粗悪な激安ギターを3年以上弾き込んだら無改造でも『鳴る(物理的性質で音が良くなる)』の?

目次
本日より ギタいじ Season5 開幕!初見の方は『コチラ』をチェック!
記事一覧はサイトマップへGO!
これまでのあらすじ!
弊サイト ギターいじリストのおうち は来る2025年4月1日をもちまして、4周年を迎えることができました。これまでギタいじでは様々な商品をレビューしてきましたが、どちらかと言えばネガティブな商品の方が記憶に残っています。

中には評価に値しない機材も少なからず存在し、そういった製品は優秀な商品よりも何倍も脳を抉る攻撃力が高いのです。特にギタいじを開設した2021年は、現在の物価からは考えられぬほど海外安ギターの低価格競争が混迷を極めた時期でした。
2万円あれば豪遊出来た時代の面々
数多の強豪安機材軍の中から管理人の脳裏に焼き付いたワーストの1本を選抜すると、
ぶっちぎりで ZUWEI プリンス クラウドタイプ 一択となります。
ギタいじ史上最狂!価格帯の下限を攻め過ぎた粗悪品過ぎる激安ギター!!
ZUWEI プリンス クラウドタイプ は2021年9月より、Amazonにて日本国内流通が開始となった激安ギターです (既に廃盤) 。当時はZUWEIの激安ギターがAmazonで猛威を振るっており、ギタいじでも開設直後にカスタムショップシリーズをレビューしています。
海外安ギターの例に漏れず、ZUWEI製品の特長は『商品画像の見た目は100点、性能は未知数』といったところでしょうか。実際に複数本購入した管理人の心象では、手入れを行えば使えるレベルになるモデルが何本か存在していたのも事実です。

逆に手入れ以前の問題として価格帯の限界を超えた要素を盛り込み過ぎたあまり、調整しようがない悲惨なモデルも多数ありました。その中でもクラウドタイプは価格帯の下限を攻め過ぎた挙句、品質が底辺どころか底を突き破って マントル層にまで到達 しています。
肝心の購入価格は2021年当時のうまい棒の販売価格を基準にすると、ざっと2,600うま前後という常軌を逸した激安品です。どのような品質のギターであったのかを知らない方向けに、3年半前に投稿したレビュー内容を簡単に振り返っていきましょう。
粗悪品過ぎる激安ギター 見どころプレイバック


音響的特性や装飾美を追求したのではなく、作業簡略化のみを目的としたネック一体成型バスウッドボディ!


バスウッドネックの剛性の低さを圧倒的太さでカバーした、脳筋過ぎる極太ネック&極厚指板設計!


CNC製
最早彫刻刀で乱雑にザグったようにしか見えないほど稚拙過ぎる、自称・CNCルーターによる素敵な加工技術!


これ以上改良することが出来ない程に完成されたシェイプ
塗装に砂粒や木屑が混入しまくっている、自称・これ以上改良することが出来ない程に完成されたシェイプ!



どの角度から見てもただただ格好良く、いつまでも飽きることなく眺めていることが出来ます
新品・錆有り・ねじ山を潰し放題という有様の、自称・どの角度から見てもただただ格好良いルックス!


長さが足りない、弦が挟まるほど浮いている、山が整っていない等々、正気とは思えぬ狂ったフレットワーク!


