中音のバイト感を滑らかに整えた歪み方は、歌声のように響く透明感を内包です。

SH-PG1のオーバードライブ音質

SH-PG1は歪ませるとクリーン時よりもレンジが広がり、中高音から高音にかけて鋭さを増します。空洞的な中音でもバイト感が凄まじく、ハーモニクスは火花が飛び散るような煌びやかさです。

SH-55よりも2k～5kHzにかけて高い値を記録するため、スピード感に溢れたドライブを演出します。200Hz以下の低音と400Hz付近の中音はSH-55以上の値につき、ローエンドの安定感にもアドバンテージが得られそうです。

各波形の周波数目安（左から順に）

赤線：100Hz,200Hz 
橙線：400Hz,800Hz 
桃線：2kHz,3kHz,6kHz

Seymour Duncan SH-55 Seth Lover PAF開発者協力ハムバッカー音質解析 まとめ

セス・ラバーの厳しいスペックに基づき設計されているだけあり、多くのPAF系とは一線を画すヴィンテージ出力ハムバッカーです。現代で再現出来るPAF初期バージョンの上限に近いため、ギター史に触れるという意味でも貴重なモデルに仕上がっています。

愛機が歌うように響く暖かなクリーンは近年のピックアップでは得難く、トーンを絞った際の甘枯れサウンドも絶品です。LPタイプやセミアコなどに搭載して小出力のアンプでつま弾くだけで、鼓膜と脳を丸ごと古き良き時代へ誘う魔力を秘めています！

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SH-55n Seth Lover Neck

SH-55b Seth Lover Bridge

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