DIの有無による周波数特性を CLASSIC PRO CDI-2P と3種の楽器で比較!
DIでどの程度ライン録りの音が違ってくるの?
ハイインピーダンスな楽器全般にとって、DIは大きな味方です。DIはアンバランス方式の出力を、低インピーダンスなバランス方式へ変換します。ステージで活躍するベーシストにとっては、ギタリスト以上に馴染み深い存在ですね。使用機材の組み合わせによっては、エレアコ使いで活用している方も多いと思います。
近年はDI内蔵やHi-Z搭載の機材が豊富につき、エレキギターでは必須とまではいきません。しかし機材の組み合わせが広がるため、音の選択肢も膨らむハズです。Hi-Zを搭載していない機材をDIで接続するなど、色々な音の発見があると思います。今回は CLASSIC PRO CDI-2P を使い、DIの有無による音の違いを見ていきましょう。
CLASSIC PRO CDI-2P と YAMAHA AG03で検証
音の違いを比較する方法は色々ありますが、今回も周波数特性の変化を採用です。楽器ごとにDIの有無で同一のフレーズを録音し、その違いを波形にして比較しました。録音環境も全楽器で共通とし、異なるのは楽器の違いとDIの有無のみとします。
機材の接続順は、楽器→DI(有り/無し)→オーディオインターフェース→PCです。オーディオインターフェースには、USBで接続可能なYAMAHA AG03を使用します。
AG03は知名度と普及率の高さは抜群で、配信用途だけでなく自宅練習にも最適です。(ループバック機能がスイッチ一発で使えて便利!)ギター用の入力も用意されており、初心者にも扱いやすい設計となっています。ですが今回はDIの有無の差をハッキリさせるため、あえてマイク用の入力を使用です。DI無しはシールド直で、DI有りは途中からマイクケーブル使って接続します。
接続する楽器は3種類
比較対象に使用する楽器は、エレキギター、エレキベース、カリンバの3種です。
エレキギターはこれまでと同じく、SQUIER Bullet+DP184+Big Blockを使用しています。
エレキベースは少し古いですが、Aria Pro II RSB MEDIUM-IIというモデルを採用です。
カリンバはonetoneのマホガニーモデルに、激安ピエゾピックアップを装着しています。
ケーブルは極力安価な普及品を使用し、可能な限り音に手を加えないよう配慮です。シンプルにDIの有無による差異が分かるよう、最適と思われる環境を構築しました。
ちなみにCDI-2Pはステレオ仕様ですが、測定ではAチャンネルのみ使用しています。これは純粋に、管理人がCDI-1Pを所持していないためです。1系統のモノラル出力以外使用する予定が無い場合は、より低価格なCDI-1Pをお勧めいたします。
👆 CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / CDI-1P パッシブDI
計測に使用した機材一覧
ギター:SQUIER Bullet Stratocaster Tropical Turquoise ナット:FENDER YJM Brass Nut リアピックアップ:DIMARZIO DP184 WHITE THE CHOPPER ブリッジ:FENDER Standard Strat Big Block Chrome Tremolo Bridge Assembly ベース:Aria Pro II RSB-MEDIUM-II カリンバ:ONETONE OTKL-02 ピエゾピックアップ:ノーブランド品 シールド:Aria Pro II / JG-10X (10ft/3m, S/S)×1 マイクケーブル:Amazon / CLMIC1-M-F-10FT-5P×1 DI:CLASSIC PRO / CDI-2P (INST) インターフェース:YAMAHA / AG03 (CH1,LEVEL:標準ライン,GAIN:3.5,全エフェクト無し,INPUT MIX)
参考:AG03 ギター入力へ接続
DIの有無を検証する前に、AG03のギター端子へ接続した際の周波数特性を紹介です。
ギターやキーボードに対応しているだけあり、標準的なDP184の波形を再現しています。マイク端子を使用した際に、この波形に近い結果ほど周波数特性の再現率が高いです。減衰していれば音の劣化を示し、増幅した場合はノイズ等の不要な音の混入を示します。
表の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz 橙線:400Hz,800Hz 黄線:2000Hz,3000Hz,6000Hz ※使用ケーブル、DI、インターフェースの設定は全て固定
エレキギター + CLASSIC PRO CDI-2P