極めつけに弦をアタックした瞬間だけ辛うじてペチペチ音が響く、極小どころか『ご苦笑』出力の前代未聞なボディ鳴り!
※苦笑いよりも笑いながらキレるパターンに近い


レビューを終えた脳は限界Amazon危険商品の闇に蝕まれ、脆弱な亜鉛合金パーツのように心が砕けたギタいじ管理人。

しかしその絶望に満ちた瞳の奥には、深淵なるマントル層を照らす僅かな光が息づいていた。

むしろその光は不撓不屈の精神の如く、燃え盛る闘志と未来への希望が感じられた。

そう、ギタいじ管理人は知っていたのだ。
偉大なる ヤマハ が長年の研究で、
弦楽器は弾き込まれるほどに『鳴りが良くなるメカニズム』を解明していることを。
ギターが『鳴る』メカニズムをヤマハの最先端技術で解説
ここからが本題となりますが、皆さんはギターを購入後にしばらくして『鳴りが変化する』体験をしたことがあると思います。購入直後は角のあるキンキンした音色のギターでも、弾き込むほどに角が取れて音量も大きくなった気がする……といった体験です。
あるいは同一モデルの楽器を新品と中古で比較した場合、なんとなく中古の方が好みの音がした……という経験もあるかと存じます。部品の消耗や外観の劣化、傷等を抜きに考えれば、往々にして新品の楽器よりも使い込まれた楽器の方が音色に深みがあるものです。
木製楽器を『使い込むと鳴る』というのは必ずしも慣れやプラシーボ効果によるものではなく、科学的に音色変化のメカニズムが解明されています。ヤマハでは使い込まれた楽器固有の木材の熟成と組み上げ時に発生するストレスに着目し、楽器の音響特性を高める技術を確立しているのです。
A.R.E.(アコースティック・レゾナンス・エンハンスメント)
A.R.E.は『アコースティック・レゾナンス・エンハンスメント』の略で、短期間で木材の音響特性を改善する木材改質技術を指します。要約すると新品の楽器でも、長年使い込まれた楽器のような鳴りを生み出せるように木材を熟成させる技術です。
良い音の定義って何?
世間で感覚的に『良い音』と評価される傾向にある音響特性を、物理学的・科学的エビデンスの元に翻訳すると下記の通りとなります。ここでいう良い音は一個人の主観的かつ絶対的なものではなく、ヤマハが多数の音楽家や演奏家への聞き込み調査により割り出した『一般的に多くの人が良いと感じる傾向にある“感覚的な良い音”』とお考えください 。
「落ち着いた」「音が太い」「熟成された」「暖かい」「粒立ちが良い」といったものでした。これらの感覚的な評価を物理的な性質に翻訳すると「低域のサスティーンの増大」「中高域の立ち上がりレベルの増大」そして「立ち上がり後に耳障りな高域成分がより短時間で減衰する」
これらの『良い音』を実現する木材はセルロースの結晶化が進み、ヘミセルロースは減少、結果として異方性が高まる (=熟成される) という性質を持つのです。ヤマハでは異方性が高まり熟成された木材について、公式に『良い音のする物理的性質』を持つと結論付けています。こちらは先の“感覚的な良い音”とは異なり、物理的な性質として数値化が可能な音の特徴ですね (感覚的な良い音を数値化が可能な音の特徴で解明する=感覚評価を物理的性質で翻訳) 。
A.R.E.処理は専用の金属容器で内部温度と湿度を管理し、段階的に圧力を変化させることで木材を短時間で熟成させることが出来ます。木材は熟成し過ぎると耐久性が脆くなるため、音色と耐久性の最適値を設定した上で緻密な制御が行われているとのことです。
A.R.E.はアコースティックギターや旧モデルのエレキベース、ヤマハ銀座ホールのステージにも採用されています。つまるところ音響目的で使用される木材は、手段が自然的でも人為的でも『適切に管理することで鳴るように熟成する』ということです。
A.R.E.補足
補足としてA.R.E.は使用される木材全てに施すのではなく、表板のみやソリッドボディのみなど部分的に施されるのが通例となっています。上記画像のLL36 AREの表板は、A.R.E.を施したイングルマンスプルース単板を採用です。部分的な処理を行う理由として、Yamaha ART “BACKSTAGE"では旧ベースモデル BB2024&BB2024X 発表時に下記の通り解説されています。
このA.R.E.の処理をBBを構成する全ての木材パーツに採用しているのではなく、あくまでもボディー材の部分にのみ処理をかけています。これは次回Evaluation編でも触れるのですが、端的に言うと、やり過ぎは良くない!!おいしいところに、ほんのりかける。といった感じで、数々の実験からもボディー材にのみ施すのが一番音にも良かったですね
引用:Yamaha ART BACKSTAGE_ New BBを熱く語るっ!あらためて、A.R.E. 、I.R.A.って何?

人為的に短期間で熟成可能といっても、程々が一番良いということだね
A.R.E. 参考リンク
木材改質技術 A.R.E. – 研究開発 – ヤマハ株式会社
https://www.yamaha.com/ja/tech-design/research/technologies/are
I.R.A.(イニシャル・レスポンス・アクセラレーション)
続いてI.R.A.は『イニシャル・レスポンス・アクセラレーション』の略で、組み上げた状態の楽器の鳴りを改善する技術です。楽器の鳴りが良くなるのは木材の熟成のみならず、完成された楽器の細部に潜む『ストレス』の低減が影響しています。
例えばエレキギターのボディとネックを接合する際は、ジョイント部分に『木材と木材のズレや隙間』が生じるものです。ボディ単体で見てもボディとトップ板、ボディ全体と塗装、部品と塗装or木材など、随所にズレや隙間が生じてしまいます。
いわば異種材料や異種物質の集合体である楽器は、いかに丁寧に組み上げたとしても完成直後はストレスの集合体でもあるのです。各部に潜むストレスは音の響きを妨げる要因となるものの、弾き込むことによって馴染み、楽器全体の鳴りが向上していきます。
I.R.A.では出荷前の楽器に一定の振動を加えることで、弾き込まれた楽器の持つ低ストレスな音響特性を再現しているのです。弾き込むことでストレスが解消されていく過程は、楽器として『より各部が一体化していく過程』とも考えられます。
まとめると出来立て新品の弦楽器は、弾き込むにつれて『各部のストレスが減少し鳴りが良くなる』ということです。
I.R.A. 参考リンク
ATTITUDE LTD3 – ヤマハ株式会社
追記:生音ってエレキギターに影響あるの?
エレキギターやエレキベースに関して、よくある疑問の1つに『生音は電子弦楽器の出音に影響を与えるのか?』というテーマがあります。ギターやベースは弦をアタックした際の一次振動だけでなく、弦と接触しているパーツやボディが揺れる二次振動により共振やフェイズが発生し、互いの振動に影響を与えることで複雑な倍音を織りなす構造です。
言い換えると弦楽器はピッキング直後に、一次振動と二次振動が共振やフェイズを誘発して発生する『三次振動』へと変化します。エレキギターやエレキベースの音色はピックアップの磁界を磁性体の振動で乱し、微弱な誘導電流が発生することでアウトプットされるため、最終的な音色を決めるのは三次振動が大きなウェートを占めているのです。

ヤマハではアコースティックな鳴りを電子弦楽器に活かす応用技術として 新しいREVSTER (第二世代) やPacifica Professional、Pacifica Standard Plusに『アコースティック・デザイン』を採用!
生鳴りをエレキギターに活かした アコースティック・デザイン 参考リンク
Yamaha Electric Guitar Technologies – ヤマハ株式会社
https://jp.yamaha.com/products/contents/guitars_basses/eg_tech/index.html
ピックアップの仕組み 参考リンク
エレキギターのしくみ ピックアップって、どんな物? – 楽器解体全書 – ヤマハ株式会社
https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/electric_guitar/mechanism/mechanism002.html
激安ギターでも適切な環境で管理し弾き込み続けることで鳴りが良くなる……ハズ
A.R.E.とI.R.A.はヤマハ独自の技術につき、一般人が家庭で容易に再現出来るものではありません。ですがA.R.E.とI.R.A.はいずれも楽器が新品出荷前の段階で、鳴りが良い状態を短時間で再現する技術となります。

裏を返せば特別な技術を用いなくても、丁寧に管理をして時間をかけて弾き込めば楽器の鳴りがどんどん良くなっていくハズです。という訳で2021年当時の管理人はZUWEIのクラウドタイプに改造や加工を一切行わず、楽器にとって良好な環境下での弾き込みだけで音質を改善する計画を企てました。

該当ギターのレビューを投稿した2021年9月9日を計画開始日とし、以降の管理と演奏はすべて湿度と温度の整った気密性の高い屋内環境で行います。とは言え特別なことをする訳ではなく、やる事は可能な限り毎日該当ギターを使って数十分程度基礎練習を行い、基本的なメンテナンスを怠らない程度です。
演奏の前後には春日キョンセームによる乾拭きを実施して、極力塗装面やハードウェア類が劣化しないように配慮しています。管理はPLAYTECH EG-Bagに収納した状態のまま、空調の当たらない位置に設置したCLASSIC PRO GST7に立てかけることにしました。
弦はレビュー時に使用したものと同じ PLAYTECH EGS-0942 (かなりのソフトテンション激安弦) 、ピックはAria Pro II HYPER TOUCH -Triangle- P-HT01/080 YL のみを使用です。出張等で持ち出しが出来ない場合は弦をElixir Nanowebに変更した上で、MUSICWORKSのフレットガード型湿度調整シートを使いハードケースに収納します。

純粋な鳴りの変化をデータ化するために、レビュー時に使用したものと同じロットのシールド、弦、ピックは劣化しないように保管です (計測時に使用する) 。シールド、弦、ピックはシリカゲルと脱酸素剤入りの一斗缶に収め、冷暗所に安置してコンディションが変化しないように努めます。


よし、これで準備完了だ!