それではここからは、ギター端子ではなくマイク端子へ楽器を入力です。ギターでは1~6弦全てを使用する、約20秒ほどのフレーズを演奏しました。演奏ムラを均一にするため、同じフレーズを3回繰り返し1分のトラックにしています。
CLASSIC PRO CDI-2P無し
聴覚的な印象としては、まんべんなく中音域に伸びがない平坦な音といったところですね。
チャカチャカした音色になってしまい、音像に全く立体感がありません。低音域が常時ぼやけ気味のため、音の分離の悪さを抱いてしまいます。周波数特性的にも、DP184がウリとするバランスの良さが失われてしまいました。
CLASSIC PRO CDI-2P有り
DP184本来のトーンを取り戻し、帯域によるムラも大幅に減少です。中音域に芯が通った感じで、イメージ通りのクリーントーンを奏でてくれます。ホワイトノイズも少なく、低音域のモッサリ具合が綺麗に解消されました。
アタックの強弱もハッキリしており、音の分離やロングトーンも良好です。波形では不要な音域がカットされて、美味しい音域が正常に出力されていますね。DI無しによる音質の劣化が、帯域の減衰だけでは無い事を実感出来るハズです。
エレキベース + CLASSIC PRO CDI-2P
ベースはルート音のみとし、複雑なリズムを省いたフレーズを演奏しています。先に録音したギターと同じ曲に、ルート音を重ねて弾いただけです。スライドやグリスを使用しない事で、周波数特性の波形を階段状にする狙いがあります。演奏中はアタック感をしっかり出すため、0.8mmのナイロンピックを使いました。
CLASSIC PRO CDI-2P無し
ルート音をピックで弾いているにも関わらず、アタック感が全くありません。総じてメリハリが無く、鼻の詰まったコントラバスのような音になってしまいます。ベース本体のトーンを限界まで絞り、指弾きで演奏したような感じですね。
周波数の中心もボヤけ気味で、余計な倍音が混ざっているように聞こえました。波形も重低音寄りになっており、中途半端にコンプをかけたような状態となっています。
CLASSIC PRO CDI-2P有り
ゴリゴリとしたピックで弦を弾く強弱が再現され、音の輪郭が明確かつクリアです。音の中心帯域も分かりやすく、ルート音ごとに綺麗な階段状の波形へ変化しています。どのルート音でもアタックのピークが出ており、聴覚的にとても聞き取りやすいです。
200Hz以降は全ての帯域がノーマライズされて、濁った重低音もカットされました。DI有りの音と比べると、DI無しは水中の音のように聞こえるのではないでしょうか。
カリンバ + CLASSIC PRO CDI-2P
近頃ブームなのか、楽器屋店頭でもカリンバを良くみかけるようになりました。ピックアップは安物ですが、アコスティック感が損なわれぬよう配置に留意しています。演奏はシンプルに、一定のリズムでドレミファソラシド……と上昇していくのみです。カリンバの検証というよりは、ピエゾピックアップの検証とお考え下さい。
CLASSIC PRO CDI-2P無し
本体からの実音が録音中も聞こえるため、録音した音だけを聞いた際の落差に驚きます。まずカリンバらしい美しい響きが失われ、アルミ缶を叩いているような音に変化です。サウンドホールの音といいますか、特有の空気感がほとんど無くなってしまいました。
か細くて無機質な金属音に近く、あまり心地よい音色とは言えませんね。正常に再生できない音の成分が混ざり、不必要にピークが持ち上がったためと推測です。常時ノイジーなのも気になり、この音をカリンバの音と判断するのは難しいと思います。
CLASSIC PRO CDI-2P 有り
DIを通した音は、まぎれもなくカリンバのアコースティックな音色でした。安物のピックアップとはいえ、生音と違和感の少ないトーンを再現です。1音1音しっかり聞き取れるだけでなく、低音域と中音域の飽和感と余韻が感じられます。
高音域の余計な響きがカットされて、金属音的な音色の冷たさもグっと減少です。サウンドホールの暖かな響きが、200~800Hzにかけての特性にも良く表れていますね。ホワイトノイズもほぼ無くなり、9kHz以降の波形がスッキリと無くなりました。
結論:DI使うべし💖
マイク入力にハイインピーダンス楽器を接続する極端な検証でしたが、結果は歴然です。ライン録りにおけるDIの有無は、音質とノイズ耐性の両面に大きな影響をもたらします。検証に使用したCDI-2PはパッシブDIらしく、クセの少ない自然な変換が実に魅力的です。
入力する楽器を選ばない点も優れており、なにより価格の手頃さが他に類を見ません。堅牢なスチールボディも耐久性が高く、タフなステージ環境でも難なく対応します。宅録ユーザーならば、一台は手元に置いても損にはならないハズです。まだDIを使用したことの無い方は、ぜひとも本機を導入して宅録に挑戦してみてください!