絶対に良い音でぶっ鳴らしてやるからな、未来で (バスウッド) 首を洗って待っていろよ!!
こうして管理人は己に言い聞かせるように呟き、一抹の望みを胸に秘めて粗悪過ぎる激安ギターが輝ける未来へ向かって旅立ちました。
その道のりはひたすらに険しく……

不法入居者に人格を支配されてしまったり……

ギターが呪われてしまったり……

カビだらけと評判のギターにカビがついていなかったり……

ユーフォニアムが高くて買えなかったのでピストンバルブの雰囲気だけペグで再現してみたり……
買ったばかりのギターに速攻で無茶ぶりされたり……

調子に乗って山葉一族虎好き過ぎ説を提唱してみたり……

えーと……

ごめん、普通に楽しい思い出しかなかったわ
THANK YOU, FANS!

それはそれとて、とりあえず改造したい誘惑に負けずに頑張って3年間弾き込んでみたので、外観の変化から確認していこう!
ギター&ベースお手入れ方法 参考リンク
エレキギターのお手入れ 基本的なお手入れは? – 楽器解体全書 – ヤマハ株式会社
https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/electric_guitar/maintenance
メンテナンス・チューニング – スペシャルコンテンツ – ヤマハ株式会社
https://jp.yamaha.com/products/contents/guitars_basses/maintenance/maintenance.html
アコースティックギターのお手入れ 弾かない時にも要注意 – 楽器解体全書 – ヤマハ株式会社
https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/acoustic_guitar/maintenance/maintenance002.html
外観の変化
という訳でこちらが3年以上の歳月をつぎ込み、丹精込めて熟成させたZUWEI プリンス クラウドタイプです。屋内のみでソフトテンション弦を使用していたため反りや捻じれは無く、外観上は新品時に近いコンディションを保っています。

ゴールドハードウェア採用モデルということもあり、メンテナンス面では金属ハードウェアを変色させないことに気を配りました。分かる人には分かると思うのですが、ゴールドパーツを3年間使い続けた上で光沢を保ち続けるのは至難の業です(誉めて)。

ただしナットやフレット、ペグポストにブリッジサドルなど、弦が接触する箇所はそれなりに消耗が発生しています。最も消耗したパーツはローポジションのフレットで、山が新品時よりも2~3割程度減ってしまった状態です。

ナットやブリッジサドルも幾分消耗していますが、リサイクルショップ等では十分に美品扱いとなるコンディションと思われます。このギターへ3年前に保管した弦を張り、同じく保管していたピックとケーブルを使った音質を比較して3年間の鳴りの変化を解析です。

解析するのはギターサウンドを司る要素ともいえる倍音特性、周波数特性、サスティーンの長さ、音の立ち上がりの速度とします。さらにヤマハが解明した『良い音のする物理的性質』の翻訳に基づき、音の立ち上がり前後の周波数特性比較も実施しました。
・中高音域の立ち上がりレベルの増大
・立ち上がり後に耳障りな高音域成分がより短時間で減衰する
・低音域のサスティーンの増大
立ち上がり前後の周波数特性を解析し、上記3要素が確認出来れば主観ではなく物理的性質で鳴りが良くなったと判断可能です。果たして粗悪品過ぎる激安ギターでも弾き込めば鳴りが良くなるのか、順番に解析結果を確認していきましょう。
倍音特性の比較 (A2/110.00Hz)

倍音は周波数が分かりやすいように、ブリッジピックアップ 5弦開放弦 (A2/110.00Hz) のスペクトラムを計測して比較します。
i.新品のZUWEI プリンス クラウドタイプ

新品時はペチペチと弦が響く程度の弱い鳴りが影響してか基音の出力 (縦軸) が著しく低く、倍音も全体的に乏しいです。倍音が計測された帯域 (横軸) も非常に狭く随所で奇数次倍音が主張するため、無味無臭なのに機械的に尖った響きとなります。
ii.3年以上弾き込んだZUWEI プリンス クラウドタイプ

一方3年以上弾き込んだ状態では基音の出力が大幅にアップし、倍音の出力も増加、倍音が計測された帯域も大きく広がりました。波形を見ただけでもその差は一目瞭然ですが、主観としても生音の大きさ、手や身体に伝わる振動効率の良さを実感可能です。
iii.新品→3年以上 波形交互表示

奇数次倍音が主張しやすいのは新品時と共通であるため、この特性は材やハードウェア構成起因による『楽器の個性』と考えられます。弾き込みにより楽器の個性を損なわぬまま、純粋に音量が大きくなり深みのある倍音に変化したと考えて良いでしょう。

主観的な部分の補足をすると……

1年目はネックPU付近が辛うじて鳴る、2年目は12F付近からブリッジエンドまで鳴る、3年目でネックヘッド先端まで鳴るように変化!

正直なところ新品の状態から変化無しを予想していたのだけれども、無改造&無加工でも3年でそれなりに生鳴りが大きくなりました!
倍音特性波形の周波数目安
左端側の太長い山(中央灰色線)が基音110Hz
偶数次倍音:第2倍音(220Hz)、第4倍音(440Hz)、第6倍音(660Hz)……
→ナチュラルで暖かな傾向の響き、多いほど親しみを感じやすいという研究結果も
奇数次倍音:第3倍音(330Hz)、第5倍音(550Hz)、第7倍音(770Hz)……
→金属的で冷たくメカニカルな傾向の響き 非整数倍音:各倍音の谷などに含まれるが音程を感じさせない
周波数特性の比較
周波数特性もブリッジピックアップを選択し、DI直で同一フレーズを繰り返して平均的なスペクトラムを算出です。
1.新品のZUWEI プリンス クラウドタイプ

新品時の出音は異様にか細くてまともにギターサウンドが出力されておらず、直進性のある音が全く作れない状態でした。帯域としては低音域の力感が皆無に等しく、高音域の伸びも標準的エレキギターの数値を大きく下回っています。
2.3年以上弾き込んだZUWEI プリンス クラウドタイプ

3年以上弾き込んだ状態では出力が大幅に向上しており、中音域は最大でなんと+6dBも高い値を記録です。低音域の弱さも一定の改善が見受けられ、強くはありませんが標準よりは弱い程度に収まっています。
3.新品→3年以上 波形交互表示

2k~3kHzにウィークポイントが確認出来ますが、400~1kHzにかけての帯域は標準以上の出力を確認です。生鳴りが大きくなったという主観と一致しており、3年以上の弾き込みで楽器のストレスが低減されていることを裏付けています。
周波数特性波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz
橙線:400Hz,800Hz
桃線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
サスティーンの比較
サスティーンはDI直で開放弦Eコードを1ストローク鳴らし、出力が0になるまでの時間を計測です。新品時のサスティーン計測値を基準に、3年以上弾き込むことによって±何%音伸びが変化したのかを確認します。

なお人力でもデータ精度を上げるため、新品時の測定でも3年以上弾き込んだ後の測定でもエグイ回数のストロークを繰り返しました。計測された各サスティーンデータを元に、平均%、最小%、最大%の3通りを算出です。
平均:+11%
最小:+14.4%
最大:+3.7%
3年以上弾き込んだ状態では出力が最大+6dB向上していることが大きく、サスティーンは全面的に新品時の値を凌駕しています。最大では+3.7%と適度な上昇に留まっているものの、最小サスティーンはなんと+14.4%も開きがあるのです。
ネック一体成型ボディは繋ぎ目の無い構造から、スルーネック以上にサスティーンが優位となる傾向があります。ところが新品時では組み上げに関するストレスが大きく、その性能を安定して発揮出来ない状態にあると推察です。
3年以上の弾き込みによりハードウェアが馴染み、弦振動が阻害されるストレスが減少したことでサスティーンが安定化したと考えられます。ストレスの低減したギターは音が途切れるまでの長さにムラが少なく、サスティーンの再現性に秀でると考えて良いでしょう。
音の立ち上がりの比較
サスティーンの計測と平行して、音の立ち上がりについても調査しました。新品時の立ち上がりを基準にすると、3年以上弾き込んだ状態では平均して6.2ms (0.0062秒) も速い値を記録です。
木材やハードウェアにもよりますが、ネック一体成型ボディはサスティーンに秀でる反面、立ち上がりが鈍化しやすくなります。それでも比較対象が新品時のネック一体成型ボディであれば、3年以上の弾き込みにより立ち上がりが改善される模様です。

ボルトオンネックよりスピーディーに変化する訳ではないけれども『鈍いなりに改善される』みたいだね!
音の立ち上がり前後の周波数特性比較
ギタいじ開設以来初めて解析を試みた、音の立ち上がり前後の周波数特性を比較検証していきます。
A.新品のZUWEIアタックタイムまでの周波数特性

新品時のアタックタイムにおける周波数特性は、およそ360Hzをピークとした鋸の歯のような波形です。
B.3年以上弾き込んだZUWEIアタックタイムまでの周波数特性

3年以上弾き込んだ状態のアタックタイムにおける周波数特性を解析すると、ピークが約900Hzへシフトしています。同時に500Hz以降の帯域は総じて出力が向上しており、4kHz付近の中高音にかけて見違えるほどの伸びを記録です。

音の立ち上がりが高速化しているのに出力が向上しているのもポイント!(新品時よりも短時間で大きな音量が得られる)
C.3年以上弾き込んだZUWEIアタックタイム後の周波数特性

3年以上弾き込んだ状態のアタックタイム後の周波数特性も調べたところ、2kHz以降の帯域が即座に減衰しています。10kHz以降の帯域はほぼゼロに等しく、対照的に200Hz以下の帯域は増加&安定傾向です。
即ち3年以上弾き込んだ状態では『良い音のする物理的性質』とされる中高音域の立ち上がりレベルの増大、立ち上がり直後の高音域短時間減衰、低音域サスティーン増大、以上全ての要素を確認しました。
周波数特性波形の周波数目安(左から順に)
赤線:100Hz,200Hz
橙線:400Hz,800Hz
桃線:2000Hz,3000Hz,6000Hz
計測に使用した機材
エレキギター:ZUWEI / プリンス クラウドタイプ [2021年購入]
ギター弦:PLAYTECH / EGS-0942 (.009-.042) [2021年購入保管品]
ピック:Aria Pro II / P-HT01/080 YL [2021年購入保管品]
シールド:ARIA / JG-10X (10ft/3m, S/S) [2021年購入保管品]
マイクケーブル:Amazon / CLMIC1-M-F-10FT-5P×1 [2021年購入保管品]
おまけ:Gibson製スラッシュ氏シグネチャーモデルの『鳴り』について
ここまでご覧になった方の中には、もしかすると『変なギターだからイレギュラーに鳴りが良くなったのでは?』という考えが浮かんだ方もいらっしゃるかもしれません。最後にギタいじでレビューした商品を例に、激安ギターではなく高級ギターにまつわる『鳴り』のエピソードをご紹介いたします。

(画像引用:平野楽器)
2010年にGibsonからスラッシュ氏のシグネチャーモデル、Slash Appetite For Destruction Les Paul VOS (以下AFD) が発表されました。AFDはスラッシュ氏がAppetite for Destructionのレコーディング末期に入手した、59年製レスポールのレプリカ『Derrig ’59』を再現したモデルです。
開発当初はDerrig ’59と同じく、ピックアップはSeymour Duncan APH-1を2個搭載する予定となっていました。しかしながら材やパーツ、組み上げに至るあらゆる要素をDerrig ’59と揃えても出力が足りず、トーンの完全再現に失敗しています。
そこでSeymour Duncanは『現時点でのDerrig ’59の音』に近づけるべく、APH-2『Alnico II Pro Slash』を作成したのです。APH-2はAPH-1よりも中音域の特性を底上げしつつ、ブリッジ側の出力を3%増加、ネック側の出力を5%増加させています。
幾多の現場を潜り抜けてきたギターの鳴りは、素材と構造を揃えて完璧に組み上げただけでは再現出来ないことが分かるエピソードですね。
もっとスラッシュ氏の音を探求したい方はコチラ!
まとめ

エレキギターは無改造でも適切な環境下で管理を行い、3年という短期間でも根気よく弾き込むことで大幅に鳴りが良くなります。低品質かつ低価格なエレキギターも例に漏れず、部品交換を伴う改造に勝るとも劣らない音の変化を実感可能です。
『良い音のする物理的性質』が『自分の好む音』と一致するとは限りませんが、最低限多くの人が良いと感じやすい音色へ変化します。けれども無尽蔵に音が良くなる訳でもなく、楽器の持つ個性を保ちながら少しずつ深みを増していく……といった感じです。
またエレキギターのパーツは消耗品が多く含まれているため、熟成の裏では必ず消耗によるストレスの発生が同時進行していきます。本記事はあくまで消耗が軽微な短期間の結果によるもので、長期的熟成には部品交換や本体への加工が必要となる場合もあるのです。
加えて部品交換は弦振動そのものを『自分の好む音』に寄せることが可能につき、弾き込みとは異なる『良い音のする物理的性質』も生み出せます。丁寧な機材管理と地道な弾き込みによる鳴りの向上、加工や部品交換による音の選択肢も視野に入れつつ、ぜひ皆さんの愛機もオンリーワンな1本に成長させていきましょう!
編集後記

ちなみにギタいじでレビューした数々のエレキギターは、その多くが無改造のまま保管されているのですが……

ほぼ全てのギターがレビュー時よりも『良い音のする物理的性質』に変化していることを確認済みです!

勿論レビューを投稿していない私物のヘッドレスギターや少しお高いギター、粗悪な安ギターでも十分な変化が確認出来ました!

逆に変化はしたけれども伸びしろがあまり大きくなかったギターもチラホラ……

べニア系積層材、ウッドファイバー材、アクリル材、ボディサイズが大き過ぎるギター、複雑な変形ギターなどは変化幅が小さい傾向が見受けられます!
鳴らないというよりは鳴らす前にハードウェア構成と設計面を見直す必要がありそう

ボルトオンネックの場合はネックポケットが塗装ベタ塗りの状態だとストレス解消に時間がかかるかもしれません!

あとは部品類の浮きやグラ付きを招くほどネジやナット、アンカー類の取り付けが不適切な個体、センターが出ていない個体などもストレスが解消しにくいので注意!

いずれにしても最低レベルの品質のギターでも鳴りが良くなったのは事実なので、みんなも気長に手持ちのギターと付き合ってみてね!
おまけのおまけ
粗悪な激安ギターがそれなりに鳴るようになるまで、労力に見合わないほど大変な思いをする可能性があります。もう少しお金をかければ新品でも良い鳴りのギターは沢山存在しますし、同じ価格帯でも探せば良い安ギターが見つかるものです。どうせ労力をかけるのならば仕上がりの悪いギターではなく、事前に店頭で試奏するなどして相性が良いと感じた楽器に注ぎ込みましょう。
レビュー済み優良ギター取扱店リンク

YAMAHA REVSTAR RSE20は初日から爆鳴り!
EART EGLP-610 は全身ローステッドオクメ乾いた鳴りが魅力!
Aria Pro II 615-AE200 はお手頃価格で楽しめる変則テレタイプ!
Guild SURFLINER はレトロモダンな軽量オフセットボディ!
まだまだある!どこよりも詳しい圧倒的情報力と分析力で綴る世界一詳しいギターレビューを要チェック!!
知って得するギタいじ音質改善情報
» Creatifinity Parts グレードアップパーツ 関連記事一覧
ブラス製グレードアップパーツといったらCreatifinity Partsにお任せ!
» 【全90種以上】Seymour Duncan ピックアップ 音質解析 一覧
当ブログでは90種以上のダンカン製PUを解析済み!キミの求めている音もきっと見つかるよ!!
パーツ交換やちょっとしたテクニックで愛機の音質を改善しよう!
管理人SNS
人生ヒマでヒマでしょうがない人は、ギタいじ管理人のXアカウントもフォローしてね!この記事が役立った場合、ぜひギタいじへご支援ください!粗悪な激安ギターを3年以上弾き込んだら無改造でも『鳴る(物理的性質で音が良くなる)』の?でした!!





























































